佳境を迎えたJリーグでは、どの順位も気が抜けない。11月22日開催のJ1第32節にユアテックスタジアム仙台で激突する仙台とC大阪は、前者が14位、後者が17位でこの時を迎える。2009年の同日には当時のJ2で優勝争いの直接対決をした両者が、それから5年後になんとも複雑な立場に変わって同所で戦う。独特の緊張感に包まれた、激しい試合となるだろう。
アウェイのC大阪にとっては、他会場の結果も合わせるとJ1残留の望みが絶たれる可能性がある。現在指揮を執る大熊裕司監督は、前節からの三週間でできる限りの準備をして敵地に乗りこむはずだ。勝つためには当然得点がなければ始まらないので攻撃陣に注目したいところだが、このチームはその才能には困らない。特に若き南野拓実にはパス・ドリブル・シュートあらゆる点での仕事が期待される。中断期間中の練習試合では、彼を最前線に配置するかたちも試されたという情報もある。年代別代表からチームに帰ってからも大車輪の働きを見せる彼を中心としたC大阪の攻撃は、迫力を備えている。
杉本健勇や永井龍のように空中でも地上でも力を発揮できる選手もいれば、カカウやフォルランのように技術と経験に基づく独特の感覚でシュートコースを射貫く点取り屋もいる。両サイドの突破やアーリークロス、はたまた深い位置からの扇原貴宏らのパスなど、攻撃のしかけが多いチームなだけに、いかにしてフィニッシュに持ち込むのかが問われる。
これを迎え撃つ仙台は、8月から9月にかけて5連敗を経験するなど苦しい時期も少なくなかったが、第26節・川崎F戦から戦術を修正して立て直した。背後のスペースを埋めることを優先する守備を採用し、カウンターの時に一気に前に出るというかたちを採用すると、大崩れせずに10月の4戦を2勝1分1敗で乗り切った。続く11月には、前節・G大阪戦で試合終盤に柳沢敦のゴールで追いつくという粘り強さも見せた。
仙台はこの大一番でも「しっかりした守備をしてからのカウンター、という基本は変わらない」と渡邉晋監督は考える。梁勇基も「相手が前に出たところを逃さず、カウンターでうまく背後を突いていきたい」と展望する。プレッシャーのかかる一戦で、通常どおりの戦い方ができるか。心身のコンディション調整は重要だ。
そこで仙台に頼もしいFWが戻ってくる。第29節・名古屋戦で負傷して戦列を離れていたウイルソンだ。左膝の負傷で長期離脱を余儀なくされると思われたが、11日にはもう全体練習に復帰。「C大阪対策も含め、いい練習ができました」と、この一戦に向けて準備を進めてきた。中央でもサイドでも相手の裏のスペースに潜りこむウイルソンが復帰したことで、カウンター攻撃の切れ味は増すだろう。赤嶺真吾のポストプレーや、武藤雄樹の突破力と合わせて、C大阪のゴールを脅かしたいところだ。仙台にも梁や野沢拓也のパス、太田吉彰のドリブルとクロスというような、攻撃のしかけがあれこれ備わっている。さらに前節・G大阪戦では途中出場の柳沢やハモン ロペスが活躍し、攻撃の選択肢を増やしている。
先発も控えも関係なくチームを勢いづけることが求められる一戦。これは文字通りの総力戦だ。11月22日、ユアテックスタジアム仙台は間違いなく熱くなる。
以上
2014.11.21 Reported by 板垣晴朗