Jリーグ インターナショナルユースカップ第1日の第2試合では、韓国KリーグU-18チャンピオンの全南ドラゴンズとJユースカップ準優勝の名古屋グランパスU18が対戦した。
韓国は日本以上に部活文化が盛んな国だが、近年はユースチームの充実に注力しており、既存の高校サッカー部を置換する形でKリーグ各クラブのアカデミーを整備してきた。合わせて今年からドラフト制度も廃止されており、選手獲得を巡る自由競争が始まると同時に、自前選手の育成が大きなポイントとなる流れになってきている。そうした中で韓国国内のKリーグのアカデミーチームによる大会(日本で言うJユースカップ)を制したのが全南だった。
「パスワークを重視している」とキム・ヒュンス監督が語ったとおり、そのスタイルは伝統的な韓国スタイルとは異なり、狭い局面をパスで打開していく技巧的なサッカーだった。10番を背負い、巧みなサイドチェンジなどでリズムを作るU-18韓国代表候補のMFハン・チャンヒを軸に攻撃を展開した。守備は引いて守る意識が強く、フィジカル能力の高い選手がそろう守備陣が頑健にゴール前を固めた。
対する名古屋は6日まで試合のあった高円宮杯U-18プレミアリーグWESTが「Jユースカップから8連戦の上にアウェイが6試合、さらにがけっぷちの残留争い」(高田 哲也監督)だったこともあって、「スイッチが入らない状態だった」と、体力面と心理面での準備を欠いていた。序盤から名古屋らしいサイドからの崩しはあまり見られず、26分のMF梶山 幹太のミドルシュートなど散発的なチャンスはあったものの、決定的に崩すシーンは少なかった。「ちょっと個人でいいところを見せてやろうという雰囲気もあって、崩せなかった」(高田監督)。
だが、前半のアディショナルタイムに突入した直後だった。全南の守備が乱れたところで、MF田中 彰馬が巧みな個人技からカットインシュート。左足での難易度の高いゴールが決まって、試合の流れは一気に名古屋へと傾く。ハーフタイム明けの49分には、途中出場のFW杉森 考起が「トラップから相手が来たのを見てかわしたらコースがあった」という冷静なシュートを決めて2-0。このゴールでほぼ勝負は決まった。
なんとか反撃したい全南も、58分にMFイ・ジョンヒョンが突破から鋭いシュートを放つが、これはGK加藤 大智がグッドセーブ。相手に流れを渡さない。すると、3年生たちがオフ明けだったという全南は「体力的な準備が不足していた」(ハン・チャンヒ)と、運動量も全体に低下。なかなか攻撃が形にならないまま時間が経過し、試合はそのまま終了。シュート数が名古屋22本に対して全南5本という数字が示すとおりの内容で名古屋が2-0で完勝を収めた。
試合後、全南のキム監督は「勝ちたいと思ってここに来てはいますが、今日の試合は選手たちにとって良い勉強の場になったと思います」とコメントし、「名古屋は典型的な日本サッカーのスタイルという印象で、選手の動き出しの良さなど学ぶところが多かった」と勝者への賞賛を惜しまなかった。
一方、高田監督は「今年1年の戦いを通じて、後ろ(DF陣)がしっかりしのげる力を付けたことは改めて示せた」と守備面について胸を張りつつ、「内容は全然なかった。得点シーン以外は、アタッキングサードに入ってからのアイディアも質もなかった」と攻撃面については渋い顔を浮かべた。また2点目のゴールを挙げた杉森は「点を取れたのは良かったし、みんなとやれて楽しかったけれど、個人としてはミスが多かった。反省しないといけない」としつつ、浦和レッズユースとの次戦に向けて「Jユースカップ決勝は僕が出ていなかったので、今度は自分が出て勝ちたい」と意気込んだ。
[文:川端 暁彦]