残り4試合のJ1リーグ戦で、剣が峰に立たされた17位のC大阪。J1残留のためには、とにかく勝ち続けるしかない。そのなかで、この第31節では、J1残留を争うライバルとの直接対決を迎える。相手は13位甲府。その勝点差は、わずか3。C大阪が勝てば、勝点で並び、得失点差で上回っているために、甲府との立場は逆転する。もし負ければ、さらに厳しい状況におかれ、逆に甲府がJ1残留確定に近づく。桜色の戦士たちにとっては、まさに生き残りをかけた一戦。そして、甲府にとっても、混戦模様の残留争いで、1つの敗戦が命取りとなるだけに、負けは許されない。
前節の横浜FMとのアウェイ戦を、スコアレスドロー。勝ちきれなかったものの、勝点1を積み重ね、15位大宮、16位清水との差は1に縮めた、C大阪。苦しい戦いが続くものの、大熊裕司監督が就任後は、3勝1分4敗。「走りきる」「戦い切る」サッカーを、限られた時間のなかでも浸透させ、なんとか勝点を積み重ねている。ただし、停滞が許されない現実があるのも確か。そして、前節の勝点『1』を活かすも、殺すも、今節次第。「勝つしかないので、チーム全員でしっかりアグレッシブに戦って、勝点3をとりたい」というのは、扇原貴宏。大熊体制後、3勝すべてがホームゲームというなかで、桜色のサポーターの後押しも力に、J2降格圏を抜け出すためには、リスクを冒してでも、攻めに行かなければいけない。今週の練習のなかでも、甲府の堅守を想定しながら調整を行ったC大阪は、様々な攻撃陣の組み合わせも試しながら、ゴールへ、状況打破へ、念入りに調整していた。
C大阪と甲府とのリーグ戦での通算戦績は、C大阪の6勝7分4敗。ただし、C大阪が勝利したのは、いずれも甲府のホーム、山梨中銀スタジアムでの試合のみ。近年のJ1でも、C大阪はホーム、キンチョウスタジアムでの試合で、2011年度はハーフナー マイクの2得点などで0-4、13年度は河本明人のJ1初得点により0-1と、いずれも敗退。当時はレヴィー クルピ監督のもとで、前がかりな攻撃サッカーを展開し、そこで甲府の堅守速攻にハマって敗れることが目立った。また、J2時代でも、大阪長居スタジアム(現、ヤンマースタジアム長居)にて、当時は香川真司の獅子奮迅の活躍などもありながら、08年に3-3、09年には0-0、1-1と、引き分けが続いている。
前回の甲府との対戦も、スコアレスドロー。当時は、今季2人目の指揮官となったマルコ ペッツァイオリ監督の就任後、リーグ戦3試合目だったC大阪。チームとしては、立て直しをしつつも、試行錯誤していた時期でもある。ただ、そのなかでも、ボールを支配する時間は長くなる、いつもの甲府戦での展開にはなるも、堅守を崩せず。逆に、終盤には決定的なピンチも作られたが、なんとかしのいでいた。「自分たちのスタイルを徹底していて、ぶれずに、まとまりのあるチームを作っている」と、現在の指揮官でもある大熊監督も評するような、城福浩監督率いる甲府。被シュート数がJ1のなかで最も少ない相手のゴールをこじ開けるのは、容易ではない。それでも、「自分たちのやるべきことをすべて出しきることを集中してやれば結果はついてくる」というのは、ホーム3試合連続ゴール中のカカウ。敢然と甲府戦ホーム初勝利を目指し、C大阪は攻めに行く。
一方、9月に入ってから、複数失点を喫したのは、第24節名古屋戦(0-2)のみ。8試合中5試合が無失点と、我慢強い守備が光る甲府。前節の川崎F戦では、先手を取られながらも、阿部拓馬のJ1初得点で前半のうちに試合を振り出しに戻すと、終盤にはFKから佐々木翔がヘッドを叩き込んで、逆転勝利を果たした。アウェイでも甲府としては、持ち前の堅守を活かした戦いを続け、着実に勝点をもぎ取りたいところ。今節はジウシーニョが累積警告により出場停止となるも、攻撃の柱となるクリスティアーノが戻ってくる。ゴール前には、甲府最後の砦としてC大阪の前に君臨し続ける荻晃太もいる。C大阪に練習生として参加した期間もある佐々木も、昨シーズンのキンチョウスタジアムでの試合同様に、相当気持ちが入っていることだろう。チームは試合前日、大阪で調整。このサバイバル決戦に臨む準備はできている。
果たして、南野拓実、杉本健勇、カカウ、フォルランら、攻撃のタレントが揃うC大阪が、ホームで、この大一番で、力を発揮するのか。それとも、チーム力の高さが際立つ甲府の堅守が、これまでどおり披露されるのか。ピリピリした、緊張感あふれるJ1残留を懸けた決戦は、2日13時に、ヤンマースタジアム長居でキックオフされる。
以上
2014.11.01 Reported by 前田敏勝