「でも運命ですね。苦しい時の水戸戦」。こう話すのは千明聖典だ。振り返れば半年前。開幕戦を引き分け、続く2試合を落とした岡山は第4節、アウェイで水戸と戦った。引いて守ることを選んだこのゲームを、GK中林洋次はこう振り返る。「ボールを持たれてピリピリしながら、相手に合わせて走り、僕も緊迫した状態で常に構えていた苦しいゲームだった。でも『ひとつ勝つことから変わる』と、みんなで信じてやった」。そして55分の久保裕一のゴールで今季初勝利を掴んだ。
岡山は前節・札幌戦に1−3で敗れ、その前の試合では、愛媛に後半アディショナルタイムに追いつかれ、引き分けている。3月に水戸と対戦した時のチーム状態と似ているのは、自信を失いかけているところだ。みんなが葛藤している。田所諒は、「無理に打ち消そうとしても余計、考えちゃうんで。上にいるからこそ味わえること」と。押谷祐樹は、「ずるずる行くか、ここで踏ん張ってもう一度みんなで勝ち続けて行くか」と言う。出場機会から離れている選手の言葉も強い。鎌田翔雅は、「今日の練習もちょっと静かだった。でもここで消極的になったら沈んでいくだけ。今は、長所でどれだけ勝負できるか。1人ひとりが良さを出せば、補えることは大きくなる」。鎌田は湘南で昇格前の苦しい時期を経験している。大事な時に3連敗した時は、ほかのチームの勝敗を気にしすぎて自分たちを見失っていた時だったと話す。だから復帰3週間目の鎌田は、練習で積極的に前に駆け上がって行く。竹田忠嗣も、「(ミスは)いじって、切り替えて行くしかない」と話す。岡山にとって今節の戦いは、全員で失いかけていた自信と強気を取り戻すことだ。
迎える水戸は前節、磐田と対戦し、4−1の大量得点で勝利した。田中雄大、吉田眞紀人、山村佑樹による4つのゴール(吉田は2得点)は、堅守を謳われる水戸の本来の攻撃力を見せつけるものだった。その前の湘南戦に水戸は4−2で敗れたが、この試合で三島康平をトップにした山村、吉田の3トップと、田中、広瀬陸斗の両WBのサイドアタックが連動し始め、前節は7試合ぶりに出場したボランチの石神幸征が中盤を引き締めた。岡山が9月に対戦したチームはすべて【3−4−3】のフォーメーションだったが、今回の水戸も【3−4−3】。ボールを繋いで攻撃を組み立てる水戸とのゲームのポイントは、岡山のワイドがいかに高い位置を取って攻撃に絡んで行けるかというサイドの攻防と、身長183cmでヘディングと身体の強さを誇る三島に対して、ラインを下げずにいられるか。
過去5戦、失点の続いた岡山の選手は、このゲームに臨むにあたって、ポジションに関わらず「無失点」という言葉を口にした。岡山・影山雅永監督は札幌戦の後、「自分たちが今まで出来ていたことが出せなくなっただけ。余計なものを足したり引いたりするんじゃなく、出来ていたことを元に戻そうよ。そこが俺たちの強みなんだから」と伝えた。今週の練習にはハムストリングを傷めていた上田康太も戻り、「切り替えるためにも大事な試合。水戸の船谷選手は一緒にやっていたし、同じ左利きなので絶対に負けたくない」と話す。岡山にとって正念場のゲーム。水戸にとっては快い勢いをさらに加速させたいゲーム。J2シーズン終盤をさらに面白くする戦いのスタートだ。
以上
2014.09.27 Reported by 尾原千明