日本高校サッカー選抜は、スタートからJリーグ入りする3名を前線に並べた。平秀斗(佐賀東/鳥栖)、浅野拓磨(四日市中央工業/広島)、田村翔太(四日市中央工業/湘南)の3トップは決して大柄でないが、スピードに恵まれている。そんな彼らを生かし「前からボールを奪いに行き、早く攻撃しよう」(浅野)という狙いが、序盤から見て取れた。
しかしU-18Jリーグ選抜は相手のスピードに、落ち着いて対応する。前寛之(札幌)、宮本航汰(清水)の両ボランチが巧みなキープと機知を披露。ボールをしっかり握り、時にはバックパスもまじえて相手FWを振り回すことで、高校選抜のバランスを崩す。左SB内田裕斗(G大阪)は「自分達は去年に比べてタレントが少ない。高校選抜はタレントが多い」と謙遜するが、止めて蹴るというスキルはJリーグ選抜が上。そんな技巧派軍団が、10分には美しいビルドアップから決定機を作った。最終ラインからのクサビパスを國分将(札幌)が左に落とし、内田は中に折り返す。宮本は飛び込んでボレーを放つが、GK置田峻也(星稜)が身を挺して防ぐ。
「もっと前からチェイスをかけて、前線で奪ってというのをしたかった」(置田)という高校選抜は、追ってもなかなか奪えぬ中で、持ち味を出し切れない。またJリーグ選抜も内田、CB内山裕貴(札幌)といったDFが、スピードに乗った相手へきっちり対応し、振り切られず対応する。それでも高校選抜が狙い通りの場面を作ったのは20分。松井修平(桐光学園)が高い位置のボール奪取から自ら切れ込み、浅野はセカンドボールにフリーで反応。しかし浅野の左足シュートは枠上に逸れてしまう。30分にもカウンターから浅野が中央から切れ込み、シュートのフェイクから右に落とす。ただし田村のシュートはやはり枠の外だった。
展開は完全に五分と五分。Jリーグ選抜も34分、中野雅臣(東京V)が右サイドから左足で折り返し、汰木康也(横浜FM)、菅嶋弘希(東京V)がつなぐ。國分将のシュートはいい体勢だったが、枠には届かない。お互いにチャンスを作りつつ、前半は0-0だった。
後半に入るとJリーグ選抜は嶋田慎太郎(熊本)、高校選抜は平岡翼(作陽)を起用。どちらも左利きのドリブラーで、フレッシュな彼らがチャンスによく絡む。後半10分には平岡が鋭い加減速から右サイドを切り裂き、自らエリア内に切れ込んでシュート。ここはGK高木和徹(清水)がナイスブロックを見せる。対するJリーグ選抜は後半21分、嶋田が左中間から中にラストパスを送り、北川航也(清水)が1対1のビッグチャンス。しかしGK置田が体勢を崩しながら、片足でシュートを阻止した。
得点の入りそうな気配は漂っていたが、この試合は35分ハーフ。スピード、技と言う持ち味を両チームとも出して決定機は作りつつ、最後の壁を破れない。試合は0-0でタイムアップの時を迎えた。この対戦の通算成績はJリーグ選抜の2勝2分。今年も無敗を守った。
試合後に一番悔しそうな顔をしていたのが、GK置田峻也だ。フル出場してJリーグ選抜を零封し、再三のシュートストップを見せた置田だが、「止めたことより、あそこでチャンスを作らせたことが自分の課題」と反省の弁を口にする。その悔しさと自己分析が、更なる成長も促してくれるだろう。今回の高校選抜はセレッソ大阪U-15出身の置田をはじめ、スタメン11名中6名が、中学時代にJリーグのアカデミーでプレーしていた選手。高校選抜の奮闘もまた、Jの価値を証明したものだった。
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