シーズン大詰めとなる40節。大分銀行ドームでは現在勝点60で6位の大分が、同47で14位の水戸を迎える。開幕戦で対戦したときは水戸が1−2で勝利しているが、大分はホームでの水戸との対戦成績は7勝2分と負けなし。ここ最近の試合では、両チームとも自分たちのスタイルが明確で、選手も自信を深めている。高水準の試合が期待できそうだ。
ホームの大分は前節、敵地で岐阜と対戦して3−2で勝利。ボールを蹴ると水しぶきが上がり、ボールの動かないピッチで雨のサッカーに徹した。「蹴っては走る」をチーム全体で愚直に繰り返し、手にした勝点3は大量の水分を含んだボールより重かった。これまで力強さを感じなかったチームに泥臭さが加わった。この勝利に田坂和昭監督は、「いまは勝つことが我々にとっては最も大事なことなので、この勝利は大きい」と語り、「サッカーの原点を見た」と振り返った。ボール運びの優先順位は縦、そして横、最後に後ろ。前向きなスタイルと気持ちは、昇格へのプレッシャーがかかるリーグ戦残り3試合で重要となる。
今節も最終ラインの裏やアンカーの横のスペースを狙われることが考えられるが、「ラインを下げるつもりはない」と田坂監督。あくまでもコンパクトな陣形を保ちながら、前線に重心を置きながら迎え撃つつもりだ。末吉隼也、林容平の攻守のスイッチャーがボールホルダーに思い切ってアタックし、ボールの奪いどころに対する共通理解が出来たあたりから、そのタイミングもますます息が合っている。選手たちは「このサッカーで昇格したい」と強く思っているし、田坂監督も同じ思いだ。大きな期待が持てそうな雰囲気が漂っている。
一方、水戸も大分と同じような空気が流れている。リーグ終盤にきて自分たちのスタイルに自信を持っている。田坂監督は「守備が非常に整備され、攻撃も狙いを定め徹底されている」と分析する。昇格を決めた湘南、松本に次ぐ失点の少ない守備陣は強固であり、攻撃は対戦相手に応じて、素早くシンプルにロングボールを放ることもあれば、ボールを動かしサイドから崩すこともできる。相手の長所を的確に消しながら、相手の隙を突く術は、リーグの中でも突出している。
プレーオフの可能性もなければ、降格の可能性もないが、残り試合を消化試合と考えている節な全くない。それは前節の横浜FC戦(△2−2)でも見てとれた。これまでチームを引っ張って来た本間幸司や鈴木隆行らベテランに頼ることなく、中堅、若手選手が「自分たちでやらないといけない」という高い意識を持って、90分間同じ方向を向いて戦うことができている。今節も気を引き締めて挑むことは想像に難くない。
得失差を見ると大分がマイナス2に対し、水戸はプラス3と上回っている。順位こそ離れているが実力に差はない。試合の焦点だが、4バックの大分と3バックの水戸では当然ミスマッチが起きる。ボールを持てば押し込む時間が長くなり、ボールを失えば押し込まれる時間が続くだろう。一つひとつのプレーをどれだけ強く、速くできるか。技術的なペースを固め、そこにプラスアルファのあるチームが勝者となれるはずだ。
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2014.11.08 Reported by 柚野真也