まさにホームチームのためのゲームだったと言っていいだろう。試合終了時に電光掲示板に記されたスコアは4−0。前半に1得点、後半に3得点という、試合運びのアウトラインとしてはほぼ理想的な推移。今シーズンはホームでなかなか結果が出せていなかった札幌が、ここにきてホームで連勝を果たしたとあっては、意味の大きな勝利だと言っていいだろう。
ただし、試合後の札幌の選手たちは一様に手厳しいコメントを発していた。
「今日の勝ちを喜んでいては、レベルアップはできない」と日高拓磨が言えば、「個人的には最悪の出来。カウンターを受けるきっかけを作ってしまっていた。勝てたのはラッキー」と深井一希。少なくとも筆者が耳にした限りでは、多くの選手が反省点や課題ばかりを口にしていた印象だ。4得点の大勝ながら財前恵一監督も「攻撃の形はハッキリ言ってほとんどできなかった」と振り返ったほどである。
得点を振り返ってみたい。
19分に挙げた先制点は横野純貴の好パスが起点となったが、最終的には内村圭宏が個の力で奪ったもの。69分、72分と立て続けに加点し、そこで勝負は完全に決まったのだが、この2点はどちらも相手DF、GKが自陣深くでパスをミスしたところを拾って蹴り込んで得ている。4点目はビハインドを追う相手が前がかりになったところで裏を突いたもの。岐阜の行徳浩二監督が「自滅」と評したのは、確かに的を射ているのだろう。岐阜が押し込んでいる時間帯もそれなりにあったわけで、札幌の選手たちが手放しに喜べないのも、確かにわからないでもない。
だが、それでも勝ちは勝ちだ。「自分達で崩した場面は少なかった」と櫛引一紀は言ったが、そうしたときに違いを出せる個人がいるか否かもチーム力のひとつ。相手守備陣のパスミスにしても、そこに詰めていなければボールを奪えないわけで、いつのまにか得点が入っていたというわけではない。そしてなによりも、前節は終始優勢に試合を進めながらも1点しか奪えず、1−0という最少点差でなんとか逃げ切ったチームが、この試合では得点を重ねて4点も記録したのである。さらにその後も途中投入の若手選手を中心に、攻撃の手を緩めることなく貪欲に5点目を狙い続けた。その戦いぶりは、言うまでもなく充分に勝利に値するものだと思う。選手達ももっと喜んでいいような気もするが、「勝って兜の緒を締めよ」という言葉もあるし、それはそれでいいのかもしれない。
ただし同時に、この日の札幌が必ずしも問題なく勝利したわけではないこともまた、記しておかなければならない。札幌が1−0でリードしての前半終わりころ、さらには後半立ち上がりなどは完全に岐阜の時間帯となっており、そこで1点でも岐阜が返していたならば、その後の展開がどうなっていたかわからない。その意味では、4得点した札幌の攻撃陣に焦点が当たってしまいがちなこの試合だが、悪い流れのなかでも失点をせずに耐え続けた札幌守備陣の健闘もまた、称えるべきなのだろう。特に櫛引、チョ ソンジンというセンターバックの2人は前への強さを発揮し、要所を締めていた。
こうして試合を総括していくと、あらためてサッカーというのは難しいスポーツであることがわかる。4−0という大差で終わった試合でありながらも、勝ったほうは反省や課題ばかりを口にし、運の占める要素も見えてくる。また、細部を振り返っていくと、大敗した岐阜にも結果を一変させるチャンスがあったというところも見えてくる。一寸先は闇、と言ってしまうのは大袈裟かもしれないが、先の読めないスポーツであることは間違いない。
そして、たったひとつの試合でさえ先を読むのは難しいのだから、1年を通して戦うリーグ戦の結末なんてものは、そうそう先見できるものではない。札幌と岐阜。この両チームが今後、どのようにリーグ戦を戦い抜いていくのかもまた、非常に興味深いところだ。
以上
2013.06.23 Reported by 斉藤宏則