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【J1:第28節 大宮 vs F東京】レポート:再びのウノゼロ。堅守大宮、猛攻のF東京をクイックリスタートで沈める。(14.10.19)

5月6日、味スタで戦った試合も、スコアは1−0だった。F東京は圧倒的に攻めながら、最後まで大宮のゴールをこじ開けることができず、試合終了直前にロングボールの対応ミスで敗れた。5カ月後、NACK5スタジアムでの再戦も、F東京は大宮を圧倒した。シュート数は大宮3に対してF東京は15。それでも勝者は、またしても大宮だった。

「皆さん見ての通り、90分間、ハーフラインの向こうの相手エリアでプレーしていたと思う」と、試合後にマッシモ フィッカデンティ監督が憮然とした表情で語ったのも5月と同じだったが、大宮の守備陣は、「5月の時とは違う」(横山知伸)と感じていた。5カ月前は最初から守備的に、引いて戦ったが、「今日は攻められてる中でも守備にアクションがあった。前から取りに行く姿勢があった」(横山)。立ち上がりこそF東京の攻勢に押し込まれ、守備の要の金澤 慎が15分で負傷交代のアクシデントもあったが、増田誓志がその代役を見事に務めてしっかりとブロックを組み、横方向のスライド、縦の押し上げを集中して行い、F東京にボールを握られながらも、流れの中で決定機は作らせなかった。

F東京にとってはフラストレーションの溜まる展開。その苛立ちが、この日がJ1の試合を捌くのが2試合目の若い主審の判定に向かった感がある。接触でファウルが取られるたび、F東京の選手が次第に不満を露わにしていく。43分、自陣でルーズボールを収めたムルジャに森重が後ろからチェックし、ボールは大宮ゴール方向へ転がる。レフリーが笛を吹くが、森重と高橋秀人はノーファウルをアピール。その間に家長昭博がクイックリスタートする。ファウルの位置とはズレており、しっかりボールを止めてセットした様子もなかったが、主審はインプレーを認めた(他の場面ではリスタートの位置にこだわってやり直しを命じることもあったのだが・・・)。家長からボールを受けた泉澤仁が左サイドでボールを運び、再び家長に戻す。家長の左足から正確なクロスがゴール前へ。そこに待っていたのは、家長のリスタートに呼応して長い距離を駆け上がった高橋祥平だった。見事なダイビングヘッドを突き刺し、大宮は2本目のシュートで先制する。

これが決勝点であり、一瞬の隙がF東京にとっての命取りとなった。後半もF東京がボールを握ってゲームを進めたが、「相手の攻め方は映像で見た通りのパターンだったし、結局最後は中なので、中を固めていこうと」(横山)、しっかり準備を整えた大宮にブロックの外でボールを回させられている状況が続いた。ただ、F東京が72分に三田啓貴を下げ、アジア大会で活躍した中島翔哉をピッチに送ると、大宮も余裕の防戦とはいかなくなった。中島は右サイドで起点となり、「中のスペースを消されていたので、間を広げてワンツーやショートパスで崩す」(マッシモ フィッカデンティ監督)という意図を実行した。大宮の守備ラインは下げられ、横のスライドも遅れ始める。85分には中島のスルーパスに武藤嘉紀が抜け出すが、シュートはひっかけて左に外れた。後半だけでF東京は10本のシュートを放ったが、最後まで大宮のゴールネットを揺らすことができず、終了の笛を聞いた。

F東京にとっては悔しい敗戦だろう。どちらが強かったかといえば、文句なくF東京だった。ただ、カウンターを得点源とするチームだけに、相手が攻撃的に出てきてくれればハマるが、なまじ押し込んでしまえた分、「(相手に)引かれた中で崩せなかった」(三田啓貴)。中盤の3ボランチの持つボールを奪う力と、奪ってからの前への推進力は出色ではあるものの、そのプラス面より、ボールを効果的に動かして崩す力が不足しているマイナス面がより濃く出てしまった。残り6試合で3位との勝点差は8、4位との差は7と、来年のACL出場は厳しくなった。

大宮はこれでリーグ戦3連勝。渋谷監督就任以来、リーグ戦は5勝1敗で、順位も14位まで上昇した。16位の清水とは勝点3差で、得失点差も2点しかないためまだ一息つけるという状況でもないが、上位のチーム相手に1−0の勝ち方ができたことは実に大きい。簡単に失点しないことで、精神的に余裕を持ってゲームを進められている。相手にボールを握られていても、集中して粘り強く守り、最後は体を張って失点を許さず、少ないチャンスを得点に結びつける。クイックリスタートが明暗を分けたが、「私が常々言っている、『プレーを止めない』ということを、選手たちが一瞬のチャンスを逃さなかったことが得点に結び付いた」と、渋谷監督も胸を張る。確かに内容は強いチームのそれとは言えないが、今の大宮が上位チームに伍していくにはこの戦い方しかない。5月の勝利は運の占める割合が限りなく大きかったが、その5カ月後の勝利は、監督、スタッフ、選手一丸となった努力が引き寄せたものであり、残留争いを勝ち抜く大きな自信をもたらすだろう。

以上

2014.10.19 Reported by 芥川和久
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