J.LEAGUE.jpが今注目するJリーグ期待の若手選手とそこで長年活躍している先輩選手が、サッカーに対しての互いの想いを語り合うひととき「Young Guns Talk」。今回はスペシャルエディションとして、今年のルヴァンカップニューヒーロー賞に輝いたベガルタ仙台の西村 拓真選手にお話しを伺った。
試合を重ねるごとに、良くなってきていた。自分も、チームもです。やりたいサッカーをみんなが意識して、個人としても成長できた。
──まずルヴァンカップのニューヒーロー賞受賞の感想を聞かせて下さい。
「まだ、あまり実感はないです。少しうれしかったですけど」
──少し、なんですか?
「決勝にも行ってないですし、優勝を目指していたので」
──賞を取ってやろうという気持ちはもともとありましたか?
「それはあまりないです。チームの初タイトルがほしかった。みんな気合いが入っていましたから」
──受賞はどういう状況で聞かされましたか?
「練習が終わってランニングしていたら、平山相太さんに、お前、ニューヒーロー賞らしいやん、と言われて。その時に知りました」
──あまり個人賞には興味がない?
「予選を突破してからそういうのが耳に入ってきて。周りからは、『お前、決勝に行ったらマジであるんじゃね?』とは言われていたんですけど、そういうのを意識したら絶対にダメだと思っていました。それでも、少しは意識していたとは思います」
──意識して硬くなってしまった部分も?
「完璧に悪いほうに行きましたね。僕はあまりメンタルが強いほうじゃないので」
──メンタルは強くない?
「強がっていますけど、ルヴァンの準決勝だったり、緊張した試合の中では何もできなかったので、そういう時に弱いなと感じました」
──大会を通しての感想を聞かせてください。
「試合を重ねるごとに、良くなってきているのは感じていました。自分も、チームもです。やりたいサッカーをみんなが意識して、それが形になってきたと思うし、個人としても成長できて、それがいい形になって表れたと思います」
──一番印象に残っている試合は?
「準決勝ですね。川崎フロンターレに負けた試合。あとFC東京との初戦で、0-6で負けた試合も印象に残っています。そのふたつは一生忘れないですね」
──負けた試合のほうが印象に残るものですか?
「0-6で負けたのは衝撃的でしたし、悔しいですね。負けるのは嫌なので、だから、覚えています」
──負けず嫌い、ですか?
「じゃなきゃダメじゃないですかね。嫌です。負けるのは、とにかく嫌です。やっぱりサッカーでは負けて悔しいという想いがないとダメだと思うし、それがなくなれば引退すると思う。負けて悔しいと思えているからこそ、成長できている気がします」
新しく自分に対してチャレンジができた年になっていると思います。
──そもそも西村選手は、自身のことをどういうプレーヤーだと思っていますか?
「ゴールにどん欲に向かう姿勢だったり、意識っていうのはほかの選手よりは高いと思います。器用さはないと思っているので、そのなかで、スペースがあった時の推進力っていうのは、今年はすごい自信になっています」
──昨季と比べて出場機会が増えて、結果も出しています。どういう部分に違いを感じますか?
「まず、フォーメーションが変わったことで、新しく自分に対してチャレンジができた年になっていると思います。新たな自分を見つけられたなと感じていますね」
──新たな自分とは?
「去年は2トップだったんですけど、今年は2列目からの飛び出しであったり、ドリブルもそうだし、仕掛けの部分で意外とできるんだなというのは感じました。あとは試合に出るなかで、試合の雰囲気だったり、スタジアムの雰囲気に慣れたってことも大きいと思います」
──メンタル的な成長も感じている?
「そうですね。確実に自信はついているので、メンタル的なところは大きいです」
──プレッシャーを乗り越える方法ってありますか?
「方法はまだ見つけられていないですけど、普段の1回の練習から集中して全力でやることを意識しています。プレッシャーを乗り越えた時に、やってきたことが正しかったと思えるんじゃないかと思います」
──サッカー以外の部分で言うと、ご自身はどういう人間だと思いますか?
「う~ん、自分が一番知りたいですね。分からない。自分のこと、知らないです(笑)」
──では、例えばどういう時に嬉しかったり、楽しいと感じますか?
「友達と遊んでいる時ですかね。だいたいチームメイトですけど。仙台ではサッカー以外の友達がいないので」
──逆に苦手なことはありますか?
「余裕は全然ないですね。ちょっとしたことを気にしてしまいますし、周りの人からはよく変わっていると言われます。なんでかは分からないですけど(笑)」
──あまり自分を出せるタイプではない?
「親しい人には出せますけど、最初はあまり自分を出せないですね」
──その性格はサッカーをプレーするうえで影響するものですか?
「いや、ピッチでは意外と気にせずできています」
──要求するタイプですか?
「そうですね。ゴールを取りたい思いが強すぎて、もっと周りを見ろと、先輩方によく言われますね。それでちょっとは見られるようにはなってきているかなと思いますけど、まだまだゴール前での余裕はないですね」
──先輩からのアドバイスを、しっかり受け入れられますか?
「しっかり聞きつつも、自分を貫いちゃうところもあるので、そのバランスを持ってできればいいんじゃないですかね」
簡単に言えばサッカーバカなので。ずっとサッカーバカです(笑)
──ここからは西村選手の過去を少し振り返っていただきたいと思います。そもそもどういうきっかけでサッカーを始めたのですか?
「3つ上の兄がやっていたので、自分もやりたくて始めました。たしか5歳くらいの時ですかね」
──ずっとFWだったんですか?
「いや、いろんなポジションをやりましたよ。ディフェンスだったり、中盤もやりました」
──サッカーに向き合う姿勢は子どものころから変わらない?
「簡単に言えばサッカーバカなので。ずっとサッカーバカです(笑)」
──西村選手は愛知県出身ですが、高校は富山第一高校に進学します。どういう経緯だったのでしょう?
「クラブチームを受けたんですが、全部落ちてしまって。とにかく県外に出たいと思っていたので、県外で強いところがないかを探していたら、父が富山第一出身で監督と知り合いだったので、それで決めました。おばあちゃんの家が富山にあったのも決めた理由です」
──富山第一高では、2年生の時に全国高校選手権で優勝を果たします。そこにたどり着く道のりは、どういったものでしたか?
「僕は1年の時はトップチームに入れなくて、ずっとトップで出たいという気持ちでやっていて。2年になってようやくレギュラーになって、インターハイでベスト8に入り、そのまま選手権で優勝しちゃった感じです」
──今までのキャリアの中で、最高の瞬間を挙げるとすれば?
「まだないですね。全然です。最高って思ったことはないです」
──どうなったら、そう思えますかね?
「やっぱり、自分の理想のプレーができるようになったきときだと思います」
──その理想に対して、今はどの辺りにいると思います?
「分からないですね。どこまで行っているのかも分からない。でも、着実にできることは増えているので、それをずっと増やし続けるだけだと思います」
上手くなりたいからです。上に行きたい気持ちだけです
──ここから先、こういう選手になりたいという目標はありますか?
「みんなの期待に応えられる選手になっていきたいです。それができれば上に行けると思う。やっぱり上に行って、いろんな景色を見てみたいです」
──具体的な目標設定はありますか?
「いや、そこはあまり人に言いたくないですね。日々の練習を毎日全力で取り組むことが、今の目標です」
──近い将来、例えば3年後にこうなっていたいというイメージは?
「分からないです。自分がどうなっているのか分からないですね。ちょっとはこうなっていたいというのはありますけど、人には言いたくないです」
──なぜ、言いたくないんですか?
「なんでですかね。言ったほうが自分にプレッシャーをかけられていいんじゃないかっていう話はよく聞きますけど、僕は言いたくないです。達成できたら言いますよ」
──日々の練習を全力で取り組めるモチベーションとなっているものはなんですか?
「上手くなりたいからです。上に行きたい気持ちだけです」
──ある意味で自己鍛錬の日々だと思うんですが、苦しいと思うことはないですか?
「大変だとは思わないです。サッカーが大好きで、上手くなりたいって気持ちしかないので、練習を苦に感じたことはないです」
ひとりの選手として活躍したい気持ちがある。
──今年から「TAG Heuer YOUNG GUNS AWARD」という賞が新設されましたが、この賞に関してはどう思いますか?
「自信になると思います。評価されるわけだから、もし取れたらすごくうれしいですし、自信になります」
──この賞の「革新は、いつだって若い世代から生まれる」というキャッチコピーについては、どう思われますか?
「やっぱり、ずっとやれる世界ではないですし、どんどん人が入れ替わるのは当然のこと。若い選手が新しい時代を築いてくはずなので、革新という言葉は当てはまっていると思います」
──自身も何か革新を生み出していると思いますか?
「若いからとかではなく、ひとりの選手として活躍したい気持ちがあります。その気持ちは上の人たちには伝わっているのかなと思いますし、チーム全体にいい影響を与えられるのではないかと思っています」
──若手として意識していることはありますか?
「ベテランの選手たちは、身体になにかしらのストレスを感じているだろうし、怪我も抱えていると思う。だけど僕らはまだ新鮮だし、完成されていない。選手として未完成の状態だからこそ、吸収も早いと思うし、成長スピードが上の選手よりもあると思っています」
──若い世代の特徴はどういうところにあると思いますか?
「みんなすごいですね。上に行っているし、意識はしますよ。他の世代のことはよくわからないですけど、上の選手からはもっとやってほしいという話を聞くので、自分たちの表現であったり、サッカーに対する姿勢は足りていないのかなと思います」
──どういう部分を求められていると思いますか?
「プレーにおいても、相手発信ではなく、自分から発信していくことじゃないですかね。言われて反応するのではなく、自分から要求したり、アクションを取ることが大事だと思います」
──そういう部分はまだ足りていないと?
「上の選手は、やっぱりすごく要求しますね。ピッチに立てば関係ないので、そういうところはもっとやっていきたい。そうすることで。チームも強くなっていくと思います」
──ニューヒーロー賞に続いて、「TAG Heuer YOUNG GUNS AWARD」も取れる自信はありますか?
「取れたら自信になります。もちろん、それを取るためにやるんじゃなくて、自分の成長のためにやって、それを評価してもらえたら嬉しいですね」