試合後のピッチに開幕4連勝に似合う表情は浮かんではいなかった。「苦しい時間帯が多く、湘南らしさを出せなかった」馬場賢治はそう振り返り、鎌田翔雅も「4試合連続の失点は厳しい」と反省を口にした。
序盤から圧したのはホームの湘南だった。積極的にフィニッシュまで持ち込み、岐阜陣内での攻防が増えていく。自陣にボールが入れば永木亮太を中心に摘み取り、ふたたび攻撃へと転じる。先制は13分のことだった。フリーキックから高山薫が仕掛け、相手DFを振り切る。折り返しに合わせた菊池大介のシュートはGK多田大介が阻むが、こぼれ球に馬場が詰めた。先発に戻った馬場の2戦連続弾により、湘南が流れをゴールに結ぶ。
しかし、湘南の曹貴裁監督は振り返っている。「いいかたちで1点目が取れたが、そのあと自ら首を締めるようなプレーが続いてしまい、リズムを取れなかった」。一方の行徳浩二監督は、「相手がプレッシャーに来たときに1タッチ、2タッチで回避し、とくに逆サイドを使おうと話していた。徐々に逆サイドのスペースを使うことができた」と語る。
湘南が押し込まれた度合いを相手のコーナーキックの数に求めるなら、前節の福岡は前半0、そのまえの草津は前半1、開幕戦の京都においては試合を通して0だった。かたや今節の岐阜は計3本、そのいずれも前半に記録している。30分前後にはコーナーキックの流れから樋口寛規がミドルを放ち、佐藤洸一もクロスにヘッドを合わせた。速い寄せやパスワークにより、岐阜はセカンドボールを含めて先手を取る。38分にはふたたびコーナーキックの競り合いから井上平がゴールに迫りもした。
前半のピンチを凌いだ湘南は、ハーフタイムを挟み再度攻勢に出る。加えて古橋達弥や下村東美を送り出し、一方の岐阜も染矢一樹や梅田直哉を投入して互いに動きが活性化する。
前半然り、岐阜にとって悔やまれるのは要所のファウルだろう。裏を返せば、湘南が先手を奪っていたともいえる。75分の湘南の追加点もリスタートから得たコーナーキックによるものだった。古橋のクロスを永木が折り返すと、最後に仕留めたのは前半から攻守に走っていた大野和成だった。「いいボールが来ました」と語る大野のJ初ゴールにより、湘南が突き放す。しかしそれまで得点機を逃していた岐阜も、アディショナルタイムに樋口が同じくJ初ゴールを叩きこみ、土壇場で一矢を報いた。
「1対1の部分などまだまだだけど、チャンスもあった。最後の1点は気持ちの出たゴール。つぎに繋がると思う」岐阜の服部年宏は、反省を踏まえつつ先を見据えた。次節はホームで大分を迎え撃つ。
他方、「いい時間帯に点を取れたことはよかったが、DFとしては最後の1点を守りたかった。連勝に満足せず、まずはつぎに向かいたい」と、湘南の大野も自分たちの戦いを省みた。勝点3とともに得た課題と収穫をつぎに繋げていく。踏み出すつぎの一歩、湘南はアウェイで熊本に挑む。
以上
2012.03.21 Reported by 隈元大吾