開幕前の下馬評は、決して芳しくはなかった。2006年途中より指揮を執り、チームに攻撃スタイルを植え付けたペトロヴィッチ監督が2011年をもって退任。新たに指揮官となったのは、監督経験のない森保 一監督だったからだ。また、当時のチームは財政難に見舞われており、戦力補強もままならかった。マイナスの側面ばかりがクローズアップされて、2012年の広島はシーズンを迎えていた。
もっとも開幕戦で前任者のペトロヴィッチ監督率いる浦和に快勝を収めると、3節からは3連勝を達成。開幕9戦無敗と好スタートを切った仙台の後塵を拝したものの、首位に勝点2差の2位でシーズンを折り返した。
躍進を牽引したのはエースの佐藤 寿人だ。鋭い動き出しと卓越したポジショニングを駆使し、ゴールを量産。新加入の石原 直樹も大事な場面で結果を出すなど、勝負強さを見せつけた。青山 敏弘のパスワークも冴え渡り、ミキッチ、山岸 智の両サイドも躍動。髙萩 洋次郎のアイデア溢れるプレーも光った。
一方で、前体制では課題となっていた守備も、森保監督の下で安定感を身に付けた。ボランチの森崎 和幸がピンチを未然に防ぎ、千葉 和彦を中心とした3バックは大きく崩れることなく、最後方に構える西川 周作も好セーブを連発。隙のない陣容で、相手の攻撃を封じ込めた。
18節に川崎Fを下し首位に立つと、その後は仙台と白熱のデッドヒートを繰り広げる。そして迎えた25節、前節に磐田と引き分け2位に転落していた広島は、首位仙台との直接対決を迎えた。
この大一番を髙萩の決勝ゴールで2-1とモノにすると、その後も着実に勝点を積み上げ、首位の座を明け渡さない。そして仙台に勝点1差で迎えた33節に、歓喜の瞬間が訪れる。仙台が新潟に敗れたのに対し、広島はホームでC大阪に4-1と快勝。勝点差を4に広げたことで、最終節を待たすに優勝を決めた。
ペトロヴィッチ監督が築いた攻撃スタイルに、森保監督が守備のエッセンスを加え、広島は結果の出せるチームへと進化を遂げたのだ。得点、失点ともにリーグ2位の数字を叩きだしたことが、その成果を表している。
Jリーグ開幕から20年目の節目のシーズン。1年目から参戦する広島が20年の時を経て、ついに頂点に立った。
なお、佐藤は22ゴールを挙げ得点王に輝くとともに、MVPも獲得。さらにベストイレブン、フェアプレー個人賞と、史上初の個人4冠を達成している。
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