岐阜の2本に対し、14本のシュート数を記録したように、湘南はゲームを通して主導権を握り、ゴールにも迫った。だが幾度か訪れたチャンスを決め切れず、一戦はスコアレスドローで決着した。
ボール奪取から素早く転じ、フィニッシュまでやり切ることで湘南のリズムは加速した。試合開始早々には永木亮太が奪ったところから組み立て、菊池大介のクロスに岡田翔平とウェリントンが際どく走り込んだ。大竹洋平が右サイドで仕掛け、逆サイドの三竿雄斗に展開してシュートまで至った場面では、幅を使ったなかで湧き上がるように前進し、4人ないし5人がペナルティエリアに攻め入った。
「相手を揺さぶったり、裏を取ったり、バイタルエリアを使ったりという多彩な攻撃を前半から仕掛け、全員がゴールに向かうプレーを選択した。自分たちのスタイルで今日勝ちに行くということは、前の33試合と同じか、もしくはそれ以上に意識してやってくれた」曹貴裁監督は振り返る。パワフルな推進力に意欲が満ちていた。
他方、3−4−1−2のフォーメーションで臨んだ岐阜は、右ワイドの益山司やトップ下の清本拓己らが係わりながら相手の攻撃の間隙を狙う。だが、「前半の最初のほうはカウンターでこっちもいい形はできていたが、後半は相手のペースでやっていた。押し込んでもフィニッシュまで持って行けなかった」と高地系治が振り返ったように、湘南のタイトな対応もあって前で起点がつくれず、なかなかシュートまで至らない。
対して湘南は、前半の終わりにもセットプレーから決定機をつくり、後半に入ってからもスピーディーな攻撃を仕掛けた。後半途中3バックの右に入った石川俊輝が持ち出し、あるいは鋭いクロスで組み立てを活性化し、トップに入った中村祐也は相手のブロックに侵入して好機を演出した。最後に投入されたJ初出場の白井康介も限られた時間のなかで攻勢を加速させた。反面、枠を捉えきれなかったり、シュートを打ち切れなかったりと、攻勢をゴールに結ぶことはできなかった。
「自分たちのサッカーをもう少し出したかった。ただ、この強い湘南を0で抑えたことは大きい。これを自信にして来週爆発してほしい」岐阜のラモス瑠偉監督は選手たちを称えつつ次節山形戦の奮起を促した。
一方、湘南にとっては、ひとつ決まっていれば、という展開だった。「俗に言う決定力不足とか、ストライカーがいないとかそういう話ではない。積極的にやってもらいたいが、そういったプレーがまだ足りなかったと思う」曹監督は語り、さらに続けた。「ホームで今年初めて1点も取れなかった。勉強し、積み上げて、積極的にやりなさいとサッカーの神様に言われているということ。いいところは残して次に進まなければいけない」。
「こういう難しい試合ではセットプレーが重要になってくる。1本入ればもう少し楽に進められたと思うので、もっとキッカーとして精度を上げていかなければいけない」たとえば大竹が自身に矢印を向けたように、試合で出た課題をつねに糧にしてきた彼らである。次節もホームで迎えられること、そして今季ここまで唯一の黒星を喫した愛媛が相手であることは、あらためて襟を正す好機となるに違いない。
以上
2014.09.29 Reported by 隈元大吾