頂上決戦が開戦する。
勝点差なし、得失点1差とほぼ肩を並べて、優勝というゴールテープに突き進む両雄が、雌雄を決する時がきた。
「広島に勝つか負けるかで、その後の戦いを優位に進められるか違ってくる。ホームなので、引き分けではなく勝ちを狙いにいきます」(中町公祐)
「次の横浜FM戦は、本当に厳しい試合になると思いますが、自分たちのサッカーをアウェイでもぶつけて、必ず勝点3を持って帰りたいと思います」(森崎和幸)
天皇杯3回戦後、両チームのクールガイ2人も、つい熱を帯びたコメントを発していた。両雄にとって、今シーズンのハイライトと呼べる高揚感MAXのゲームになるに違いない。
まず、両チームの状態を客観的に見てみよう。広島はリーグ戦直近3戦で3連勝、計7得点1失点。横浜FMは1勝2分、計1得点0失点。数字だけを見ると、広島の方が連勝の勢いがあるのは当然、攻守のバランスも整っているようだ。
また、天皇杯3回戦から広島が中4日で、横浜FMは中2日で臨む。さらに横浜FMはその4日前のヤマザキナビスコカップ準決勝セカンドレグで、0−4からの奇跡の大逆転を目論み、序盤からフルパワーで飛ばす、消耗度の高いハードな試合を演じた。横浜FMにとって連戦による疲労の蓄積具合が、気にならないと言えば嘘になるはず。中村俊輔は「でも、ウチは1週間かけて準備するよりも、中2日の方がたぶんいいと思う」とポジティブに捉えていたが、果たして…。
もう一つ、両チームに差があるとすれば、先発の陣容と状態。横浜FMは、左サイドバックのドゥトラが累積警告で出場停止。それについて中村は「(ドゥトラが出場できないのは)ちょっとデカイ。ドゥさんは後ろのゲームメーカーだから。ボランチとサイドバックの連係が大事になるし」と、マイナス面を吐露した。また、日本代表の欧州遠征から帰国したばかりの齋藤学と、水曜日の天皇杯をケガのため回避した、今季リーグ戦全試合出場中の兵藤慎剛のコンディションも気がかり。
とはいえ、横浜FMにも頼もしい拠り所になる数字が2つある。一つは今季リーグ戦ではホームで、8勝6分の無敗であること。もう一つは、森保一監督政権の広島には2勝1分で無敗であること。特に後者の数字に対しては自信を深めている様子。今回、ドゥトラに代わって先発入りが予想される奈良輪雄太も、「みんなは(広島を)やりやすい相手だと言っている。そういうポジティブな雰囲気の中でプレーするのはプラスになる」と、前年王者に対し臆することはなさそうだ。
今回、確かに“決戦”ではあるが、ここですべてが決まる“決勝戦”ではない。だから「勝ちたい」と思うと同時に「負けたくない」という欲がプレーに反映してもおかしくない。そこで試合展開を予想すると、立ち上がりはお互い様子を見て、遅攻という名のジャブを出し合い、牽制し合うのではないだろうか。その中で一瞬の隙を逃さず、一撃必殺のカウンターを決めた方が白星を握るような気がする。もっと個人的な見解を言えば、その速攻の発動スイッチを押すのは、横浜FMの富澤清太郎、広島の青山敏弘のどちらかだと思う。お互いボールハント後、切り替えが迅速かつ、相手の急所をえぐる縦パスを送れる選手。どちらかが放つ決勝ゴールに繋がるパスは、優勝に繋がる一本のパスになるかもしれない。
以上
2013.10.18 Reported by 小林智明(インサイド)