21日より開幕する2016Jリーグインターナショナルユースカップ。今年で2回目を迎える今大会には、Jユースカップでベスト4に入ったFC東京、サンフレッチェ広島、京都サンガF.C.、松本山雅FCの日本の4チームに加え、釜山アイパーク(韓国)、エストゥディアンテス(アルゼンチン)、フィゲレンセ(ブラジル)、パースグローリー(豪州)の計8チームが参加。長野の2会場で4日間に渡る戦いが繰り広げられる。
今大会を主催するJリーグはどのような目的をもってこの大会を行うのか。松永 英機Jリーグ育成ダイレクターに、大会の見どころと開催意義を聞いた。
Jリーグインターナショナルユースカップは今年で2回目の開催となりますが、昨年の大会からいくつかレギュレーションの変更があります。ひとつは参加チーム数が4から8に増えたこと。もうひとつは17歳以下の大会としたことです。
育成年代において国際経験を積むのは非常に大事なことです。異なるスタイルのチームと対戦するなかで、様々なことを感じて成長に結びつけられるからです。昨年は4チームによるリーグ戦で、各チームが3試合をこなすレギュレーションでしたが、今年は4チームを2つの組に分け、リーグ戦で3試合、そして各組の同じ順位チームが対戦する順位決定戦を設けて、一人でも多く、1試合でも多く、国際試合を経験できる大会へと変更しました。
またすでに卒業していく選手が主となる大会ではなく、来年につなげていく大会にしたほうがいいという議論もあり、ひとつ年齢を下げて、高校2年生以下のメンバーを対象とした大会へと変わっています。
クリスマスの時期であり、休暇に入るヨーロッパのチームを呼ぶのが難しかった事情はありますが、今年はアルゼンチンとブラジルから参加してくれました。もちろん彼らもクリスマス休暇を大事にしてはいますが、日本で国際経験を積みたいというチャレンジ精神をもって、今大会に高いモチベーションで臨んでくれています。
とりわけブラジルのフィゲレンセに関しては、同じサンタカタリーナ州のシャペコエンセの事故があった直後であり、難しい状況にあったと思われるなか、非常にプロフェッショナルで、勇気ある判断のもと、この大会に参加してくれたことに感謝しています。
フィゲレンセは、ブラジルの南に位置するヨーロッパ系の移民が多い街のクラブです。アカデミースタッフは欧州での研修などから世界から学ぶ姿勢を持っています。チームを指揮するアリソン監督はU-16ブラジル代表監督も務める人物でもあります。非常に優れた育成体制を整えており、アンダーのブラジル代表候補も何人かいるそうで、楽しみなチームの一つであることは間違いありません。
アルゼンチンのエストゥディアンテスは、いわゆる育成型クラブで、現在のトップチームの約半数がアカデミー出身選手で形成されています。今年のユースチームもアルゼンチンの大会で3位に入ったそうで、育成に定評のあるアルゼンチンの中でも、トップクラスのアカデミー組織を備えた質の高いチームだと言えるでしょう。
韓国の釜山アイパークは、今年のKリーグU18のチャンピオンチーム。近年、韓国のアカデミーの質が上がってきていますが、もともと備わるフィジカルやメンタルの強さに加え、日本のチームにようにボールを大事にするサッカーで結果を出してきています。韓国のトップのチームが今年の日本のユースシースをけん引したチームと対戦するだけに、非常に興味深い戦いとなるでしょう。
オーストラリアのパースグローリーに関しては、Jリーグと提携を結んだAリーグから推薦されたチームです。決してビッグクラブではないですけど、しっかりとした組織を備え、地道に強化・育成に取り組んでいます。イギリス人の移民が多い街ということもあり、サッカーのスタイルはヨーロッパに近いそうですが、日本にとって国際大会の予選で戦う機会が多いオセアニアのチームと対戦できるのは、貴重な経験となるはずです。
そんな4チームを迎え撃つ日本勢に関して言えば、まずFC東京は、今年U23チームを編成してJ3に参加したことが良い影響を与えているでしょう。U-18からU-23に参加する選手が増え、同時にユースの下の学年の選手たちがプレミアリーグで試合に出場機会を得られるようになりました。上のカテゴリーでしか得られない経験を彼らは積んでおり、新チームとして参加する今大会でも大きな期待が持てます。
広島は言うまでもなく育成型クラブの代表と言える存在で、確かな考えの下で、選手の個を伸ばしてきた実績を備えています。3年生が抜けたとしてもそのアイデンティティは受け継がれているはずで、伝統的なスタイルをもってどう戦っていくのか。そこに注目したいですね。
京都は、毎年10人の選抜された選手が入ってくる環境で、少数精鋭で活動しています。しっかりとしたアカデミーのシステムを持ったクラブであり、1、2年生でもすでにレギュラーとして活躍していた選手が少なくありませんでした。彼らが上級生になる最初の大会で、日ごろの成果を遺憾なく発揮してもらいたいです。
松本は地元開催であり、サポーターも試合会場に訪れるでしょう。ハードワークを軸とするトップのスタイルをそのまま踏襲しているイメージで、攻守ともに切り替えの速いアグレッシブなサッカーを展開していく。決して突出した選手はいませんが、全員でハードワークして、ボールを奪い、そこからすぐに攻撃に転じるという機動力を生かしたサッカーを海外のチーム相手にもぶつけていってもらいたいです。
注目すべきはやはり、海外チームに対して、日本の4チームがどれだけできるかということ。組織力や勤勉さ、アジリティや器用性といった日本人の特長を生かしつつ、それぞれのスタイルを示しながら、世界との距離感を感じることが重要。もちろん結果も大事ですが、そこだけを目指すのではなく、自分たちのスタイルを出しながら一人一人がチャレンジし、個の成長に繋がるプレーを期待したいですね。
今大会は決して4チームの経験値を高める目的だけでなく、Jリーグ各クラブのアカデミーダイレクターも視察に訪れます。国際試合を観戦する中で、いろんなヒントを得て、今後の選手育成へとつなげてもらいたいという狙いもあります。
また韓国の審判団にも来ていただきました。日本の審判団も彼らから学べることがあると思います。選手、スタッフだけでなく、レフェリーも国際試合を肌で感じることが大事であります。
この大会を通じて、クラブ間での積極的な交流を図り、選手やスタッフの育成に役立て行きたいと思います。また、今大会では全ての試合をインターネットで配信いたします。日本での開催にあたりサッカーファンや選手、指導者の皆さんに肌感覚で観ていただき、楽しんでいただければと思います。そして日本サッカー界の発展へ繋がる良い大会にしていきたいと考えています。