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ベトナム代表徹底解説(前編)チームの特徴は?元ベトナム代表監督、三浦 俊也さんに訊いてみた。

2021年11月8日(月) 17:00

ベトナム代表徹底解説(前編)チームの特徴は?元ベトナム代表監督、三浦 俊也さんに訊いてみた。

ベトナム代表徹底解説(前編)チームの特徴は?元ベトナム代表監督、三浦 俊也さんに訊いてみた。
ベトナム代表徹底解説(前編)チームの特徴は?元ベトナム代表監督、三浦 俊也さんに訊いてみた

近年、ベトナムの躍進が目覚ましい――。

FIFAワールドカップ・アジア2次予選を勝ち抜き、史上初の最終予選進出を決めたベトナム。来たる11月11日(木)には日本との対戦を控えるベトナムについて、Jリーグとベトナムサッカーをよく知る三浦 俊也さん(FC岐阜チーム統括本部長兼テクニカルダイレクター。元ベトナム代表監督)へのインタビュー内容を交えながら前後編に分けて紹介したい。

近年のベトナム代表
~「三浦時代」を経てサッカー代表が国民的スターに~
今でこそ、東南アジア有数のサッカー大国として知られるベトナムだが、順風満帆に成長を続けてきたわけではない。代表監督(世代別監督も兼任)に就任した2014年当時について、三浦さんは「代表人気や実力はかなり下降気味だった」と話す。それでも、就任直後から日本流のトレーニングを導入し、走り負けないチームを構築すると、世代別の代表チームがイランに勝利を収めるなど、公式戦の場で善戦を披露。徐々に国内の風向きも変わり、代表人気が高まると、就任から約1年後には「街中を歩くだけでも人目が気になる」ほどに知名度も上昇したという。

三浦さんの退任後、ベトナム人監督を経て2017年途中から韓国出身のパク ハンソが監督に就任。すると、2018年にはU23アジア選手権でAFC主催の全大会においてはじめての決勝進出を果たし、準優勝という快挙を達成。代表人気は最高潮を迎え、ベトナム帰国時には凱旋パレードが行われるなど国民的なスターの扱いを受けている。三浦さんも「ベトナム代表は国民からの大きな期待を受けて戦っている。自国内の注目度の高さはベトナムサッカーが日本サッカーを上回っている点で、監督としてもやりがいがあった」と話した。

今予選のベトナム代表
ベトナムは2次予選で強豪UAEから白星を挙げるなど、順調にポイントを積んで最終的に8試合で勝点17の2位となり、ベトナム史上初めて最終予選進出を決めた。しかし、最終予選ではここまで苦戦。相手にボールを支配される展開が続き、2次予選と比較してかなり守備的な戦いを強いられている。最も良い戦いを見せた3節のアウェイ中国戦では、後半35分からの2得点で2点ビハインドの状況から追い付く激戦となったが、試合終了間際に勝ち越し点を許し、最終予選初の勝点獲得は叶わず。ここまで4戦全敗と、洗礼を受けている状態から起死回生を図ってホームでの日本戦に臨む。

ベトナム代表の戦術分析
~基本システムは守備的な5-4-1、ショートパス主体~

ベトナムは5-4-1の基本システムで最終予選まで勝ち上がってきた。最終ライン5枚の両ワイドは常に積極的な攻撃姿勢を見せる訳ではなく、基本的に守備を意識した位置を取る。2シャドーも相手保持時にははっきりボランチの横まで落ちてサイドに張り、5-4の強固なブロックを形成。1トップも激しいプレスを掛け続けるのではなく、コースを限定した守備を主に行うなど、全体としてリスクを軽減し、ディフェンスを重視する狙いが見て取れる。

一方、攻撃では完全にポゼッションを放棄したロングボール中心のカウンターを行うかといえば、そうではなく、基本的にショートパスの比率が高いサッカーを展開する。シャドーの一角に入ることが多いグエン クアン ハイ(ハノイFC/24歳)や、主にボランチを務めるグエン ホアン ドゥック(ベトテルFC/23歳)など、高いテクニックやゲームメイク力、ドリブル技術を併せ持った選手を生かした戦術といえる(選手の詳しい紹介は後編で!)。三浦さんも「ベトナムは日本やタイと似ていて、選手が小柄でボールを扱うスキルが非常に高い。ショートパスを中心に組み立てるサッカーが好まれる傾向がある」と語る。

上図は最終予選におけるベトナムの支配率(横軸)とショートパスの比率(縦軸)を、日本代表・今季のJ1各クラブの平均(10/24日終了時点)と比較したもの。これを見ると、ベトナムは支配率こそ低いものの、ショートパスの比率がかなり高く、「守備的ながらもマイボール時にはボールをつなぐ」サッカーを行っていることが分かりやすい。特にオマーン戦や中国戦はG大阪やFC東京、広島といったチームの平均値に近い(支配率は5割を超えないが、ショートパス主体)。

・中央からの攻撃に比重を置く。フィジカル面は弱点か

続いて上図の「攻撃エリア」に注目すると、中央攻撃が最も多いことが分かる。日本の攻撃エリアと比較しても、違いは明らかだ。この傾向はラストパス(シュートの1つ前のパス)の軌跡やクロス数を見ても確認できる。シュートに直結するパスの多くは中央から出されている上、クロスはかなり少ない。これは、小柄な選手が多いことと、前述した中盤のタレント陣に加え、ベトナム国内で高い知名度を誇り、水戸ホーリーホックでもプレー経験があるアタッカーのグエン コンフォン(HAGL/26歳)、今予選で得点を量産しているグエン ティエン リン(ビンズオン/24歳)など、センターラインに強みを持つ布陣であることが影響しているだろう。

一方、弱点として挙げられるのはフィジカル面か。例えば敵陣空中戦勝率においてその傾向は顕著で、約4分の1の確率でしか勝利できていない。三浦さんも「ベトナムはフィジカルが弱点。近年はトレーニングの成果も出ているが、中東やオーストラリアといったチームとぶつかり合う展開になるとまだまだ苦しい」と指摘した。

中央にタレントをそろえるショートパス主体のベトナムが、どのように日本の強固な守備陣をこじ開けるか。もちろん日本にとっても大一番だが、ベトナム目線でも試合を見てみると、観戦の楽しみは2倍になるかもしれない。

後編では選手個人にスポットライトを当て、将来Jリーグへの挑戦が期待されるベトナムサッカーのタレントを分析してみる。

(文章/データ提供:データスタジアム株式会社)
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