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【第93回天皇杯 3回戦 柏 vs 岡山】レポート:岡山の守備ブロックに苦戦するも、“20歳の俊英”山中亮輔が流れを変える。土壇場で勝ち切った柏が、辛うじて4回戦へ進出(13.10.17)

もどかしい展開が続いた。圧倒的に柏が押し込んでいる。にもかかわらず、アタッキングサードに入った後の最後の崩しの部分での精度に欠け、ゴールだけが遠い。延長戦突入も覚悟したというのが筆者の本音である。

裏を返せば、岡山がそれだけうまく運んだとも取れる試合である。
「自分たちがJ2の中で強みとして出しているボールを奪うこと、それを前に運ぶ、そういったことを強気にやろうじゃないかと送り出した」(影山雅永監督)。柏のビルドアップに対して前線から果敢にプレスに行き、その勢いを持ってショートカウンターを仕掛けたいという意欲は彼らのプレーから滲み出ていた。
その勢いに押されて、序盤はロングボールの多かった柏だったが、次第にGK菅野孝憲をうまく使い、岡山のプレスをいなし、菅野からリターンを受けた近藤直也、鈴木大輔、渡部博文が再び組み立てていくか、菅野のロングキックで岡山のラインを下げさせ、中盤のスペースでボランチがセカンドボールを拾うことで次の展開へつなげていく。

したがって、「もっと奪って前でシュートで終わる場面を増やしたかった。ボールを奪ってからスペースに流し込んだり、崩し切ることもそうだけど、強引にシュートを打ってもいいかなと思った」と仙石廉が振り返った通り、本来は90分を通じて前から奪いに行き、そこから持ち前のスピーディーな攻撃を仕掛けたかったのであろうが、押し込まれた揚げ句、奪うゾーンが自陣の深い位置であったため、どうしても前線の枚数を欠き、攻撃に厚みが出ない。
後半の岡山は、両ウイングバックが降りた5バック状態となり、その前にボランチが壁を作って中央を閉める。決定機を作らせなかった点は岡山の集中力と、組織としての守備の堅さを誇示する形となったが、その反面、攻撃では柏をヒヤリとさせることは少なく、唯一裏を取ったシーンと言えば、前半に押谷祐樹がディフェンスラインの裏へタイミング良く飛び出し、フリーになった場面のみ。そこも柏守備陣の素早い対応によってシュートまで待ち込むことができなかった。

全体的な“試合の運び方”という観点では柏が制したのは間違いないが、それが得点に反映されないのもサッカーの持つ難しさであり、面白さでもある。
岡山の守備ブロックにゴール前のスペースを消されたことも一因にはあるが、柏には攻撃の仕掛けで工夫が足りなかった。例えば、クサビの縦パスを受ける時も、受けて収めて、流れを切ってしまうばかりではなく、ダイレクトで味方に落とす、あるいはフリックやスルーなどを駆使して意外性のある攻撃を展開するなど、周囲との連動性には欠けており、岡山守備陣の待ち構えるゾーンから、彼らを引き剥がして破綻の糸口を作るには至らなかった。
大谷秀和が左に流れ、逆サイドでは3バックの一角の鈴木が右サイドバックに近い形で高い位置取りをするなど、守備ブロックを崩すためにピッチをワイドに使い、揺さぶりを仕掛けたところまでは狙い通りだった。ただ、大谷や鈴木が両ウイングバックをフリーの状態でオープンスペースへ押し出しても、クロスの精度に乏しく、際どいボールがゴール前に入ってこない。

柏が押し込み、岡山が守る。しかし最後のパスとクロスの精度に欠け、決定機は作れない。岡山も前へ出ていく厚みがないため、再びボールを拾った柏がボールを保持して押し込む。そんな同じリズムが淡々と続いた。

その流れを打破したのが71分に投入された山中亮輔だ。
「入ったら自分の特徴を出して、どんどん仕掛けて、点も入っていなかったので流れを変えたかった」と意気込んでピッチに入った20歳の俊英は、縦への突破力を生かして左サイドから攻め立てた。その攻めの姿勢がCKを何本も取り、最後にPKを獲得した場面も、それまでは岡山の守備ブロックの前でパスを受けてばかりで攻撃を停滞させていたのに対し、山中の裏への疾走を見逃さなかった大谷のパスと、スピードを生かして走り勝った山中のクロスが相手のハンドを誘発した。そこに至る必然性は存在しており、そのPKをクレオが決めて、1−0で粘る岡山を退けた。

岡山は勝って勢いをつけるに越したことはなかったが、それでも集中力、守備の対応に関しては一定以上の手応えをつかんだことだろう。柏も精度や質という部分で課題を露呈したが、来季のAFCチャンピオンズリーグ出場権を獲得するために、最低限の条件はクリアした。
柏はヤマザキナビスコカップのタイトルと天皇杯連覇、そしてACL出場権獲得という目標があり、岡山はJ1昇格プレーオフ出場、そしてその先のJ1昇格を狙う。普段はカテゴリーの異なる者同士が与することで、お互いに違った収穫・課題が数多く見えてきたことだろう。双方にとって大事なのは、今回の試合で得たものをその目標につなげられるかどうかだ。

以上

2013.10.17 Reported by 鈴木潤
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