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激闘のJ2を制した札幌 清水、C大阪とともにJ1の舞台へ【明治安田J2:Jリーグ原 博実副理事長 総括】

2016年12月26日(月) 16:00

激闘のJ2を制した札幌 清水、C大阪とともにJ1の舞台へ【明治安田J2:Jリーグ原 博実副理事長 総括】

激闘のJ2を制した札幌 清水、C大阪とともにJ1の舞台へ【明治安田J2:Jリーグ原 博実副理事長 総括】
四方田監督のもと安定した戦いを演じ、5年ぶりのJ1復帰を果たした札幌

5年ぶりのJ1昇格を成し遂げた札幌は、最後に産みの苦しみを味わったものの、シーズン序盤から順調に勝点を重ね、安定した戦いを続けていました。

これまでは夏場に失速するイメージがありましたが、四方田 修平監督は過去の経験を踏まえ、細かいデータを取り、選手を入れ替えながら、この鬼門の夏を上手く乗り切ったと思います。

さすがに最後は怪我人が増えて苦しくなりましたが、結果的に首位を明け渡すことなく逃げ切りに成功。終了間際の内村 圭宏の劇的ゴールで千葉を打ち破った第41節の試合も大きかったでしょう。チームだけでなく、ファン・サポーターも含め、札幌にはクラブとしての一体感はあった。それが昇格の大きな要因だったと思います。

四方田監督は長く育成現場に携わっており、若い選手の能力を熟知する監督です。夏場に若手を起用しながらローテーションできたのも、その経験が大きかったはず。3バックにして守備を重視しつつ、都倉 賢や内村といった能力の高い前線のタレントの活躍も大きかったと思います。しっかりと守っていれば、FW陣が結果を残してくれる。そんな信頼関係があったからこそ、崩れることなく最後まで安定した戦いができたのではないでしょうか。

終盤に圧巻の9連勝を収め逆転昇格を勝ち取った清水。1年でのJ1復帰を成し遂げた
終盤に圧巻の9連勝を収め逆転昇格を勝ち取った清水。1年でのJ1復帰を成し遂げた

2位に滑り込み、1年でのJ1復帰を果たした清水は、シーズン当初は苦戦を強いられていました。戦力値は高いのでプレーオフ圏内には入り込むとは思っていましたが、途中までは自動昇格は厳しいだろうと感じていました。ところがシーズン終盤は、無類の強さを発揮。最後は9連勝を達成し、2位で自動昇格を決めました。

今季から就任した小林 伸二監督は、当初は試行錯誤しながらチーム作りをしていた印象ですが、途中から上手くバランスを見出し、エースの大前 元紀の負傷も逆にチームとしての一体感を生み出すポジティブなものへと変えました。

ゴールを量産した鄭 大世を中心としつつ、北川 航也や金子 翔太といった若手を積極的に活用。両サイドバックの三浦 弦太と松原 后にいたってはリーグ戦の半数以上に先発で出場し、シーズンを通して安定したプレーを見せた。終盤に復帰した大前の奮起も、勢いを生み出す大きな要因となりました。下から追い上げるという状況も、あるいはプラスに働いたかもしれません。点を取って勝つチームになったことは、来季のJ1を見据えても明るい材料で、1年間のJ2生活は清水にとって力を蓄える良い期間となったと言えるのではないでしょうか。

苦しい昇格プレーオフを勝ち抜いたC大阪。昨年の悔しさをバネにJ1への切符を手にした
苦しい昇格プレーオフを勝ち抜いたC大阪。昨年の悔しさをバネにJ1への切符を手にした

プレーオフを勝ち上がったC大阪も、決して楽なシーズンとはなりませんでした。山口 蛍が帰って来たことは昇格の一つの要因でしょうが、何より大きかったのは杉本 健勇の成長でしょう。柿谷 曜一朗が負傷離脱する中、このストライカーの台頭なくして、昇格はあり得なかったと思います。

プレーオフでは福岡に屈した昨季の悔しさが働いていたはずです。岡山との雨中の決戦は、まさに気迫で上回った末の勝利でした。昇格という目標を達成するために、やるべきことをやり切った大熊 清監督の手腕も称えられるべきだものと思います。

昇格した3チームは、いずれも育成を大事にするクラブ。そういったチームがJ1に戻ってくるのは、個人的にもいい傾向だと思っています。

昇格を逃した松本だが、シーズンを通して安定した戦いを披露。反町監督のもと来季こそはJ1復帰を誓う
昇格を逃した松本だが、シーズンを通して安定した戦いを披露。反町監督のもと来季こそはJ1復帰を誓う

残念だったのは松本です。シーズンを通して安定した戦いを続けていましたが、最終盤の勝負どころで力を出し切れず、プレーオフでも岡山の勢いに屈してしまいました。その岡山にとっては飛躍のシーズンとなったでしょう。プレーオフ決勝まで進出したのは初めてのこと。J1という目標が、より現実的なものとして、受け止められるようになったのではないでしょうか。京都も昨季の低迷から巻き返し、プレーオフに出場。守備の安定感はありましたが、得点力不足の解消が、来季のテーマとなるのではないでしょうか。

昇格組の町田と山口も健闘を見せました。攻守にハードワークを見せる町田に対し、山口は攻撃スタイルを打ち出して、前半のリーグ戦を盛り上げました。とりわけ山口は、相手に合わせた戦いをするのではなく、小気味よいパスサッカーで、常に主導権を握ろうとする気概が感じられました。こうしたカラーのあるチームが生まれたことは、非常に嬉しいことです。

振り返れば、今季は稀に見る混戦のシーズンだったと思います。自動昇格争い、プレーオフ進出争い、そして残留争いと、いずれも最終節まで決着を見ませんでした。22チーム中、多くのチームが最後までモチベーションを保ったまま、戦うことができた。その意味で本当に面白かったし、改めてタフなリーグだと感じました。こうした厳しい環境の中でもまれて、若手が伸びてくる。2部リーグとしてのあるべき姿が、育まれてきたのではないでしょうか。

熊本大地震の影響もあるなか、最後まで粘り強く戦い抜き、残留を果たした熊本。地域復興の希望は来季も走り続ける
熊本大地震の影響もあるなか、最後まで粘り強く戦い抜き、残留を果たした熊本。地域復興の希望は来季も走り続ける

最後に、熊本の戦いにも触れておかなければいけません。4月に起きた大震災の影響により、様々な困難が生じるなか、最後まで粘り強く戦い抜き、J2残留を成し遂げました。

順延試合が夏場に組まれ、厳しい連戦を余儀なくされるなかで、大敗を喫することも少なくありませんでしたし、精神的な難しさもあったと思います。それでもクラブだけでなく、地域が一丸となって戦い、残留という成果を生み出したことは、熊本というクラブにとっての大きな糧となるはずです。地域の復興の希望として、来季以降の熊本も継続して見守っていきたいと思います。

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