一言で言い表せば「我慢の試合」。立ち上がりに我慢したのは、横浜FMだ。浦和はじっくり丁寧にパスを回し、攻勢に出る。7分には森脇良太、鈴木啓太が立て続けにミドルを見舞う。守備でもファーストディフェンスが素早く、横浜FMはビルドアップすらおぼつかず、トップ下の中村俊輔はボールに触れようと下がり始めた。その矢先の16分にアクシデントが発生。ピッチ中央での接触プレーで中村が顔をしかめ、倒れ込む。負傷により、20分に藤本淳吾と交代した。
ただ、大黒柱不在に危機感を感じたのか、横浜FMのエンジンが掛かり出す。中でも前線で存在感をアピールしたのが、右ハーフの佐藤優平。動き出しがよく中盤からパスを引き出し、ゴール前に何度も顔を出す。また、28分には槙野智章から高い位置でボール奪取し、そのままドリブルシュート。彼を含め、前線の選手の果敢なプレスもハマり、30分過ぎに形勢は逆転した。
もう1人際立った働きを見せたのが、この日ボランチに抜擢された本来DFのファビオだ。「本当に今日のゲームの大きな収穫」と樋口靖洋監督の言葉通り、長いリーチを生かした激しいボディコンタクトで、何度となく浦和の攻撃の芽を摘み取る。攻撃に転じた際には、柔らかいボールタッチからのパスで、攻撃の第一歩を築いた。
前半の戦況を見たペトロヴィッチ監督は、試合後、自ら「調子が悪かった」と告白したボランチ鈴木啓太を下げ、後半頭から青木拓矢を投入。53分には、その青木から右サイドを駆け抜けた槙野への縦パスが通り、ペナルティエリア内でシュート。だが、GK榎本哲也に詰められブロックされる。浦和は「優勝を狙う上でリスクは冒せない」(槙野)と本来のスタイルを捨て、長めのパスで活路を見出そうとした。
とはいえ、戦況は変わらず、横浜FMがボールを握り攻め、浦和が耐え凌ぐ展開は続く。横浜FMは70分に1トップを伊藤翔から藤田祥史に差し替えると、主に左サイドバック下平匠が起点になって守備のギャップを上手く突き、浦和の右サイドから攻め立てた。それでも肝心のゴール前での精度を欠き、決定打は出ない。
そして「0−0」の匂いが漂い始めた76分、浦和は制圧された右サイドに関根貴大を投入。そして3分後、決勝ゴールが彼の右足から放たれたのだ。関根は柏木陽介からのパスを受け、ドリブル発動。対峙した下平は縦への突破を警戒し、飛び込まず間合いを広くとって対応。その刹那、急激なカットインで切り込み、中で待ち構えていた阿部勇樹へパス。フリーの阿部のシュートはGKにセーブされるも、その跳ね返りに関根が反応。難しいショートバウンドのボレーだったが、きっちり抑えてゴールゲット。赤一色に埋め尽くされたゴール裏は歓喜で爆発した。
先制後に浦和がやることは1つ。守り切ることだ。終盤にはファビオ、栗原勇蔵、矢島卓郎のハイタワーを並べた相手のパワープレーにも屈せず、虎の子の1点を死守。貴重な勝点3を積み上げ、次節(11/22)ホームで2位・G大阪との天王山を制すれば、優勝が決まる。
以上
2014.11.04 Reported by 小林智明(インサイド)