J.LEAGUE.jpが今注目するJリーグ期待の若手選手とそこで長年活躍している先輩選手が、サッカーに対しての互いの想いを語り合うひととき「Young Guns Talk」。今回はガンバ大阪の市丸 瑞希選手、東口 順昭選手にお話しを伺った。U-16から各年代の日本代表に選ばれ、エリート街道をいく市丸選手に対して、それとは対照的な道を歩んできた東口選手は何を想い語るのか。聞き手はJリーグ副理事長の原 博実。
市丸“足りていない部分ははっきりとわかっている”
- 原
- :まず東口選手、ロシアワールドカップ出場、おめでとうございます。
- 東口
- :ありがとうございます。
- 原
- :緊張感あった? あのオーストラリア戦は。
- 東口
- :そうですね。合宿で集まった時から、みんなピリピリしてました。集中力高くトレーニングしてましたし、いつもとは違いましたね。
- 原
- :次がアウェイでのサウジアラビア戦ってことを考えれば、引き分けでも難しくなる可能性があったからね。
- 東口
- :実際にそのあと、サウジアラビアには負けてしまいましたし、本当にオーストラリア戦で決まってよかったです。
- 原
- :市丸は、オーストラリア戦はテレビで見ていたの?
- 市丸
- :僕はいちサポーターとして見てました。勝ったらいいなと。
- 原
- :チームメイトの井手口(陽介)がゴールを決めた時はどうだった?
- 市丸
- :あれは、思わず声が出ちゃいましたね。
- 原
- :同年代の選手の活躍に刺激を受けたと思うけど、市丸は最近、チームで試合に出られてない。その現状をどういうふうに捉えている?
- 市丸
- :足りていない部分ははっきりとわかっているので、もちろん悔しい思いもありますけど、そこまで焦りはないです。
- 原
- :今は20歳でしょ。U-16代表の時から知っているけど、センスはあるなと思っていたよ。ガンバは良い選手が多いからね。井手口がいて遠藤(保仁)がいて、コンちゃん(今野泰幸)がいて。井手口なんかはまさにそうだけど、ガンバのなかでポジションを獲れれば、代表に行けるくらい。そういう意味でも、まずはガンバで試合に出ることが求められるね。
- 市丸
- :そうですね。まずはそれが目標です。
- 原
- :練習を見たけど、全然見劣りしないし、堂々とやっている。チャンスはあるんじゃない?
- 市丸
- :そうですね。どこかでチャンスをもらえれば、やれる自信はあります。
- 原
- :試合に出るために何が必要だと考えている?
- 市丸
- :やっぱり全体的な能力が他の選手よりも低いと感じています。足も遅いので、もっと考えてもっと動かないといけないですし、球際ももっと強くしないといけないと思っています。
- 原
- :遠藤も足は速くないけど、予測とか周りを常に見ていて、相手の裏をかくプレーをしているよね。良い見本が近くにいるから、学べるものもたくさんあるんじゃない?
- 市丸
- :そうですね。練習からヤット(遠藤)さんはそういうプレーを狙っているし、そこが見えているんだと、驚かされることもよくあるので勉強になりますね。
- 原
- :東口から見て、市丸がもっとこうしたらいいと思うことはある?
- 東口
- :技術は高いので、自分から要求して、もっと周りを動かすくらいにやったほうがいいんじゃないかなと。まだまだ遠慮を感じますね。
- 原
- :東口も大事な時に怪我をしたりして、なかなかブレイクできなかったよね。
- 東口
- :そうですね(苦笑)。
- 原
- :新潟で試合に出て、代表に東口を呼ぼうかと考えていたときに、ファン感謝デーで怪我したりして。
- 東口
- :そうです(笑)。
- 原
- :今なら笑って言えるけど、前十字靭帯だがから半年以上かかったでしょ。
- 東口
- :それを2回やってますからね。
- 原
- :どうやって乗り越えてきたの?
- 東口
- :いや、なんもないですけどね。8か月リハビリしてましたから。絶対治して、戻ろうというモチベーションもあるんですけど、最初のほうは曲げ伸ばしもできないし、歩けないので、そのモチベーションもすぐになくなってくる。けどリハビリをしないといけないので、しょうがない感じでやってましたね。
- 原
- :そんな日々がありながら、新潟からガンバに移籍して、今では代表にも入っているというのは、すごいよな。
- 市丸
- :すごいですね。
- 原
- :市丸は大きな怪我は?
- 市丸
- :1か月以上の怪我は中1の時以来ないです。
- 原
- :身体は丈夫なんだ。
- 市丸
- :だと思います。
- 原
- :怪我でダメになっちゃう選手は多いから、いいことだと思うよ。じゃあ、もっとやれるんじゃない?
- 市丸
- :そうですね(笑)
市丸“明日の練習から、先輩後輩関係なく、ポジション奪う気持ちでやっていく”
- 原
- :同世代のライバルは誰?
- 市丸
- :やっぱり、一個上の(井手口)陽介くんは、越えないといけない存在だと思っています。
- 原
- :井手口は代表で活躍して、自信もってプレーしている感じはあるよね。井手口に負けないっていう強みはなに?
- 市丸
- :僕はどちらかというと周りを生かすプレーが得意なので、チャンスメイクのパスだったり、アシストだったりで、違いを見せたいと思っています。
- 原
- :守備はどうなの?
- 市丸
- :高校まで自信を持ってやっていましたけど、プロに入って、今野さんだったり、陽介君と一緒にやってみると、まだまだ足りないなと感じますね。
- 原
- :東口はガンバのジュニアユースで、本田(圭佑)と家長(昭博)と一緒だったんでしょ?
- 東口
- :そうです。でも、俺と圭佑はユースに上がれなくて。
- 原
- :その2人が今、代表でやっていているっていうのは、市丸にとってもヒントになると思うよ。市丸はある意味エリートでやっているけど、東口はどうやって、自分を変えていったの? やっぱり悔しい思いとかが原動力になった?
- 東口
- :悔しい思いはめちゃめちゃありましたね。高校や大学の時は、見返してやろうという気持ちでやっていました。その結果、戻って来れたので良かったですけど、やっぱりユース育ちには負けたくないという気持ちはあります。
- 原
- :一回エリート街道から外れたような選手のほうが、この野郎という想いはあるよね。もちろん順調に来た選手にも強い気持ちはあるだろうけど、その気持ちを出すか出さないかで、全然違う。本当はあるのに出さないのはないと同じ。市丸は今、本当に大事な時期にいると思うよ。そこを越えられれば、すごく変わると思う
- 市丸
- :はい
- 原
- :東口は大学から、なんで新潟に行ったの?
- 東口
- :ガンバと新潟に誘われたんですが、最初に誘ってくれたのが新潟っていうのもありますし、大阪で生まれたけど新潟の大学に行って、そこに縁があるんじゃないかなと感じていました。新潟に恩返ししたいなっていう気持ちで、アルビレックスに入りました。
- 原
- :それでガンバに戻ってきて、ユース上がりの選手に感じるものもあったんじゃない?
- 東口
- :そうですね。確かに上手い。だけどっていう……。
- 原
- :だから市丸も、練習の中でガンガンやって、変わってきたなって周りに思わせることが重要だよ。そうすれば監督も、メンバーに入れようか、ってなるはず。ちょっとしたことだけど、そこを越えていくというのを俺は期待しているね。
- 市丸
- :そうですね。その通りだと思いますし、もっとやらなくてはいけないっていうのを今日、改めて気付かされました。明日の練習から、先輩後輩関係なく、ポジション奪う気持ちでやっていきます。
- 原
- :いいね。口だけじゃだめだからね。東口にちゃんと見ていてもらうから。
- 市丸
- :はい(苦笑)。
東口“ギラギラしてないというか、してるんでしょうけど、もっとやってやろうというのがあまり感じられない。”
- 原
- :ちょっと話は変わるけど、今までで一番プレッシャーを感じたことってなに?
- 市丸
- :僕は、去年の10月にあったU-19アジア選手権のグループ予選第3戦のカタール戦が、一番緊張したというか、プレッシャーを感じましたね。1、2戦目は出れなかったんですが、同じボランチの神谷優太(湘南)が怪我をして、3戦目にチャンスが来たんです。負けたら敗退、引き分けでも突破が難しいなかで、自分が出て負けたらどうしようという気持ちがありました。結果的に3-0で勝てたので良かったですが、負けたらやばかったですね。
- 東口
- :僕はJリーグで先発デビューした時ですかね。
- 原
- :何年の時?
- 東口
- :2010年ですね。前の試合で正GKの黒河(貴矢)さんが怪我をして、途中からピッチに立ったんですが、1分後に失点してしまって。次の試合は自分が先発って決まっていて、しかも相手がガンバ。プレッシャーで、前日は寝られなかったですね。
- 原
- :結果はどうだったの?
- 東口
- :0-0でした。結構止めて、仕事できたんで良かったです。
- 原
- :そのプレッシャーをどういうふうに乗り越えたの?
- 市丸
- :僕は試合の笛が鳴るまでプレッシャーを感じていて。入場とか国歌斉唱の時は足が震えていました。でも、笛が鳴ったと同時に、パッと集中できて。特別なにかあったわけではないですが、自然と試合に入れたし、動きも良かった。あの試合は自分の中では、ベストに近いパフォーマンスを出せました。
- 東口
- :僕の場合は、前日寝る前に、布団の中で考えすぎてしまうんですけど、しばらくしたら、急に「もうええわ」っていう瞬間が来るんですよ。そこからプレッシャーが一気になくなって、翌日の試合でいいプレーができる。それがルーティーンみたいになっていますね。
- 原
- :市丸に限らず、チームの若手に対して東口はどういう印象を持っている?
- 東口
- :最近の若手はおとなしいですね。
- 原
- :レイソルの大谷(秀和)も言っていたな。
- 東口
- :ギラギラしてないというか、してるんでしょうけど、もっとやってやろうというのがあまり感じられない。サッカーを黙々とやっている感じですね。
- 市丸
- :やっているつもりんなんですけど、自分がやっていると思っているだけではダメ。周りの評価がすべてなんで、もっとやらないといけないと思います。
- 原
- :先輩の選手に、若い世代は……、って言われることをどう思うの?
- 市丸
- :僕は、周りのことを聞き入れちゃうんで。自分のなかで絶対に違うなと思ったら反論しますけど、そう思われているんだなと感じたら、素直に変えていこうと思いますね。
- 原
- :俺だって上の人に言われたし、だんだんいい方向に向かって行くんだろうけど、やっぱりいろんなものを変えていくのは若い人たちなんだよな。若い人たちが怖がらずに向かって行って、先輩も若手に負けたくないと、さらに頑張る。ガンバにはレベルの高い先輩がたくさんいるわけだから、その環境を上手く生かしてもらいたいね。
- 市丸
- :はい。
市丸“ガンバでポジションを獲ることが、東京五輪への近道、A代表にも近づくはず。”
- 原
- :TAG Heuer YOUNG GUNS AWARDの「革新は、いつだって若い世代から生まれる」っていうテーマを、市丸はどう捉えているの?
- 市丸
- :よく世代交代っていう言葉を使われますが、世代交代を待っているだけではだめだと思います。そのポジションを自分から奪っていかないといけないですし、自分が中心になるくらいの気持ちでやっていきたいですね。
- 東口
- :やっぱり、若い世代の勢いで革新が生まれてきたら、先輩も負けてられないと思うし、それが相乗効果につながる。それはサッカーだけでじゃなく、日本の社会全体にとっても大事なことだと思います
- 原
- :最後に、今後の目標を聞かせてよ。
- 東口
- :僕はずっと日本一のGKになりたいと思っているので、そのためには代表でレギュラーを取らないといけないですし、ガンバでももっと圧倒的なパフォーマンスを見せないとダメだと思う。来年はワールドカップもあるので、そこでしっかりレギュラーとして試合に出て、活躍するのが目標です。
- 原
- :今、Jリーグで韓国人のGKが多いけど、思うところある?
- 東口
- :もちろん負けてられないという気持ちもありますし、吸収できるものはしっかりと自分のものにしていきたいです。
- 原
- :海外だとGKのステータスが高い。日本はそうなってほしいよな。
- 東口
- :そこを変えられるのは自分らだと思うので。もっとGKの価値を高めていきたいです。
- 原
- :市丸の目標は?
- 市丸
- :ひとつは2020年の東京五輪は目標としてあります。でもまずは、ガンバで中心となれるようにやっていきたいです。
- 原
- :まずは、そこだな。
- 市丸
- :ガンバでポジションを獲ることが、東京五輪への近道だと思うし、A代表にも近づくはず。まずはこのチームでしっかりと、レギュラーを奪い取りたいです。