J2第36節、京都は西京極に熊本を迎え撃つ。今節含め残りは7試合。J1昇格プレーオフ昇格圏内の大分との勝点差は5。6位・大分、9位・京都との間には千葉、山形といる。「チャンスはまだある」と言いたいのではなく「とにかく勝て」である。
前節、京都は栃木に敗戦。指摘したい点は多々あるが、見るべき方向は「今節」である。先制点献上が課題に挙がるが、それも、「勝てばいい」という話。例え、前半に3失点しても、後半に4点取れば「何も問題はない」。開き直って「ウチは後半に強いですから」で良いのである。相手も必死になってプレーしている。勝ってもギリギリ、観る方もそれくらいの腹はくくっている(以前は、相手を圧倒したいと考えていたが……、今は「勝てばよい」しかない)。
対戦相手は熊本。前節、東京Vに0−1で敗戦。だが内容的には、東京Vがアディショナルタイムで決めたのを観ても、互角と判断してよい。後半に巻誠一郎を投入し、流れを引き寄せたが、今節もそれを生かしてくるか、など、見極めも必要な部分も見えてくる。
京都・川勝良一監督は「ファール数、タックル数のリーグ順位を観ても、相当激しくやってくる。球際では五分五分のボールでも粘る。でも、相手によってはつなぐところもあるし、攻守の切り替えもしっかりやってくる」と全体のイメージを明かした。「巻がいる時は、後ろ(2列目、3列目)が絡んでくる」と、巻のいる熊本の戦い方にも言及した。
この点はMF・田森大己も「前線に巻選手とか高い選手がいる。そこと、その周りを警戒しないと」と口にした。京都は出場停止からバヤリッツァと工藤浩平が戻ってくる。今節は改めての仕切り直しとなるだろう。
守備について、長くなるが書いておきたい。あくまで筆者の考えなので、「守備とはこうだ」ということではないが、守備の一つの考え方として記しておきたい。
まず、サッカーの守備のイメージを少し変化させてみたい。互いに、相手の砦を壊しにいくゲーム、と想像して頂きたい。京都の砦と相手の砦、京都の選手は相手の砦に爆弾を放って、それを壊す、というゲームにする(ちょっと危ない表現がありますが、あくまでゲームのイメージで捉えて下さい…)。相手も爆弾を放り投げて京都の砦を壊そうとする。そんなゲームのイメージを持った時、去年までの京都はどうやって自分たちの砦を守備していたかと言うと、爆弾を持ち込んでくる奴を、砦の前に来る前に、皆で捕まえてやろうとして守っていた。これが「ボールに行く」という考え方。でも、捕まえ切れずにあれよあれよと砦の前まで爆弾を運ばれたりすることもあったはず。
そこで、視点を変えてみる。「結局、砦の前で爆弾を放り投げられるのなら、砦の前で爆弾を放る奴を捕まえたり、邪魔したりすれば良いのでは?」。つまり、センターバックを動かさずにゴール前で相手の攻撃を撥ね返すということである。こうした、センターバックを動かさずに、ゴール前で跳ね返そうとする守備をするチームは、まず北九州、そして松本を思い出す。愛媛もそのタイプだ。
逆に、センターバックもボールを追いかけに平然と砦の前から飛び出すのは、昨年までの京都、そして福岡、今季前半の讃岐などがある。バイエルン・ミュンヘン(ドイツ)もこちらのグループになるだろうか。奪う力はあるが、一つかわされるとあれよあれよとボールを運ばれ、砦の前が薄い状態となる。
これは、プレスに行く守備は悪い、ということではなく、「サッカーをどう考えるか」の違いである。優劣の問題ではなく、「皆で考え方を理解していき、長所も短所も熟知し、皆で完成させていく」ことができるかどうか、の方が重要である。
そこで、今の京都の守備である。昨年までの守備の仕方が色濃く残っている。実は、バドゥ監督の時に、センターバックが動かない守備に切り替えようとしていた。第11節・讃岐戦から第13節・長崎戦まで3連勝を果たしたが、この時、横浜FC戦、長崎戦と無失点だった。しかし内容は、クロスを散々上げられて中でしぶとく跳ね返して、というものだった。この時、センターバックの酒井隆介とバヤリッツァは中央からほとんど動いていない。押し込まれたから動かなかったという見方もあるが、その前からセンターバックがサイドや前に飛びだしたりするという動きは少なかったはずだ。守備のシフトチェンジができそうだと思った。だが、次の水戸戦で、前線から奪いに行く守備を行い、センターバックも飛び出す様になると、飛び出したところが穴になって水戸攻撃陣に突かれた。
昨年までの京都は、センターバックの前に秋本倫孝(現・富山)がいて、ゴール前に戻りフォローをしていたので、彼がピンチを防いだシーンもあったはずだし、サイドバックが中に絞ることもしていた。「センターバックがボールに行って、砦の前が薄くなる」ことが無い様な仕掛けがあったのである。バドゥ監督時代は、ジャイロが動き回ってセンターバックが出なくても良い様に、彼がサイドにも飛び出しカバーしていた様に記憶している。
この辺りの守備の考え方は、戦術以前の「サッカーをどういうスポーツだと捉えるか」が問われている。フォーメーションで守備を考えると「4-4-2ではこういう守備、3バックはこうやって守る」ということに陥る様な気がするのだ。昨年までの京都は「やることは一緒。その中で4バックにも、3バックにも対応してプレーする」という方針だった。
今の京都の守備では駄目だ、ということではない。相手の攻撃は、最後は結局ゴール前に来るのである。そこで、誰が相手の攻撃を撥ね返すのか、そこを整理すれば、もっとクリアになるのではないか、ということである。
以上
2014.10.10 Reported by 武田賢宗