仙台が基本的に採用するフォーメーションは4-4-2。浦和は3-6-1。まずは図面のままにこれをぶつければ、至る所でミスマッチが起こる。互いに最終ラインの間に相手の最前線が食いこむかたちになるし、正面からぶつかるポジションは少ない。サイドでも中央でも数的同位が起こりにくい。
実際はこの競技は走らなければ勝負にならないから、この基本フォーメーションの並びのままで90分を終えることがない。そしてその走り方やボールの経由先でチームごとの個性ができて、システムというものが作られる。ただでさえミスマッチが起こりやすいフォーメーションの噛み合わせに、流動的なランニングが加われば、さらにあちこちでギャップが発生するだろうし、両チームはそれぞれボールを持ったときに、そのギャップを突くことで相手のゴールまでの道を作るだろう。
J1第28節・仙台vs浦和は、そんなギャップを突く工夫に見どころの多い一戦だ。
システムの完成度においては、浦和が有利だ。就任3年目で来季も指揮をとることとなったミハイロ ペトロヴィッチ監督のもとで、浦和は戦い方を熟成させてきた。第27節終了時点で首位にいるように、結果もついてきている。
仙台が浦和と前回に対戦したJ1第6節では、両者の大きな差が結果にそのまま反映された。特に猛威を振るったのが興梠慎三、李忠成、原口元気(現ヘルタ・ベルリン/ドイツ)で形成される浦和の1トップ2シャドーで、縦に出入りしたかと思えば、横のポジションとも効果的に入れ替わる。このユニットを中心とした攻撃に仙台は途中までは耐えていたが、40分に李のゴールを許してからはついていけず、守備ブロックに多くの凹凸を作ってしまった。そして後半に李の2点目を決められ、サイドの宇賀神友弥やボランチの鈴木啓太の攻め上がりからのミドルシュートによる追加点で、大差がついてしまったのだった。
それから約半年が経過。浦和は当時のメンバーからは原口が移籍したもののシステムの完成度は増し、最近はシャドーの一角に入る柏木陽介が創造性を発揮して好調だ。優勝のためには、継続性のもとで、敵地の一戦での勝点3獲得を目指すところだろう。
それに対してホームチームは、「前節の結果を過信せず、我慢する展開も覚悟のうえで準備を進めてきました。ただし、前節に得た自信を生かすことも忘れずに、浦和の隙を突きたい」という渡邉晋監督の指揮下で、浦和のシステムにギャップを作ることを目論んでいる。
「首位にいるチームにふさわしく、バランスの取れたチーム」(梁勇基)、「システムの完成度が高い」(赤嶺真吾)と、仙台の選手たちは浦和を警戒している。だが、「相手が攻めに出てかたちを崩したときにボールを取って、素早くスペースを突きたい」と赤嶺が展望するように、相手がポジションを替えて攻めるときを、カウンターで反撃するチャンスに変えたいところだ。
仙台は前々節・川崎F戦と前節・F東京戦で、ボランチがこぼれ球を拾ったところから攻撃をスタートさせ、多人数がイメージを共有して連動したかたちからゴールをもぎ取った。「ナベさん(渡邉監督)が就任してから効果的なしかけのパスを入れる連係を長いこと練習してきた成果が出てきたこともあるし、野沢(拓也)さんが加入してアイディアが増えたこともあります」と、鎌田次郎はこの攻撃の背景を説明するとともに「そのためにもまずはしっかり守って、ボールを奪ったら素早く攻撃に切り替える意識が共有されていることが必要です」と気を引き締めた。
守備から立て直した仙台は、まずその守備組織を浦和戦に向けて再整備し、自らに不要なギャップが生じることを防ぐ。そして攻撃に素早く切り替えたときに連動した攻撃をしかけるイメージを共有し、相手のギャップを突きたいところ。それにより、半年前の借りを返すつもりだ。
残留争いから抜け出したいホームの仙台と、首位を堅持したいアウェイの浦和。勝点3のためにぶつかる両者の熱い戦いにも、それを盛り上げる両チームサポーターの熱気にも、期待したい一戦だ。
以上
2014.10.17 Reported by 板垣晴朗