12月17日、南長野運動公園総合球技場で行われているJリーグ インターナショナルユースカップは大会2日目を迎えた。第1試合で激突したのは海外から招待された2チーム。オランダのAZアルクマールと韓国の全南ドラゴンズが激しく火花を散らした。
ゲームの主導権を序盤から握ったのはAZ。センターバックが巧みにボールを持ち出して相手の圧力をいなして、ボールをつなぐ。特に左利きの左センターバックであるDFジャスティン・バッカーのフィード力は抜きん出ており、後方からの確かなビルドアップで全南に守備の的を絞らせずに押し込んでいく。第1戦は時差ボケの影響もあったようだが、全体的にコンディションも上向いているのだろう。動きの量も増えていた。
この試合、AZはシステムを第1戦で採用していた4-3-3から守備的MFを2枚にした4-2-3-1に変更していた。コーエン・スタン監督は「その理由はふたつある」と解説する。一つは「全南の第1戦の試合を観て、(守備的MFを)2枚にしたほうがいいと判断した」と言う相手との兼ね合いから。そしてもう一つの理由は、トップ下で先発起用したMFメース・フードメイカースに「より広いスペースを与えるためだ」。
U-18オランダ代表にも名を連ねるフードメイカースはポジティブな意味でもネガティブな意味でもこの試合の主役だった。質の高い動き出しからボールを引き出して外へと展開し、そこからゴール前への動きで危険な形を作り出す流れは、極めて秀逸なもの。全南はこの男の動きを捕まえ切れない。ボールを持っても左利きながら右足でも強いキックを蹴れる強みを生かしつつ、巧みにパスをさばいて存在感を出し続けた。最前線でU-18スウェーデン代表のFWジア・サモフロスキーがDFを引っ張る動きを繰り返し、トップ下の位置にスペースを供給し続けたのも効いていた。
ただし、どうにも結果が付いて来ない。フードメイカースは19分にゴール前でのボレーシュートをバーに当てると、32分にも巧みな動きからの流れるようなシュートをバーへとぶち当ててしまう。それ以外にも危険なシーンを作り出したAZだったが、どうにもゴールが遠かった。「第1戦もそうだったし、そもそも今季よく見る光景なんだ」とスタン監督も頭を抱えるしかない決定力不足。フードメイカース自身、「常にチャンスは作り続けていたというのに、『なんでこんなに入らないんだ!?』という感じだったよ」と嘆くほかない前半だった。
迎えたハーフタイム、スタン監督は悩めるトップ下に対して「決められなかったことを叱るのではなく、前半のプレーを褒めたんだ。『あとは決めるべきところを決めるだけでいいんだ』という話をした」とメンタルを上げるアプローチ。それが奏功したのかは定かではないが、今度の決定機は逃さなかった。57分、サモロフスキーのパスを受けたフードメイカースが左足でゴール隅へときれいに決めて、AZが先制。ようやく1点を手に入れた。
対する全南も押し込まれる展開にめげることなく、力戦奮闘。ボランチのキム・ヒョチャンが相手の攻勢に食らい付いてルーズボールを拾い、2年生GKシン・ジフンも好守を見せ続けて、さらにカウンターから危険なシーンも作り出す。特に前半35分、MFチュ・ジュンホのパスからこの日はトップ下で起用されたMFハン・チャンヒがドリブルシュートを狙った場面は最大の好機だったと言えるが、GKアブデル・エルオウアゼインの好守に阻まれてしまった。終盤は一時ボランチに下げたハンを前線に上げるなど攻勢を強めた全南だったが、結局得点は奪えぬまま試合終了。キム・ヒュンス監督は試合後、「AZは本当に能力のあるチームだった」と脱帽。その上で「シュートを決めるところが足りなかった」と好機を逃したことを惜しんだ。
これでAZは1勝1敗。最終日に逆転優勝の望みをつなぎ、名古屋グランパスU18と対峙することとなった。