●トニーニョセレーゾ監督(鹿島):
Q:序盤はすごく攻め合ったと思いますが、最初に失点したあとになかなかチャンスがつくれませんでした。特に大迫、ダヴィのプレーについてお願いします。また、今日は久々に3万人を超える観衆が集まりましたが負けてしまいました。そのことについてもコメントをお願いします。
「率直に言えば、がっかりはしていますけど、チームとしてやるべきことは機能的なところでも良かったと思います。まず、相手のメリットを讃えた上で、非常にすばらしいチームで、すばらしい指導者がいて、戦術的な部分はサッカーをやる上でのクオリティ、個の能力も非常に高いものを持っている相手に対して、我々がやろうとしていたことはできた。特に、ひとり少なくなったところで、僕は小笠原選手、ディフェンスラインに関しては、目を奪われるものがありました。特に小笠原選手、中田選手が見せたサッカーの無料レッスンは、皆さんも上から見ていて感じたと思いますが、10人になっているにも関わらず一人でプレスをかけられるあのポジショニングややり方に関しては、僕もボランチ出身ですので、僕はまたサッカーを学ばさせてもらったと思いますし、すばらしかったと思います。当然ながら、チームはディフェンスラインを含めて、伊東選手も良かったと思いますし、遠藤選手も、ジュニーニョ選手も良かったと思います。ジュニーニョ選手は後半にちょっとパワーダウンしましたけれど、大迫選手も非常に良かったと思います。ただ、小笠原選手ひとりであそこを、一人少ない状況で相手にあれだけやっていたことはすばらしいと思います。
究極の選択を出されて、その選択が失点するのと、退場するのとどっちを選びますかと言われたら、僕は失点をすることを選びます。現代サッカーでは一人少なくなると非常に苦しい状況になることは、誰が見ても、どこの国のサッカーでも、一人少なくなれば大きな負担をチームメイト全員にかけてしまいます。その分、走る量も増やさないといけませんし、ビハインドであればもっとその運動量をシフトアップしないといけない。前半で、戦うというところも選手達に求めているんですけど、戦うなかではサッカーをすることが基本ベースにあります。ダヴィとも何度か話をしていますし、ハーフタイムにも話をして、前半だけで終わりにしてくれ、後半はサッカーに集中してやろう、ということをやったんですけど、なかなか試合で熱くなって自制心を失ってしまうということもあります。ただそれは、彼を含め、我々スタッフ選手も含め、また一つの教訓を得られたと思っているし、彼も退場になったことで自分がどれくらいのことをしてしまったのかということを、僕が言わなくても本人がいちばんわかっていると思います。悲観的になる、ということが負けたときに思われますが、僕は確かに先週末には天皇杯のときにはチームが良くなかったと指摘しました。それは事実だったし、選手達がいちばんわかっていたはずです。今日は、負けたのですが、確かに負けた悔しさ、悲しさはあります。ただ、そのなかで、先ほどから言っているとおり、小笠原選手が見せた、“サッカーはこうするんだ”というもの。それは技術でも、体力的な部分でも、戦術的な部分でも、サッカーを深く理解している者であれば、すばらしい高レベルな無料レッスンを受けることができたと思います。ぜひともサッカー関係者であれば見て欲しい試合であるし、以前にも彼にいろんなことを学ばさせてもらいましたが、僕は彼に今回もまた、新たなボランチ像というか、選手としての能力の高さを見受けることができた。
サッカーというのは勝ったり負けたり、引き分けたり、がつきものです。どの試合も勝つことを目指しているわけであって、負ければ悔しさや悲しさが残ります。それは皆さんからしてみれば、3位と4位の対戦ということで注目する部分はあったと思いますけど、鹿島対浦和の試合は、サッカーが好きな人であれば、見る価値のある試合だったのではないかと思います。今回だけでなく、過去にしても未来にしても、見続けるべき試合になるよう、両クラブが追求し続けなければならないと思います。まだ、シーズンが終わったわけではないので、この敗戦だけでドタバタする必要はまったくないと思います。選手の努力と献身、犠牲心でいまの順位にいるわけです。残り5試合で、ここまでやっとたどり着いたのに、一つの敗戦でいまの順位を手放す必要性はないと思います。みんなで、選手達も信じ続けて、残りのシーズンをしっかり戦いたいと思います」
Q:ここ2シーズン、浦和に対して分が悪いと思いますが、試合前、守備の面で選手達にどういう注意を促したのでしょうか?
「非常におもしろい戦法というか選手の配置をしてくる。特にウイングバックの位置をものすごく高い位置に持っていくので、3トップと両ウイングバックということを考えると、前に5枚並びながら、そこからのポジションチェンジがあって、なおかつそのウイングバックは前のトップ下やFWのサポートもありながら、後ろからセンターバックの攻撃参加もあるという状況です。どうしてもサイドで数的有利な状況をつくられてしまいますし、サイドチェンジを多用する狙いがあるので、サイドの方で人数をかけて相手を食い付かせてサイドチェンジする。それでウイングバックなりセンターバックなりが、フリーをボールを運んで、特にウイングバックがうちのチームのサイドバックに対して1対1で対峙する場面をつくりだす。それも、スペースがあるなかでスピードにのりながらやっていく、というのが狙いとしてあります。そうすると両サイドハーフ、うちの場合は4−4−2でやっていますので、両サイドハーフの上下動、運動量にプラスしてクレバーさ、どこで間を取るのかとかサイドチェンジの牽制の仕方とか経験値というものも必要になってくるし、状況を見ての判断でウイングバックへのサイドチェンジを阻止するのか、それともサイドバックがサイドチェンジをインターセプトするのかという、二つの選択肢が出てきますので、そういったポジションの配置が重要になります。彼らは前の方にもスピーディな選手がいるので、攻守の切り替えのところで気をつけなければいけません。もししっかりブロックをつくってボールを奪うことができれば、相手は大半後ろの方に3枚が残っています。彼らは自分たちのおかしているリスクはわかっているので、楔のボールもしくはカウンターを引っ張ろうとするタイミングで、徹底的にプレーを切ることをやっています。それは一つのルールの使い方ですし、そこで僕が言ったのは、サポートを早くする、あるいは球離れを早くする。それは場面によっては2トップだったら、2トップの関係だけでダイレクトプレーや2タッチですばやくパス交換することによって、相手がファウルして止めようとする状況をくぐり抜けることができるし、くぐり抜ければ、サイドの横幅70メートルを3枚の選手でカバーしなければならないので、こちらにアドバンテージもあるし、ボランチの1枚しか守備の3枚のスペースに残らないので、そうすると両サイドがガラ空きになる。守から攻への切り替えを早くすれば、楔を落としてという状況になれば、違う味方が前を向いてドリブルでカウンターをつくることもできるし、ショートカウンターもできたりする。守から攻への切り替えを早くして、ボールスピード、判断を速くすれば、相手の背後のスペースを使うことができると話しました。前半で、ちょっとその部分で、楔が中央に入ったときの球離れが時間をかけすぎてしまって、相手が潰したり、取られたりという形だったので、ハーフタイムに意識してもらったところは良かったと思います。また、特にうちのダブルボランチの切り替えを早くすれば、相手のボランチは一枚ですので、FWに当てたところで、うちのボランチが早く切り替えれば、相手のボランチ1枚に対して2人が前を向いてボールを受けることができる。そして、両サイドハーフが相手のウイングバックの背後のスペースを両サイドで侵入できれば、中央からボランチへの落としへの3人目の動きということで攻撃に絡むことができます。攻撃はそういう狙いがあり、後半の方がそういった状況は作り出せたと思います。そういう状況を狙いながらブロックをつくっていました。ただ両サイドハーフの運量、クレバーさ、どちらを牽制するのかどちらを切るのかの判断は非常に重要な部分でした。
そういう状況を作り出さなければいけなかったし、失点したところから、5番の選手が彼らが得点をするまでは攻撃参加していたんですけど、そのあとからは攻撃参加はしなかったし、随所にプレーを切るところは、うちも含めて彼らも経験値を示し、止めるところやいろんな部分でのずるがしこさ、経験豊富な選手が何人かいることを感じさせるものもありました。長く一緒にプレーしているため、ダイレクトプレーやスルーがあるチームだな、という印象はあります。失点するまでは、うちはダブルボランチが横並びでプレーしていたんですけど、失点してからは小笠原選手が気の利いたことをやって、もう一つ前に押し出て、そうすると相手もだんだんビルドアップがうまくできなくなっていった時間、状況でもありました。当然ながらボランチが1枚前に出ることで、その背後が空くわけで、ディフェンスラインもそれに対してついていく、押し上げるということをしなければなりません。彼らも勇敢にラインを押し上げることができたと思います。それを失点した時間帯から試合の最後までやり続けたということは、小笠原選手の能力の高さを示しているのではないかな、と思います」
「負けた人にしては、しゃべり過ぎたと思います」
以上