群馬にとっては最悪の結末、千葉にとっては劇的なエンディングが待っていた。1−0と群馬の1点リードで迎えた終盤。眠れる千葉が目覚める雰囲気は確かにあった。粘りの守備をみせていた群馬だったが、アディショナルタイムでの痛恨の逆転負け。勝利の「草津節」が流れるはずだった正田スタには、千葉サポーターの勝利の凱歌が高らかに響いていた。
試合に先駆けて前々節にJ通算200試合出場を達成した青木孝太の記念セレモニーが行われた。両親から花束を送られたファンタジスタには群馬、そして古巣千葉のサポーターから大きな歓声と拍手が送られた。「両チームのサポーターの声が聞こえて本当にうれしかった」(青木孝)。左MFの位置でプレーした青木孝は、足元の華麗なテクニックでプレスを剥がずと、豪快なドリブルで次々とチャンスに絡んでいく。
先制ゴールは、青木孝のヘッドだった。53分、左CKを得た群馬のキッカーはベテラン金沢浄。ファーに位置した青木孝は、マークを外してゴール前へと飛び込んでいく。そしてDFと競り合いながらもヘッドでゴールネットを揺らしてみせる。「マークを外したところに、最高のボールが入ってきた」。青木孝の今季5点目のゴールによって先制に成功した群馬は、千葉の攻撃をブロックでかわして、時間を着々と進めていく。
千葉が猛攻を仕掛けてくることは想定していた。群馬はコンパクトなライン設定でピンチを回避、勝点3へのカウントダウンへ入る。だが、千葉の圧力によってラインがじわじわと後退。「パスミスが増えて守備のリズムが崩れてしまった」(小柳達司)。群馬はチーム全体が次第に間延びしてプレスの効力が低下、80分過ぎからは千葉の鋭いショートカウンターを浴び続けることになる。
耐えられなかった。85分まで千葉の攻撃を決死の守備で凌いでいたが、86分、守備網が決壊した。ゴールでのこぼれ球をケンペスに拾われると、必死のカバーリングもむなしく同点ゴールをぶちこまれてしまう。悲劇はこれで終わらない。アディショナルタイムの93分、谷澤達也が右サイドから入れたクロスをファーでカバーした宮崎泰右がクリアミス。そのボールは無情にもゴールへと転がり、千葉の勝利を確定するオウンゴールとなった。
逆転勝利を収めた関塚隆監督は「選手のひたむきなプレーが結果につながった」と話したが、昇格へ突き進むチカラが群馬を凌駕したのは間違いない。ゲーム中盤までは群馬のリズムだったが、ケンペスを投入し群馬に圧力をかけるとゲーム内容は一変。足の止まった群馬を気迫で圧倒して、執念で勝点3をもぎとった。大一番・次節磐田戦に1ゲーム差で臨めるのは大きなモチベーションだ。
千葉相手に残り5分までリードしていた群馬だが、力及ばず逆転負けを喫した。前期のアウェイ千葉戦でも2−0から逆転されたが、今回も同じ鐵を踏むことになった。「結果だけをみれば成長していないことになる」(富居大樹)。千葉と互角以上に戦いチーム力を示したのは確かだが、それを結果に結びつけられないもどかしさは依然として残っている。今節の結果により群馬は19位へ転落。そしてJ2残留が決定した。
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2014.10.27 Reported by 伊藤寿学