「今日は我々の日ではなかった」。浦和のミハイロ ペトロヴィッチ監督は、今季最多タイの4失点を喫して負けた試合後に、率直な印象を口にした。
それでも、前半の45分を終えた時点では、ホームの仙台の日でも、アウェイの浦和の日でもあったと言えるだろう。立ち上がりから双方とも、相手の隙を素早く突こうとするために、鋭い出足を見せていた。仙台が最終ラインの背後のスペースを消すここ数試合の戦い方を継続し、ボールを奪えば梁勇基や野沢拓也のパスが浦和のスペースを突く。その一方で、浦和は興梠慎三のキープ力に李忠成の縦横無尽な動きを組み合わせ、そこに柏木陽介ら周囲のポジションの選手が代わる代わる加わって、仙台の守備網をこじ開けようとする。一進一退の攻防が続いていた。
スコア上でも前半は2-2と互角だった。仙台が19分にCKからウイルソンの技ありのゴールで先制し、22分に鎌田次郎のFKからの連係で野沢が仙台加入後初ゴールで突き放した。しかし浦和も今季に得意とするセットプレーから、30分に興梠慎三が得点。さらに37分に、森脇良太の後方からのフィードを、李が巧みにコースを代え、それを受けた興梠が見事なターンからゴール。セットプレーとコンビネーションで互いの守備組織を崩す工夫に見応えがあった前半45分だった。
しかし後半の45分になると、仙台の日になり、浦和の日ではなくなってしまった。仙台の浦和対策の効果が増し、逆に浦和が罠にはまり続ける流れに変わったのである。
仙台の渡邉晋監督は、浦和が人数をかけて攻撃してきた時を特にポイントとし、それを耐えどころであると同時に、反撃のチャンスととらえていた。守備に最も工夫をしなければいけない時であるとともに、浦和の守備組織が整わない隙ができるときである、というように。
守備では5人で横のラインを取るタイミングを調整し、攻撃では「相手のウイングバックの背後と、プルアウェイで相手の背中を取る」(渡邉監督)という二通りの狙いを仙台は持っていた。非公開練習が多かった仙台だが、公開されていた10日の練習はセットポジションから相手の裏を取る連係の練習を、サイドと中央の2パターンでおこなっていた。この二週間のうち浦和対策に当てたという後半の一週間では、さらに多くの策が講じられ、チームには浸透していたのだろう。
ハーフタイムには守備を中心に役割を整理し直したことで、仙台は前半に興梠の2点目を決められたような状況を、後半には作らせなかった。1トップ2シャドーの距離をずらす守備が、前半より徹底されていたのである。ペトロヴィッチ監督はリズムを代えるためにマルシオ リシャルデスや梅崎司を投入し、ボールを供給する後方のポジションの配置も代えたが、仙台はそれらの選手に対してもリズムを作らせなかった。
そしてこの流れのまま、後半45分間は仙台の側のみに2点が加えられた。61分、それまで浦和のパスの起点にプレッシャーをかけ続けていた赤嶺真吾が、この時はゴール近くでバックパスを受けようとしていた西川周作に迫り、強引にゴールに押しこんだ。そして90+1分には、前がかりになったうえに宇賀神友弥を81分の退場で欠いた浦和のスペースに、途中出場の村上和弘が走りこんで止めのゴールを決めた。
仙台は首位のチームを罠にはめて勝点3を獲得。今後の上昇に向けて大きな連勝を記録した。一方の浦和は首位堅持を目指す上で、手痛い敗戦となった。シビアな終盤戦で、順位通りに事が運ばないことは珍しくない。あらためて、それを感じさせられる試合だった。
以上
2014.10.19 Reported by 板垣晴朗