リーグ戦残り2試合。自力でのJ1昇格プレーオフ進出の可能性が消え、2戦連勝するしかない岡山が、シーズン終盤、様々なモチベーションを保って戦い続ける熊本を、ホーム最終戦に迎える。
岡山は前節、横浜FCと対戦し、9戦ぶりの勝利を掴んだ。最終ラインはコミュニケーションを欠かさず、削り気味に行く千明聖典、粘ってマイボールにする上田康太、と両ボランチもボールを奪いに行く意識を全面に出した。そして押谷祐樹の鮮やかな2つのゴールがあった。8月下旬以来の無失点となった前節は、全員のハードワークが機能したゲームだった。好セーブを連発したGK中林洋次はこう話す。「大分、京都戦と悪い内容じゃなかったのに結果がついてこなかった。横浜FC戦もピンチがあったので紙一重だったが、中へ中へ来る相手に対して、コミュニケーションを取って対応できたから、うまくはまったのかなと思う」。また押谷の1点目でスペースを作る走りを見せた田所諒は、「チームとして踏ん張って勝てたことは大きい」と、良い笑顔を見せた。
迎える熊本は前節がホーム最終戦だった。愛媛と対戦し、3-1で勝利したこのゲームは、前半は愛媛の3バックの左右のスペースをつく攻撃を、さらに後半は、2得点のアンデルソンが脅威的なシュートセンスを見せたゲームだった。同時に今季限りの引退を発表している藤本主税、吉井孝輔という、熊本の歴史に刻まれ、受け継がれる戦う存在が全員を奮い立たせていたようだった。
熊本は、積極的にプレッシャーをかけ、攻め込まれた時には素早く守備ブロックを作って対応する、確固とした守備をベースに、勢いのある攻撃の形を育ててきたチームだ。齊藤和樹が最前線で、ドリブラーの嶋田慎太郎が齊藤から近い距離を保った2トップに近い形。嶋田は、熊本アカデミー出身で10月19日の第37節・磐田戦でプロデビューを果たし、前節プロ初ゴールを決めたルーキー。北嶋秀朗の背番号「39」を継承する期待の星だ。3バックのチーム相手には、前節の愛媛と、第38節で対戦した長崎も攻略、勝利している。愛媛戦では両SBの片山奨典、藏川洋平のクロスが冴え、両サイドを起点とした攻撃からシュートチャンスを作り出した。今節は藏川が出場停止のため、岡山から期限付き移籍中の篠原弘次郎がSBかCBに入ることが予想される。
「速い」と熊本の印象を話すのは千明聖典だ。後藤圭太は、「予測できない動きのあるアンデルソン、それから仲間(隼斗)や澤田(崇)というドリブラーは、いい状態で前を向かせないことが大事。ギリギリのところで潰したい」。前節、スタメン出場した近藤徹志は、「齊藤、アンデルソンをしっかり抑えたい。前節は前の選手も後ろまでプレスバックしてくれていた。今回も積極的な守備をして、僕らは0で抑えることを目標に、我慢する時間帯にはしっかり我慢できるようになりたい」と話す。
岡山はここで負けると昇格プレーオフ出場の可能性は断たれる。しかしこの切羽詰まったギリギリ感は、岡山の選手には順境よりも力の出せる状況なのかもしれない。前節・2得点の押谷はキャリア初の2桁ゴールという目標もあり、京都戦でチャンスを潰した片山瑛一も、個人的にまったく満足できていない日々を過ごしてきた清水慎太郎も、このゲームでゴールを狙っている。
以上
2014.11.14 Reported by 尾原千明