水戸は現在16位ながらも目標の「6位以内」とは勝点10差。終盤戦の追い上げのきっかけとなる勝点3を掴みたかった。さらに今節は「20周年記念試合」と銘打たれた特別なゲームだっただけに勝利が求められた。一方、札幌にとっても重要な一戦だった。5位岡山、2位松本を立て続けに撃破し、6位との勝点差を3に縮めただけに、今節はアウェイといえども勝利してJ1昇格プレーオフ圏内に入ろうという強い意気込みでアウェイに乗り込んできた。序盤から両チームのこの一戦にかける熱い思いが激しくぶつかり合った。
ともにシステムが3−4−3のミラーゲーム。全体をコンパクトにして、激しくプレスをかけ合う展開が切り拡げられた。中盤でボールを持つ余裕を与えられないため、ロングボールが多くなり、肉弾戦の様相を呈した。
水戸は鈴木隆行が、札幌は都倉賢が前線で体を張って起点となろうとするものの、互いの3バックが強さを発揮し、ロングボールを跳ね返す。特に札幌のパウロンの強さは圧巻だった。桁外れのパワーを生かしてボールを奪取し、攻撃につなげた。パウロンの活躍もあり、序盤からやや札幌が攻勢で試合を進めることとなったものの、水戸も隙を作らずに両チームとも決定打を出せないまま前半を終えた。
後半も「一進一退の展開」(柱谷哲二監督)が続いた中、流れが変わったのは71分。それまで圧倒的な存在感を示していたパウロンが負傷交代。すると、途中出場の三島康平が前線で起点となり、攻撃に厚みが生まれるようになった。76分、左から中央に切り込んだ山村佑樹がドライブシュートを放つものの、ゴールわずか上。85分、ペナルティエリア前左で得たFK、小澤司が直接狙ったシュートはGK金山隼樹が片手ではじき出されてしまう。90分には電光石火のカウンターから船谷圭祐のアーリークロスに小澤が飛び込んだが、わずかに届かず。終了間際には左サイドの田中雄大のクロスを鈴木雄斗がヘディング。しかし、ゴール上に外れてしまい、直後に試合終了の笛が鳴り響いた。パウロン交代後、水戸が怒涛の攻撃を見せながらもゴールを奪いきれずにスコアレスドローに終わった。
「勝点1を取れたことをポジティブにとらえている」と語ったのは札幌のバルバリッチ監督。勝点3を獲得するに越したことはなかったが、15分に上原慎也が、71分にパウロンが負傷交代、さらに試合前には前田俊介、河合竜二、イ・ホスンが負傷して欠場を余儀なくされた中で負けなかったことはチームにとっての収穫と言えるだろう。悪い流れの試合で負けないことは上位に行くために必要なこと。今節積み上げた勝点1が終盤に必ず生きることだろう。
猛攻実らず、勝点1にとどまった水戸。終盤は運動量で圧倒し、「チャンスの数はウチの方が多かった」(田中雄大)だけに悔やまれる結果である。6位大分が勝利したため、勝点差は12に広がり、残り7試合であることを考えると、かなり厳しい状況になったと言わざるを得ない。ただ、ある意味、今季を象徴している試合でもあった。スコアレスドローは今季6度目。「どっちに転ぶか分からないゲームを勝ちきれないのが今の力」と石神幸征が口にしたように、勝負強さの欠如が上位に浮上できない原因であることをあらためて痛感させられた。シーズンも残りわずか。あと一歩のところまで来ながら、このまま壁を破れずに終わってしまっていいのか。いいわけないだろう。次節富山戦、意地を見せてもらいたい。
以上
2014.10.05 Reported by 佐藤拓也