小雨の降る肌寒い中での一戦となったが、両チームの選手そしてサポーターの心のうちは熱くたぎっていた。観客席はもちろんメディア席も埋め尽くされており、今節の注目度の高さがうかがえた。

昇格プレーオフ進出を目指す千葉の前に受け身になるとも思われた松本だったが、序盤に攻勢に出たのはホームチームだった。山本大貴、飯尾竜太朗ら若手にとってシーズンはまだ終わっていない。来季のために少しでもアピールしたい立場の選手には強豪との試合は何よりも大切なチャンスだった。もちろん負けられない千葉も魅せる。12分、ゴール前で得たフリーキックを、キッカーの中村太亮が直接狙う。これは村山智彦が好セーブで阻んだものの、ゴール右上の枠をきっちりととらえていた。

しかし、先にチャンスを生かしたのは松本だった。14分、右サイドからのピンポイントクロスに合わせたのは喜山康平。やや低いボールながら、「クロスが自分のところに上がってくると思った。相手ディフェンダーが近くに来たが、上手く剥がすことが出来た」と振り返るゴールで先制に成功。１点を追いかける形となった千葉もまずは同点に追いつくべく前を向くが、松本の厳しいチェックの前に中盤でボールを失い、またセカンドボールもなかなか拾えないためにペナルティエリア近くまで持ち込むことができない。43分に中村の右コーナーキックから一度はゴールネットを揺らすが、これはファウルによりノーゴールの判定。松本は命拾いした形で前半を折り返す。

後半も松本は電光石火のカウンターあるいは十八番のセットプレーで得点の匂いを漂わせる。しかし、勝つためには２点を取らないといけない千葉も佐藤勇人に代えて山口慶、町田也真人に代えてケンペスを投入することでチームのリフレッシュを図る。前線に森本貴幸とケンペスを並ぶ形となり、この実力派２トップはさすがの存在感を発揮し、しばらくは千葉の時間が続く。しかし68分、右サイドの飯尾からのクロスを岩上祐三が頭で押し込む。ちょうど１点目のリプレイを見ているように高木駿の手をすり抜け、ゴール右隅へと吸い込まれていった。

スコアは２点差まで広がったが、無論千葉は勝点３を諦めない。幸野志有人に代えてジャイールを投入し、完全な臨戦態勢へとシフト。前への推進力を強めるが、時間を経るにつれて千葉の選手たちのスピードが鈍りはじめる。局面のクオリティでは劣勢だが、運動量と走力で負けるわけにはいかない松本は粘り強い守備で後半アディショナルタイムまでゴールを割らせず。このままクリーンシートで終わればなお良かったが、やはり難しい。あと残りワンプレーと90＋４分、最終ラインのクリアミスを逃さなかった森本のゴールで千葉も意地を見せたが、その直後に試合終了の笛が鳴った。

千葉は前半は完全に持ち味を消された。後半こそ持ち直したが、「サッカーには流れがありますから良い時間帯の時に得点に結び付けられるか」（関塚隆監督）。やはり流れの傾いた時間帯をしのがれたことが痛かった。
対する松本。「“お祭り騒ぎ”でもおかしくないのに悪天候にも関わらず、いつも以上の声援を送ってもらったことは我々の大きなエネルギーになった」と反町康治監督が語るように、この日の入場者数はアルウィン新記録となる18114名が詰め掛けた。その熱量がチームの大きな後押しになったことは間違いない。

以上

2014.11.10 Reported by 多岐太宿