前節、湘南の2位以内が確定したことで、残る自動昇格枠は一つとなった。その一つを巡って争う“椅子取りゲーム”は、まだまだ中位のチームにも可能性の芽が残されている。残り9試合、どんな結末が待っているか想像のつかないサバイバルを勝ち抜くのは、どこのチームとなるか。
現在、3位磐田に勝点差8をつけて2位につける松本は、その生き残り競争に最も優位な立場にいることは間違いない。ただ、上位争いの直接のライバルとの対戦が続く9月はやや足踏み。第30節・湘南戦から前節・北九州戦まで、4試合勝利から遠ざかっている。ただ、ここ3試合は全てシュート数で上回っていることから、主導権そのものは掴んでいる。やはり課題となるのはフィニッシュの精度だが、これは一朝一夕に改善されるものではない。得点への意識向上やリトリートする相手を崩すためのアイディアを増やすためのトレーニングを積むことはもちろんだが、結果が出ないからといって全てを否定する必要はない。その点は監督・選手も理解しており、「この段階でブレてはいけない」と口を揃える。これまで取り組んできたサッカーの方向性が誤っているわけではないのだから。今は正念場だが、迷うことなく突き進みたい。
対する札幌は、松本とは対照的に現在転換期にある。今季は開幕前から飛躍が期待されていながら、やや煮え切らない状況。先月28日、ついにクラブは財前恵一監督を解任し、3年半に渡り愛媛で指揮をとってきたイヴィッツァ・バルバリッチを新監督に招聘した。舵取りをする指揮官が変われば、チームの目指す方向も変化するのは必然の理。「前体制とスタイルは全く異なる」とは反町監督の評で、事実前節・岡山戦ではそれまでの4バックから3−4−2−1へのフォーメーション変更に着手。これが見事に奏功し、岡山を3−1で破ってニュースタイルの片鱗を見せた。またバルバリッチ監督は、選手に対して厳しさを打ち出す指導者。その点は才能ある若手の数多い札幌には有利に働くことだろう。
過去2試合は守備意識の強いチームの堅牢な壁をこじ開けられなかった松本だが、今節はその2戦とはまた違った展開になろう。反町監督は「札幌には、天才と呼ばれる選手が二人いる」と言う。まず一人目は言わずもがなの小野伸二。そしてもう一人は「ボールを持たせれば間違いなく天才」と断言する前田俊介だ。この二人が今節に出場するかしないかは、まだ分からない。ただ、他にも個人能力の高い選手が揃っており、ボールポゼッションという部分では後手に回るはずだ。では、どこで差を出すか。反町監督の先の言葉には二つの意味があると解釈できる。つまり、松本は『ボールを持っていない時間』でどれだけ相手を凌駕するか、だ。札幌よりも多く走り、チャンスを作る。ゴールを決めるまで、その繰り返しだ。迷わず、ブレずに貫き通すこと――。その姿勢が求められる一戦となる。
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2014.09.27 Reported by 多岐太宿