思い返せば、最初のつまずきは第4節・甲府戦だった。
リーグ戦3連勝とスタートダッシュに成功した横浜FMは意気揚々と山梨中銀スタジアムに乗り込んだが、結果は0−1。ACLを挟んだ連戦だったとはいえ、内容的にも見どころ少なく、「情けない。こんな試合をやっていたらダメ。久々に自分にも味方にも腹が立った。それを見に来てくれたサポーターには本当に申し訳ない」と栗原勇蔵が猛省した。それからチームは勝利から遠ざかり、10節の浦和戦までリーグ戦2分5敗と絶不調に陥り、ズルズル順位を下げた。だから、そのきっかけとなった、あの甲府戦は「悪い記憶」として頭の中にべったりこびり付いている。
そもそも城福浩監督体制下でJ1に昇格した甲府には、リーグ戦でまだ1度も勝てていない。昨年は2分け。直近3戦のスコアを見ると、1−1、0−0、0−1といずれもロースコア。要は、どの試合も甲府の堅い守りを崩せていないのだ。徹底した守備包囲網を張る甲府ゴールを破るのは、今回も非常に難儀な作業になりそう。前節、甲府と対戦したペドロ ジュニオール&マルキーニョスのコンビを擁する神戸でさえ、その網に絡まったまま抜け出せず、0−2で屈したのだから。
ゴールを破るキーワードは、兵藤慎剛ら何人かの主力が口にした「焦れないこと」。たとえ、なかなかゴールを奪えなくても、焦らずに突破口探しのチャレンジを続けたい。均整がとれた甲府の守備を破るには、動き回って相手DFをできるだけ動かし、ギャップをつくる作業が必要になるだろう。そこはトップを張る伊藤翔は当然、兵藤、齋藤学らのアタッカー陣がひたすら全方向に動き、パスを呼び込むしかない。また、前節の広島戦で途中出場し、活躍した佐藤優平にも注目。無尽蔵のスタミナを誇るだけに、得点に直結する動き出しが期待される。
逆に甲府は、相手を焦らせることができたら、勝機が見えてくる。前回対戦の際も横浜FMがしびれを切らせ、一瞬生まれた隙を突き、仕留めた。68分のこと、横浜FMディフェンスの不用意なパスをマルキーニョス パラナがカットし、そこからカウンター。クリスティアーノ、阿部翔平と繋ぎ、最後は石原克哉がゴール前で2度シュートを打ち、GK、ポストに跳ねされるのも、3度目のプッシュでゴール。気持ちで押し込んだ得点とは、まさにこのことだ。
昨年のアウェイ横浜FM戦の後半アデショナルタイムに奪った同点弾も、形こそ違うが“気持ちで押し込む系”だった。水野晃樹のロングスローを発端にゴール前の混戦の中、土屋征夫のシュートがバーを叩き、栗原の目の前で、青山直晃が懸命に頭を突き出し、フィニッシュ。しかも青山は風邪をひき、37.4度の熱が出ていたにも関わらず、闘い抜いたのだ。
甲府は現在13位、残留争いでは頭1つリードしたように見えるが、まだまだ予断を許さいない状況であることに変わりない。よって、10位の横浜FMに比べて危機感は大きい。城福監督の激しいガッツポーズにも象徴される“気持ち”で、今回も横浜FMを上回れば、貴重な連勝の可能性も膨らむ。
以上
2014.09.26 Reported by 小林智明(インサイド)