愛媛は前回のホームで山形に快勝。河原和寿のゴールを皮切りに、4−0で7試合ぶりの勝利をつかんだ。そして、前節のアウェイ岡山戦にもその勢いを持ち込み、多くの時間帯で試合の主導権を握った。ただ、林堂眞が「失点は(キム)ミンジェのところからだったけど、全体が一瞬止まってしまった。ポジショニングだったり、中のマークだったり、あるいはボールホルダーへの対応だったり、誰かが抜かれても全員でカバーできなければ」と悔やんだように、ワンチャンスで先制点を与えてしまった。それでも「得点できそうな雰囲気があった」と林堂が続けた試合終了間際、愛媛はコーナーキックから表原玄太のシュートを林堂が押しこみ同点に。アウェイで最低限の勝点1を手にし、17位に踏みとどまった。
結果的にはドローに終わり、順位をあげられなかったことで当然悔しさは残る。それでもJ1昇格プレーオフ圏内で奮闘している岡山を相手に、内容では互角以上の戦いができたことで選手たちにはポジティブな気持ちをもたらしている。西田剛は「やりたい形は出せているし、あとはゴールを決めるだけ。この気持だったり、メンタルで戦えば勝てるチャンスはある」と前を向くが、チーム全体として今は戦う姿勢をプレーに表すことができている。その中でも、いい流れを生み出しているのが前線からの守備だ。最終ラインの林堂が「僕らがラインを上げれば前が奪いに行ってくれるし、前からプレスをかければ僕らもついていくことができている」と語れば、ボランチの江口直生も「高い位置からプレスをかけたときにいい距離感で、それを攻撃にもつなげられている。やってきたことを崩さず、続けたい」と愛媛の選手たちは今の戦い方に手応えもつかんでいる。
その点は、前回アウェイで千葉に敗れた時と大きく違っている点だ。「守備がかなり消極的だった」とその千葉戦後に石丸清隆監督は指摘をしたが、あの時は全てが後手に回り一方的に攻め立てられた。直前に湘南を破った形も1−0で守り抜いたものだっただけに、選手たちには安全にプレーする意識が働き過ぎたのかもしれない。そこまで3連勝という結果が出ていたことも、守りに入る意識を強めてしまった印象だ。ただ、今季の愛媛はその試合の後も、先制して守りに入り何度も痛い目を見てきた。その代償はあまりにも高い授業料になってしまったが、多くの勝点を失うことで今の形を築き上げてきたともいえる。今回はそのサッカーで、愛媛がJ加盟後に一度も勝っていない(1分8敗)千葉に挑む。
しかし、もちろん千葉もプレーオフ圏内に手がとどく所まで来ている以上、負けられない。6位の大分とは勝点2差、そして4位岡山、5位北九州との差もわずかに5という接戦だ。ここにきて山口智やケンペスといったキーマンを欠くこともあって一進一退の状況が続いているが、前節はホームで岐阜を退け順位を上げた。その前節、決勝点を決めた谷澤達也をはじめ、佐藤勇人ら経験値の高い選手がいるのも千葉の強みで、そのあたりは今回の中2日という連戦でも、誰が出ても大きくチーム力が落ちることはない。シンプルにゴールに向かい、高い決定力で試合を決めることができるチームだけに、愛媛は前節のような失敗を犯してはならない。
また、今節の愛媛にとって最大の焦点は河原不在をどう乗り切るかだ。河原はチーム最多の10得点をマークしていることもさることながら、献身的な守備で相手の攻撃を断ってきた。今の愛媛のサッカーで欠かせない存在であることは間違いないが、河原と同じプレーは誰にもできない以上、チーム全体で彼の不在を補うしかない。ただ、それができて結果が得られれば、愛媛は一回り大きくなれる。残り10試合となったリーグ戦も、チーム一丸となることで今の勢いをさらに大きくして最後まで戦い抜くことができるはずだ。
以上
2014.09.22 Reported by 近藤義博