★ホーム開幕戦、前夜(上)
アルウィンの雪掻きが終わった午後2時過ぎ、30人ほどのサポーターが市内の別施設に集合していました。ゴール裏で活動するサポーターグループ『ULRAS MATSUMOTO』の皆さんが、明日のホーム開幕戦を迎えるにあたり、その準備を行っていました。
“背番号12”の選手たちはピッチにこそ立つことはありませんが、自チームを鼓舞し、相手チームにプレッシャーをかけ続けることが役割です。ピッチ上の仲間たちが苦しい状況でも、あと一歩を踏み出せるように背中を押すことができという、実に頼もしい存在です。
2011シーズンが終わった瞬間、サポーターにとっての2012シーズンが始まりました。短いシーズンオフの間、やるべきことはまさに山積みです。
ホーム開幕戦を明日に控えたこの日は、新加入選手のチャントと新たな横断幕の作成。二手に分かれた『ULTRAS MATSUMOTO』の皆さんがそれぞれの分担に取りかかります。
横断幕の作業は、布に絵柄などをトレースして、ペンキで色を塗っていく作業としては単純なものです。しかし、ゴール裏のスタンドを占めるほどの大型横断幕になると、気の遠くなるような時間がかかる作業になります。特にリーグ開幕からお披露目となった『雷鳥は頂を目指す』とのメッセージが大書された横断幕は、縦が3メートル、横は30メートルになる巨大なもの。これだけ大きな横断幕を作るのは、実に手間がかかります。また布やペンキを購入するためのお金もかかるため、それぞれがカンパなどで準備をしています。
横断幕作成の作業を見学させていただいたのですが、その手つきは実に慣れたものでした。大小の筆を使って、集中を必要とする細かい場所にもペンキを塗りこんでいきます。また、ミシンで布を縫い込んでほつれないように補強を重ねます。冗談ではなく、その姿はまさに匠。職人そのものでした。
次いで、新加入選手(エイジソン・楠瀬章仁・野澤洋輔選手)のチャント作成です。あらかじめ幾つかの候補作を持ち寄って、その後はメンバーによる多数決で決定となります。
「この選手にはこの曲が……」
「いや、こっちの曲がイメージにピッタリ……」
雰囲気は和やかですが、真剣そのものの話し合いが行われました。ちなみにチャントについて、コールリーダーの小松洋平さんは、「チャントありきじゃなく、選手ありき」という姿勢を通しています。
こうして多数決で選ばれたチャントをインターネット上にアップするための録音が終わった頃には、既に日が沈み始めていました。
やっと、午前中の雪掻きからの長い長い一日が終わりました。
長かったホーム開幕戦前夜に、改めて思ったこと。
当たり前ではありますが、多くの人達の熱意があるからこそJクラブの存在があるということです。サポーター・ボランティア・スポンサー・クラブ関係者――。選手同様に待ちわびていた、松本山雅FCのプロクラブとしての歴史は、こうして始まりました。
以上
2012.03.22 Reported by 多岐太宿