7月28日、なでしこジャパンがドイツ戦を翌日に控え、会場となるCarl-Benz-Stadiumでトレーニングを行った。
選手は、15時30分から1時間と決められたトレーニング時間を有効に使うため、30分ほど早くスタジアム入りして時間が来るまでにピッチ横でウォーミングアップを行い、時間と同時にボールを蹴り始めた。パス回しが終わってスタッフ総出で行われたミニゲームは、終始和やかムードで行われた。
シュート練習はDFを入れて、中央、両サイドからの組み立てを中心に約15分間。あっという間に1時間が経過した。限られた時間ではあったが、選手たちはピッチの感覚をしっかりと叩き込んだ。
5月のアメリカ・カナダ遠征が中止になったため、なでしこジャパンにとってはこれが今年初の公式戦となる。相手は北京オリンピック3位のドイツ。
1995年のFIFA 女子ワールドカップで初めて対戦してからこれまで、まだ1度も打ち破ったことのない“世界の壁”である。ドイツも日本と同じく、チームが新たに生まれ変わり、地元ドイツで行われる2011年FIFA 女子ワールドカップで大会3連覇を果たすべく、強化に励んでいる。どちらも探り合いながらの戦いになるだろうが、日本としては先手必勝で臨みたいところだ。
今回は佐々木則夫監督が兼任するU-19女子代表が参加するAFC U-19女子アジア選手権の日程と重なるため、佐々木監督とともに指導にあたっていた望月聡コーチが監督代行として指揮を執る。
「佐々木監督とはもう2年一緒にやっていますから考え方はわかっています。だから大きく戦い方が変わるということはありません。この時期にヨーロッパで試合ができるのは重要。来年にはFIFA 女子ワールドカップの予選も控えていますし、この時点でどれだけ通用するのか、何が足りないのかはっきりさせたい」と語るのは望月監督代行。
今回は、澤穂希、宮間あや、阪口夢穂など、アメリカで新しい世界に挑戦している選手の招集はない。だからこそ、実践レベルで多くの選手にチャンスが生まれるのだ。スウェーデンのウメオIKで活躍する山口麻美をはじめ、川澄奈穂美、上尾野辺めぐみといった、なでしこチャレンジプロジェクトからチャンスを掴んだ選手を含め、新たに招集された選手たちも自分たちの可能性を試す絶好の機会となるはずだ。
「3戦あるといっても初戦はあのドイツ。コンセプトはもちろんですが、まずは気持ち。これがしっかり固まっていないとドイツを相手には戦えません。強い精神力を持って“戦う”こと。これがなでしこだっていうサッカーは“戦う”が基本ですから」と、ベテランへと成長した安藤梢がドイツ戦のポイントとしてメンタル面の大切さを挙げると、出場のチャンスを狙う那須麻衣子は「マンハイムは涼しくて体は動きやすい。持久力には自信があるのでオーバーラップしてどんどん仕掛けたいです。緊張するタイプなんですけど、今はワクワク感の方が大きいですね」と、ドイツ戦に向けてイメージを膨らます。新しい選手と経験豊かな選手との融合もこの遠征の楽しみの一つだ。
対するドイツのリンダ・ブレソニクは「日本の戦い方はビデオで見ました。プレスもしっかりかけてくるチーム。これまでの2戦も拮抗したゲームでしたし、明日もタフな試合になると思うが、全体をコンパクトに保って戦いたい」と、翌日の試合に意欲を見せた。
FIFA女子ワールドカップで史上初の2連覇を遂げた世界のサッカーを牽引するドイツを相手に新生なでしこジャパンはどのような戦いで挑むのか。7月29日、現地時間16時にその時を迎える。
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