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【J2:第36節 札幌 vs 千葉】レポート:千葉が敵地で2得点快勝!札幌に数多くのシュートを放たれながらも、ほぼ危なげなく勝点3を獲得して5位に浮上。(14.10.12)

会場となった札幌厚別公園競技場は、普段から特有の強い風が吹く。「ここはいつも風が強いので」と千葉の山口智が口にしたように、その特徴はどのチームにも周知されていると言っていい。ただし、この日はいつもに増して強い風が吹いていた。メインスタンドから見て左から右へ。いつもは「弱風」や「中風」となる公式記録にも「強風」と記された。リスタートのためにボールを置いても転がるし、GKが蹴るゴールキックやロングフィードは風に大きく流される。そんなコンディションだった。

そしてその強風がプレーのみならず、試合の推移全体にも影響を与えることになる。
コイントスに勝った札幌は前半を風下でプレーすることを選択。これについてバルバリッチ監督は「GKと話しをして、どっちがいいかというところを決めたのですが、試合前に私が得た情報だと、そのまま風向きも強さも変わらないという情報だったので、しっかり前半をいい形で終えて、後半に勝負をかけるというところは私の中でありました」と説明。GK金山隼樹も「前半は我慢して後半に、という狙いで戦った」と振り返る。

ただし、「こっちはコイントスで勝ったら風上を取ろうと話していたので、ちょうど良かった」とは山口智。つまりは双方の思惑通りのエンド選びで試合が始まったということだ。

試合が始まってからも、言うまでもなく強風は影響した。前述のような場面ばかりでなく、ちょっとしたパスが流されてしまうことも。千葉は後方からパスをつないで組み立てるスタイルのチームだし、札幌もそうしたことができる選手が揃っているだけに、個人的にはテクニカルなゲーム展開に期待したが、そうはならなかった。ただし、そういう難しい条件下ながらも、互いに最終ラインを積極的に押し上げてコンパクトさを求めた部分は賞賛したいところだ。風上に立った側だけでなく、風下のほうもリスクを冒しながら高いライン設定をしていたのである。

あらためて試合の推移に目を向けると、前半は互いに攻めたり、中盤で潰し合ったりしながらも0−0のスコアのまま時計の針を進めていく。つまり、「後半に勝負をかける」(バルバリッチ監督)プランで挑んでいた札幌の狙い通りだったのである。しかし、43分。敵陣右サイド深くで得たFKを中村太亮が直接蹴り込んで千葉が先制点を奪ってしまう。「せっかく前半に風上を取ったのに、あのまま無得点で終わっていたら苦しくなっていたと思う。前半のうちに得点できて良かった」と山口智は安堵した。

そして苦しくなったのは札幌のほうである。前半は我慢しながら最低でも0−0で折り返す狙いだったのが、終了間際にまさかの失点。プランは崩れた。後半開始と同時に、負傷から4試合ぶりに復帰したエースの内村圭宏を投入して得点を奪いにいくことを強いられる。

ただし、である。もともと札幌は後半に勝負をかけるプランだったわけだから、ここから攻めに転じる部分については前半に失点していようといまいと同じこと。加えて千葉はリードしたからといって後方に引きこもるスタイルのチームではないため、スペースも与えてくれる。確かにゲームプランは崩れたかもしれないが、試合内容を踏まえると、そのことが絶対的に勝敗に結びついたとは言い切れない。千葉が無理をして前に出てくる必要のない状況にはなったものの、基本的には試合展開はノーマルなまま。となると、問われるのはそれぞれのチーム力。シンプルかつわかりやすい構図は保たれ、そして千葉がそこで上回った。

点を奪いにきた札幌に対しても千葉は自陣に引くことなく、前半同様に高いライン設定をしながらコンパクトに戦い、ボールこそある程度は持たせながらも、要所を押さえて決定機は与えない。そして67分に大岩一貴を右サイドバックの位置に投入すると、佐藤健太郎をアンカーに据える4−1−4−1に変更。システムのバランスを大きくは変えないなかで守備意識を若干高め、よりいっそう要所を引き締める。そうして時間を進めて札幌の焦りを誘うと、74分にはカウンターから森本貴幸が追加点をゲット。これで完全に勝負は決した。

「内容から見れば私達のほうが主導権を握っていた」と試合後のバルバリッチ監督。札幌の選手たちも総じて「失点シーン以外は悪くなかった」と話していた。確かにそれらは決して間違った表現ではないだろう。放ったシュートも相手の倍近く。

ただし一方で、千葉の選手は「ほぼノーミスでしのぐことができた。内容が良かったわけではないが、特に大きな問題もないゲーム」と山口智が言い、「いい時間帯に得点ができて、守備もしっかりしていた」と森本も口にする。札幌が悪くない内容で主導権を握っていたことは間違いないのだろうが、それが必ずしも千葉を追い込み、苦しめていたわけではなかったというのが実際のところだったのだろう。端的に言ってしまえば、札幌がホームで主導権を握って迫ったものの、特に問題なく千葉がいなしてしまったということか。

この試合にだけに関して言えば、特に前がかりになるわけでも、守備的になるわけでもなく、最後までコンパクトに好バランスを維持しながら千葉が危なげない戦い披露。得た決定機もしっかりとモノにし、敵地で力の差を見せつけた一戦だった。

以上

2014.10.12 Reported by 斉藤宏則
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