固定の練習場とクラブハウスを持たない栃木にとって、練習場の確保は実に悩ましい事案である。マネージャーさんは日々、選手にストレスを与えない環境を探し求めて奔走している。その仕事ぶりには頭が下がる。
年始からホームスタジアムである栃木県グリーンスタジアムを含めれば、6つの練習場をローテーションで使用しているのが現状だ。そこに、新たに加わったのが市貝町城見ヶ丘運動公園。豊かな自然に囲まれていることもあり長閑な空気が流れ、集中して練習に取り組むには最適な環境である。ただし、移動に要する時間がネックで、宇都宮市内からは車で約50分かかる。今週は2日連続で練習が市貝で行われ、新加入選手にとっては初体験となった。整った環境から移籍してきた選手にとってはカルチャーショックなのでは?と思ったが、案外そうでもないようだ。
「移動は苦にならないですよ。運転することでリラックスできますからね。自分の中では上手く時間を使えていると思います。逆に、メンタル的に凹んでいる時などは、同じ場所の往復の方がきつい時があるくらいですからね」
そうサラッと言い切ったのはGKの榎本達也。移動を負担に感じるどころか、リラックスタイムと考え、オフのスイッチを入れる瞬間にしていると言うのだ。誰にも邪魔されない一人だけの空間は確かに貴重なのかもしれない。家族がいれば尚更である。なるほど、相乗りして来る選手もいる中、榎本は一人で愛車を運転してきている。そこにも流儀があるのかもしれない。そんなことを考えていると、榎本が言葉を足した。
「徳島はもっと自然がいっぱいでしたよ。近くにはサルがおるしね。『イノシシがおる』って言われて、実際に遭遇したことがありますからね(笑)。だから、全く問題ない!それに僕が住んでいた所はカエルの鳴き声がすごくて眠れなかったくらいですから」
改めてベテランの経験値の高さを思い知らされた、刺すような日差しが痛かった市貝の午後。それにしても、目の前にいたイノシシはキャッチできたのだろうか。
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2013.06.07 Reported by 大塚秀毅