ちょっと古い話になりますが、3月12日に立命館宇治高校の卒業式が行われ、京都では久保裕也を始め、高橋祐治、國領一平、原川力、三根和起といったスカラーアスリート組が無事、卒業しました。
高校を卒業すると、もう彼らは社会人。自分のことは全て自分で決められるという自由、そして責任。高校時代とは全く違う生活に戸惑いもあるのでは? と思って、高橋祐治、國領一平、原川力の3選手に話を聞いてみました。
Q:まずはご卒業おめでとうございます。ご両親もさぞ喜ばれたのでは?
原川力:「ありがとうございます。無事卒業して、親も喜んでいました。高校を卒業して、勉強がない分、楽ですね」
高橋祐治:「(親からは)おめでとう、と言われました。サッカーは今までどおり、自分は自分らしくやっていこうと思います。勉強がない分、サッカーに集中できると思います」
國領一平:「ありがとうございます。高校在学中もトップ扱いとなっていたんですけど、卒業して、これからはずっとサッカーに集中できるというプラスの面もあるし、逆にそれしかない、それで勝負していかないといけないと思いますし。もうこれが仕事になったんかな、という実感があります」
Q:高校生の時と社会人とでは、時間やお金の使い方など、自由については雲泥の差があると思いますが?
原川力:「寮なので…、これまでもやることは自分で決めてましたし…。お金の面ですかね、一番、どうなるのかなと思うことは」
高橋祐治:「僕も、お金の面とかはわからないことありますが…。高校を卒業して、今までは学生だからとある程度許されたことが、これから許されなかったり…ということもあると思うので責任感は感じます。トップに上がることで、ファンやサポーター、そして全然知らない人も僕らのことを観ているので、普通に生活から気を引き締めていかなきゃいけないなと思います」
國領一平:「僕、教習所に行っているんですけど、車を買うことになったらローンどうしようかとか…。僕も高校を卒業して社会人になって、先輩たちみたいに車に乗ったりするようになるんやなと実感はしています。お金の管理は難しいですけど、親とかと相談してやっています」
彼らは寮生活なので、生活面で大きな変化はないようだ。でも、お金の面ではいろいろと思うところもあるのだろう。聞いてみると、彼ら全員がお小遣い制だそうだ。クラブからの振り込み先は親のところで、そこからお小遣いをもらっているのだとか。社会人といっても未成年。そのほうが余計な心配をしなくて良いのかもしれない。だが、國領家は若干違いがある。
國領一平:「親からは、『自分でできるなら』って言われていて、一応僕が言った分だけくれる。僕に任せてくれています。使おうと思えばいくらでも使えるし、逆に貯めようと思えばいくらでも貯められます」
各家庭の教育方針の違いは興味深いっす。
ただ、國領は先輩や後輩との付き合いの中でもいろいろと感じてもいるようで…
國領一平:「去年末から練習参加していて、先輩にお昼ごはんとか一緒に連れて行ってもらって。でも今度は、ユースの子らと食事に行くことになったら僕らがおごらないといけない状況になってきた(笑)。まあ、そういう流れを見ていると、僕らもプロになったんだなと思います」
先輩から学ぶ、というのはやはり大事なのだなと思う。そういう意味では、水谷雄一や倉貫一毅、工藤浩平といった家族もあり、守るものもある先輩からいろいろと学べるのは良いのだろう(逆に、反面教師にすべき先輩もいるのかもしれない…)。
高校生という立場から、サッカーを「職業」にした彼ら。厳しいプロの世界だが、夢を持って取り組める世界でもある。これまで以上に自己主張をしていかなくてはいけないと思うが…
原川力:「自己主張…、主張は高校生の頃からしていましたし、それは変わらずです」
高橋祐治:「まずは、まだベンチにも入っていないので一日一日の練習を頑張りたいです」
國領一平:「夢もありますけど、逆に活躍できなかったら全然もらえなくなる。今まで好きなこととしてやってきたことが仕事になる、ということはかなり実感していて、ただ単に好きなだけでやっているだけでなく、結果を残してやっていきたいなとは感じます」
サッカー選手である前に一人の社会人でもある。なんとなく感じたのは、ユースの頃は仲間同士の横のつながりのほうが強そうだったのが、社会人つまりトッププロになると、先輩や様々な立場の人たちとのつながりが強くなるということ。多くの人たちとの向き合うことで豊かな人間性を育むことができるのかもしれない。クラブというのは、こういう部分も大切なんだろうなと思う。
さて―、多くの人に出会って大きく成長してもらえればと思う若者たちですが、高校を無事卒業してプロの世界に入ったのだから、ご両親に何か感謝の気持ちを表したらどうだろう。「親へプレゼント? ないです」(原川)では……。
以上
2012.03.29 Reported by 武田賢宗