柏の攻撃面における最大の特徴は、両ウイングバックの攻め上がりにある。そこで、徳島が企てたプランは「柏のボランチが中間層で持って、シャドー、もしくはワイドが引いた時、しっかりアプローチをする」(小林伸二監督)というものだった。
徳島はサイドに追い込むような形で2選手がボールを受ける柏のウイングバック、あるいはシャドーに一気に寄せていく。序盤はそこでボールを引っ掛け、ルーズボールを拾った徳島がショートカウンターを仕掛けた。徳島にとっては悪くない試合の入りだった。
「相手がどうディフェンスをするのかを見て、両サイドが行くところはありますけど、そのバランスを見ながらというのは、みんなが常にしゃべりながらできた」(大谷秀和)。
その大谷の言葉にも象徴されるように、序盤の攻防の中で、徳島がサイドに狙いを置いて2選手がアプローチに来ると判断すると、相手が人数をかける分、逆に薄手になる中央攻撃を繰り出す。10分に見せた橋本和、レアンドロ、大谷とつないだシーンは、徳島のボランチの濱田武がサイドへアプローチに引き出されたため、中央の大谷は完全にフリーだった。徳島の狙いを逆手に取った柏。太田徹郎のシュートは枠を逸れたが、ここから徳島の目論みを外す柏の試合巧者ぶりが展開されていく。
「プレスをサイドに限定した時に、そのまま蹴ってくれればいいですけど、サイドに付けると柏はバイタルを狙う。バイタルに付けるとボランチが締めますから、そうしたら(柏の)ボランチが後方から入ってきて横パスをもらう。ボランチがサイドに食い付くと中央にクサビを入れられ、ボランチが締めると相手のボランチが入ってきた」(小林監督)。
徳島にすれば、狙いはある程度できている。だが「ハマりそうなんだけどハマらない。袋の中で取れそうなんだけど、なかなか取れない」と、会見の場では小林監督は致し方なしといった様子を見せた。
全て自分たちの狙いの逆を取る、狙いをあっさりとはぐらかす柏の戦い方に関して、小林監督は“やられた”という感が強かったのだろう。記者会見では普段にも増して饒舌に、自分たちのあらゆる狙いに対し、それを逆手に取ってきた柏の出方をこと細やかに語り、敗因を分析していた。
17分の柏の先制弾も、結局はレアンドロと橋本が、濱田、佐々木一輝、村松大輔のサイドでのアプローチを外し、橋本が裏のスペースへ突破して、ドゥドゥに精度の高いグラウンダークロスを入れたものだった。また、41分の追加点も、徳島のラインコントロールの乱れがあったにせよ、ボールを持つ橋本に村松がアプローチを仕掛け、そこで空いた背後のスペースにレアンドロが抜け出して生まれたゴールだ。
ボール保持者が相手を食い付かせ、そこでできた背後のスペースにフリーの選手が抜け出して決定機を作る。シンプルだが効果的。後半にも、途中から入った工藤壮人がボールを収め、相手のマーカーを寄せておき、フリーのレアンドロがスペースへ抜け出して決定的なチャンスを何度も作り出した。追加点は生まれなかったが、終始危なげない試合展開に「とてもクオリティーの高かったゲーム」とネルシーニョ監督も選手を称賛した。
Jリーグは残り3試合。すでに18位が決定している徳島には、ホームで勝利する、そして来季につなげるという目標がある。2009年に降格を経験している柏も、ラスト4試合の戦いが翌2010年のJ2優勝のベースになり、そのJ2優勝がJ1初制覇につながったことを考えれば、徳島にとって残りの3試合は必ず来季に生きてくるはずだ。
そしてこの勝利で今季初の4連勝を飾った柏も、最終節までACL出場権獲得の可能性をつなげるために、残りの3試合は全勝を狙う。
「どこが相手だろうと、気を引き締めて勝つ。下位チームとの対戦が続きますけど、受けて立つんじゃなくて、どんどんチャレンジしていくような展開になれば、今日のような試合になる」
連勝で自分たちの勢いを感じながらも、栗澤僚一はそう言ってラスト3試合に向けて気を引き締めていた。
以上
2014.11.03 Reported by 鈴木潤