●曹貴裁監督(湘南):
「お疲れ様でした。2試合前の前々節に昇格を決めて、前節ホームでちょっと最後のところのクオリティとか、最後のところで破っていくところが少し足りなくて、今週ずっと練習してきたが、立ち上がりタケ(武富)が本当に素晴らしいシュートを決めてくれて、あそこから2点3点と結果的に取れたのは、非常にいい終わり方ができたかなと思います。今日、あらためて選手たちに言ったのは、昇格が決まる決まらないとか、優勝するとかしないとかではなく、ここに集まってくれるお客さんは、普段の生活、お仕事されている人、勉強している人など含めて、ここに来て何かエネルギーをもらいたいとか、何か感動をしたいとか、そういうことを前提にお金を払ってもらえていると。そういった現状、我々はプロなので、たまたまチームスポーツをやっていますが、一人でコンサートをやられているオペラの歌手の人は、どんなことがあっても多分しっかり歌うと思うし、演奏の人はどんなことがあってもしっかり弾くと思う。その意味で、プロとして、昇格とか優勝とか、去年も残留できず最後2、3試合やりましたけど、その試合を無駄にしてはいけないと。もう一度プロフェッショナルだという意識をしっかり持って、今日の試合をしっかり戦おうという話をしました。その意味では、今の自分たちの立ち位置に満足することなく、足を止めないで攻守に相手より走ることだったりとか、縦にボールを入れ続けて、最後相手の足を止めてとどめを刺すところだったりとか、とどめは刺せなかったような場面は何回もありましたが、今日は見ているお客さんがそういう意味で、少しはエネルギーになった試合ができたかなという感じを、手前味噌ですけど自分の中では感じています。パーフェクトな試合というのは、ほぼどのチームもどの国もないと思うし、そんな試合は存在しないと思うが、限りなくそれに近いような試合を今日はしてもらいたいと。それはこういう状況だからというのもひとつだし、自分たちが次に向かって成長するためには、攻守に隙のない完璧なチームを目指す、それをやろうとするなかで課題が出るのと、パーフェクトは無理でしょうと思いながら、課題が出るのとでは全然違うと思うのでその話はしました。頭文字をとって色んな話をした。長くなるので割愛しますが、一番大事なのはパーフェクトの「P」の「パーソナリティ」だと思っている。戦術があって、それを遂行するのはサッカー選手としてやらなければいけないことなんですけど、例えばその選手が楽しそうじゃなかったりとか、逆にその選手がこういう特徴があるのに特徴を出せなかったりとか、そういったパーソナリティの無いような試合にはしないでくれと。パーソナリティを感じられるようなゲームにしてもらいたいという話をした。例えば(大竹)洋平が左利きなのは誰もが知ってるし、ウェリントンが競り合いが強いのも誰もが知ってる。(永木)亮太がボールを奪うのが得意なのも分かる。後ろの3人がビルドアップが出来るということは彼らの特徴ですし、そういうのを一人ひとりが感じながら、初めて先発で出たアンドリュー(熊谷)も含めてですけど、11人と交代で出た3人も含めて、それぞれの特徴、パーソナリティが出た試合になったかなと思います。悪いところはもちろんあるが、そういうふうにいま思えるのは監督としてはすごく嬉しいし、やはり選手は人間なので活き活きプレーしてもらうということで、それが勝ちに繋がる瞬間は何物にも代えがたい喜びであることは間違いないです」
Q:熊谷(アンドリュー)選手をフル出場させた狙いは?
「試合と練習のパフォーマンスを見て先発を選ぶという話をしているので、彼はこういう勝負のかかった試合を今年初めて経験しましたが、何も彼のことを知らないで今日の試合を見るとよくやったかなというコメントはできると思うが、僕のなかでは彼の今日のプレーは普通。あれぐらいできて当たり前と思ってもらいたいし、もっともっとということを今日をきっかけに―アイツもそう思ってると思うが―なってもらいたい。ポテンシャル、可能性を自分自身で消してしまうのが選手としていちばん不幸なので、可能性をみんな持ってサッカー選手になるわけだから、もっともっと質を上げる、運動量を上げる、精度を上げるということに彼がのめり込んでくれれば今日の試合はひとついいきっかけになると思うので、その意味では彼の将来に繋がる大事な一戦にしてもらいたいなと思います」
Q:今年唯一負けている愛媛にこういう勝ち方ができたということについては?
「愛媛さんもアウェイでやったときは戦い方が少し違っていた感じもあったので一概には言えないが、あの負けで自分たちが進むべき方向が逆にハッキリした部分があった。点を取れないからボンボン放りこんでこぼれ球を拾ってミドルシュートを打つばかりでなく、やはり動きのなかで―今日も何回かあったが―クロスやワンツーで崩していくのを徹底して貫くことが勝つために大事だという話もあのときした。それを選手自身が表現したいと思ってやってくれていたと思う。とくに負けた相手だったので、そういう気持ちは強かったんじゃないでしょうか」
Q:前半すごくいいリズムで、とくにバイタルのところがスムーズだったが、昇格を決めたことで選手がいろんなものから気持ちを解放されて気持ちよくプレーしているところはありますか?
「それはたぶんまったくないと思います(笑)。逆に僕はそういう雰囲気を出す、そういう発言や行動に、極端に目を光らせてるという言い方はおかしいが、そういうの嫌いなので。でも逆に言ったら、こういう状況のなかで自分を律して成長しなければいけないという気持ちがシンプルに出たのと、戦術的に、(大竹)洋平があそこでフリーマンっぽく動くことによってパスコースがたくさんできるというひとつ我々のチームのストロングの狙いがあったことで、ウェリントンもタケ(武富)も活かされる。三角形の作り方を微妙に変えて行くことで相手に臨んだが、そこはある程度うまくいったかなと思います」
Q:後半は完全にウェリントンがトップで2シャドーにしたように見えましたが?
「特にその指示はしなかったんですけど、ウェリントンが真ん中にいる、大竹が右側にいるとか相手にとっても抑えやすいシチュエーションも何度か出てきているので、ポジションチェンジを頻繁にすることによって、まぁ今年ずっと言ってるんですけど、誰がどこに入るか分からないというか、クロスに合わせているのは3バックの三竿(雄斗)や航(遠藤)だったりとか、最後ボランチの航が入れ替わってシュートを打ちましたけど、そのポジションに決まった選手がいなきゃいけないということじゃなくて、誰でもいいからそこにいて、誰でもいいから後ろをケアする、ということは彼らにずっと言ってきたことです。そういう意味では、僕が指示したわけじゃないですけど、その状況でウェリントンが真ん中に入って、相手を押し込んで、2点リードしていたので、洋平(大竹)を慣れたポジションでプレーする、ということは選手自身が判断してやっていたと思います。特に僕がそうしろと言ったわけではないです」
Q:終盤に石川(俊輝)選手を投入したタイミングで遠藤選手をボランチに上げたが、その意図は?
「航は代表でもずっとアンカーボランチをやっていて、その中で自分がボールをもらって当てて、ペナルティエリアに入っていくという動きの手応えを感じていたのは分かっていたので、チームのオプションを増やすという意味でもそうだし、アイツ自身がそこで入れ替わって得点をもう1点取りたいなということがあった。俊輝(石川)はあそこのポジションを途中からでもずっとやっていて安定してやってくれていたので、新たな我々の力を出すパターンとして試したんですけど」
Q:いよいよ次節にも優勝という感じですが?
「そんなに甘くはないと思います。僕自身もひとつのリーグで優勝って経験したことはないし、うちの選手もほとんど優勝を経験したことはないと思います。皆さんに期待してもらえるのはありがたいし、そういうふうに持って行けるように努力をするだけですが。ただ、ヴェルディさんとは、アウェイの試合ですし、監督も代わられて勢いに乗っているところなので、簡単な試合には当然ならない。この1週間の準備が全てだと思っています。たくさんのサポーターが来てくれるという雰囲気も、今日の試合後にあったので、そこでなんとか普段通りのサッカーに肉付けをしながら平常心で戦いたい。その上で、そういう瞬間があれば、その瞬間をみんなで楽しみたいと思います。まだやることはたくさんあるので、一生懸命頑張ります」
以上