「3連勝すること、3連敗しないこと」。
ラモス瑠偉監督が掲げてきた一つのテーマである。しかし3連勝は達成できておらず、前節・北九州戦に敗れると今季初の3連敗。9月からわずか1勝で、18位にまで後退してしまった。
「サッカーだから、(勝つためには)常にゴールは必要。とりあえずゴールが足りない」。
遠藤純輝がそう振り返るように、失速してしまった原因の一つは得点力の低下だろう。第35節・山形戦のプレビューでも書いたことだが、9月以降の9試合で奪ったゴール数は『5』(1勝3分5敗)と、なかなかこの課題を解消できずにいる。無得点で勝利をつかむことはできないのだから、かつて武器としていた得点力を復元させることは不可欠だ。阿部正紀は「DFとしてはまず(失点)ゼロでいきたい」と無失点を強調したが、それはリードを与えれば、相手の守備強度が上がり、得点の確立が下がるからだ。ここ2試合はチャンスも作りながらゴールを奪えず、まさにそんな展開に持ち込まれているだけに、先制点の行方は特に重要である。
「良くないとかじゃなくて、どこか手詰まっている感じ」と語るのは、毎試合のように相手の厳しいマークを受けている高地系治。「俺も自分で(マークを)剥がさないといけないけど」と前置きつつ、臨機応変さと攻撃のアイディア不足に言及する。「俺に一枚付いてきたら絶対にどこかしらが空いているわけだから、そういうところでもっとうまく突かなくちゃいけない」。
そのためか、今週は、攻撃に特化した練習が繰り返された。テンポの速い攻撃と2列目、3列目からの飛び出し。人数を掛けながらの遅攻と速攻、中と外の使い分け。前からプレッシャーを掛けてくるであろう相手の出方やシステムを想定しながら、いつになく攻撃パターンを入念に意識付けしていった。あとは「実際の相手が出てきた中でどれだけ精度高くできるか」(高地)。どんな相手からも主導権を持つことができる岐阜だが、練習の成果を示すことができるか。あるいはそれができなかったときに、目まぐるしく変わるピッチ状況にいかに対応していけるか。ゴールはその先にある。
そんな状況で対戦するのは、熾烈なJ1昇格プレーオフ争いに身を置く大分である。負傷者が絶えず、戦力のやりくりに頭を悩ませている側面もあるようだが、前節は後半アディショナルタイムに決勝点を叩き込み、岡山を劇的に破った。これまで培ってきたモノ、全員の結束力を感じさせる内容でプレーオフ圏内の6位に進出しただけに、この順位を死守しようと、高いモチベーションと勢いをまとって乗り込んでくるだろう。大分に対しては5試合連続勝ちなしでもある岐阜。とてつもなく強大な相手だ。
しかし、岐阜には岐阜の戦いがある。今シーズンが始まるとき、クラブは目標を「10位以上」に設定した。昨季までとは違う姿を見せる。そんな強い信念の下で戦ってきた。あれから確実に成長を見せているものの、10位との勝点差は「7」。残り試合数を考えると少し厳しい数字かもしれないが、当然このままで終わるわけにはいかない。結果で示さなければいけないプロの世界、18位ではやはり寂し過ぎる。
J2もシーズン最終盤を迎え、各地でデッドヒートが繰り広げられている。ともすれば今節一番の話題を集めているのは、松本の2位が決まる可能性のある福岡の地かもしれない。しかし岐阜には岐阜の、大分には大分の戦いがある。目的こそ違えど勝利を至上命題とする両者、長良川には長良川の熱き90分がある。
以上
2014.10.31 Reported by 村本 裕太