佐々木則夫監督インタビュー
「アジアを制し、世界への切符獲得を目指すなでしこジャパン(日本女子代表)」
東アジア女子サッカー選手権2010 決勝大会で見事に2連覇を成し遂げたなでしこジャパンが、さらなる大きな目標であるFIFA女子ワールドカップドイツ 2011への出場権獲得を目指し、その予選を兼ねるAFC女子アジアカップを戦う。壮行試合となるメキシコ女子代表との2試合を控え、チームの指揮を執る佐々木則夫監督に話を聞いた。
※このインタビューは2010年4月9日に実施しました。
―― 2008年の前回大会に続き、東アジア女子サッカー選手権2010 決勝大会に優勝しました。この大会を振り返ってください。
・佐々木則夫監督
前回は日本の女子選手が持っている特徴を生かしたサッカーに新しくトライし、優勝することで自信を得られました。今回は新しい選手を加えてそのサッカーがどれだけできるかが課題でしたが、経験豊富な選手とうまく融合し、優勝することができました。収穫ばかりでなく、修正すべき課題もありました。しかし、今後を考えると大きな意義がある優勝だったと思います。
――その収穫と修正点について、聞かせてください。
・佐々木則夫監督
新しい選手を加えた中で、われわれが追求する攻守にアクションを起こすサッカーをしっかりとできました。選手層が厚くなりましたね。一方で、攻撃の最後の部分の、アタックを仕掛けるときに、もっと積極的にゴールを意識しないといけない。さらには、試合展開を読んでうまく状況に対応できないといけない。韓国戦では2点をリードしながら1点を返されて、その後も危ないシーンがありました。試合の流れを見極める状況判断については、まだ課題があります。
―― 以前、攻守両面でゴール前の攻防に課題があると話していました。これについては、今も同じ印象でしょうか。
・佐々木則夫監督
そうですね。組織で守る、組織で攻めるのも重要なのですが、ゴール前では個の力も必要になってきます。守備では1対1の勝負に強くなる。攻撃ではゴール前35メートルからのアタックですね。勝負が懸かってくるエリアでの組織力、個人の力をともに上げていく必要があります。
―― 5月に中国で開催されるAFC女子アジアカップについてうかがいます。2011年にドイツで開催されるFIFA女子ワールドカップへの出場権を獲得するためには、この大会で3位以内に入らなければなりません。
・佐々木則夫監督
日本、朝鮮民主主義人民共和国、中国、韓国、オーストラリア。この5カ国は実力がきっ抗しています。どこがFIFA女子ワールドカップに出場してもおかしくない。アジアのレベルはかなり上がってきています。混戦になると思っています。
―― グループステージで対戦する朝鮮民主主義人民共和国の印象を聞かせてください。
・佐々木則夫監督
守備は強固ですし、攻撃もパンチ力があります。ただ、世代交代を行っている最中で、守備でバランスを崩す瞬間があったり、攻撃では簡単にボールを失うシーンもあります。それでも、強い精神力を持っているので、やはり勝負強い。精神力の強さは、技術力や組織力を上回ることがあります。われわれとしては、押し込まれても絶対に負けない、盛り返す力が必要だと考えています。
――グループリーグを突破すると、準決勝で韓国、中国、オーストラリアのいずれかと対戦しそうです。
・佐々木則夫監督
どのチームが勝ち上がってきても、勝てるように準備しています。すでに頭の中でシミュレーションもできています。いろいろな状況を想定し、万全の状態で準決勝に臨みたいと考えています。
「これまでのスタイルで戦う」
――AFC女子アジアカップへ向けた強化試合であるメキシコ戦は、どのようなメンバー、狙いを持って臨むのでしょうか。
・佐々木則夫監督
今のなでしこジャパンには、国内でプレーする選手、アメリカでプレーする選手、欧州でプレーする選手がいます。メキシコ戦に全員がそろうわけではないのでまずは集まった選手のコンディションなどを見て、組み合わせ、連携を考えます。そして、誰がピッチに立ってもわれわれが追求する攻守にアクションを起こすサッカーができるかどうかにトライします。特別なことはしません。あくまでもこれまで築き上げてきたスタイルで戦い、課題が出てきたらまた改善、修正に取り組みたいと考えています。
――メキシコはどのようなチームなのでしょうか。
・佐々木則夫監督
現在のFIFAランキングは22位ですが、ユース年代の質が高く、確実に成長を遂げています。ランキング10位ぐらいの国と同等の力を持っていると考えていいでしょう。選手個々の身体能力が高く、技術力も高いので、スペースと時間を与えると個の力で突破を仕掛けてくる。また、精神力も強く、最後の最後まで勝負をあきらめずに戦うチームです。
――そのメキシコを相手に、第1戦を松本、第2戦を新潟で戦います。ファン・サポーターに向けて、意気込みをお願いします。
・佐々木則夫監督
なでしこジャパンの試合は、スタジアムで観戦していただく機会がなかなかありません。松本、新潟のサッカーファン・サポーターの皆さんに、「なでしこジャパンはこれだけできるんだ」というところをお見せしたいと思います。なでしこらしい試合をお見せすることを約束します。ぜひ、応援をよろしくお願いします。
以上