31日、2015Jリーグヤマザキナビスコカップ 決勝でガンバ大阪と対戦する鹿島アントラーズ。3年前の優勝経験者で、今やチームのディフェンスの要を担う昌子 源が、大一番を目前に控え現在の心境を語った。
――いよいよヤマザキナビスコカップ決勝です。
「チームの雰囲気は良い意味で変わっていません。今日(27日)の練習前のミーティングでも決勝戦があるという感じではなく、公式練習があるためクラブハウスでの練習が一回分減るという話があった以外は、いつもの週と同じ始まりでした」
――優勝した2012年の決勝は左SBでの出場でした。
「前回の決勝は、試合のある週の火曜日にジョルジーニョ監督から左SBで起用されることを告げられました。その日の夜は、なかなか眠れませんでしたね。もともと左SBは新井場 徹さんのポジションだったのですが、イバ(新井場)さんは僕のためにいろいろアドバイスをくれました。それがきっかけでイバさんのことが大好きになった。そんな思い出のある大会です。つい最近も、イバさんと電話で話した時に、心に響いた言葉があります。『鹿島は2位も最下位も同じ。優勝しないと評価されない。タイトルが獲れなかったら鹿島は鹿島じゃない』と言われました。鹿島にとって優勝するのはあたりまえのこと。そういうチームだということを忘れずにやっていきたいです。伝統というものを薄れさせないためにも、勝って『やっぱり鹿島は強い』と言われるようにしないといけない」
――天皇杯はすでに敗退したため、残されたタイトルはこのヤマザキナビスコカップとリーグ戦です。
「チームメイトの土居 聖真が、天皇杯決勝の復帰を目指してリハビリしていた。その可能性を消してしまったことは本当に申し訳ないと思っています。彼とは同期ですしね。チームのためにも、聖真のためにも、ナビスコカップは絶対に優勝したい。一番悔しい思いをしてるのは聖真だと思うので、最後に聖真と一緒に喜びたいです」
――決勝の相手となるガンバ大阪の印象は?
「やっぱりパトリックと宇佐美は乗せるとJリーグでも一番厄介な2トップだと思います。(2ndステージ第15節で敗れた)湘南戦のように、相手が想像以上に前から来ても受けてしまったらダメだと思う。しっかりと跳ね返したい。初めての決勝の時は(岩政)大樹さんと青木(剛)さんが一緒だった。その時は『がむしゃらにやるだけでいい』と言われて気が楽になりました。今のチームにはタイトルを獲った選手が少なくなってるので、今度は自分が支えたいと思います」
――前から来るチームに対して、あまり上手く戦えてない印象がありますが?
「ウチがセカンドボールを拾えないと、リーグ戦の柏戦(2ndステージ 第14節)のようにラインが上がらなくなる。できるだけラインを上げたいと思うけど、どうしても間延びしがちなのでそこは気を付けたいです。ただ、僕らが思い切ってラインを上げてもセカンドボールを拾えないと意味がないですし、そこで裏に蹴られてしまえば余計に守備が難しくなるだけ。結局セカンドボールを拾えないとラインは上げられないので、FWやボランチを含めたチーム全体の働きが必要になると思います。ラインを上げられれば、僕らも前に行ってインターセプトを狙う回数も増えてくる。お互いに要求し合って上手くやっていければと思います。どのチームに対してもそうですけど、ボランチを自由にするとなかなかラインも上がらず構えてしまうので、そこは気を付けたいです」
――最近、ある動画がすごく参考になったと聞きましたが?
「ヤマザキナビスコカップの準決勝で神戸の増山(朝陽)選手に簡単に抜かれてしまったんですけど、その試合のあとに知り合いからメールが来たんです。『守備はこうやるんだぞ』っていう意味だと思うんですけど、FCバルセロナのハビエル マスチェラーノ選手の動画を教えてくれたんですよ。それは彼が延々守備をしているだけの映像なんですけど、ボールの取り方がとにかくすごい。本当に参考になりました。すごくきれいにボールを狩り取ったシーン、スライディングで奪うシーン、ちょっと乱暴に奪うシーンの3つくらいに分かれていて、足先だけで奪ったり、足と身体をうまく使ってノーファールで取ったり。それを観て『これだな!』と思いました」
――先日の柏戦で一度トライしませんでしたか?
「そう! クリスティアーノ選手に1回やりました。まあ、取れませんでしたけど(笑)。でも、なんとなく感覚がわかってきますね。クリスティアーノ選手みたいな足下の技術の高い選手にちょっとずつトライしていけば掴んでいくことができるし、あれも抜かれはしなかったのでいい試みだったと思います。あの試合ではもうひとつ試したことがあって。後半にクリスティアーノ選手に背負われた時に、パッとマスチェラーノの姿が浮かんだんです。いつもだと右足でちょんちょんとボールをつつこうとするんですけど、その時はあえて左足を、相手のドリブルコースの先に出しておいたんです。結果、ボールが足に当たってルーズボールになった。奪い取ることができなかったので成功したかどうかは微妙ですが、自分の守備の幅を広げるためにもいろいろトライしたいと思っています」
――1対1の守備は昌子選手の特長ですからね。
「クラブの人からも『お前はボールを狩り取るタイプだ』と言ってもらいました。増山選手に抜かれたのはもちろん悔しいですし、失点は大きな代償かもしれませんが、学ぶものも多かったと思います。あの失点がなければ、マスチェラーノの映像を観ることはなかったかもしれませんしね。日頃からCBは失点から学んでいくことが大事だと思っています。僕のミスから失点してチームが負けてしまったとしても、そこからなにかを学び取らないと意味がないと思うので、あの映像を教えてくれた知り合いにも感謝したいと思います」
[文:田中 滋]