12月24日(土) 第91回天皇杯 準々決勝
C大阪 2 - 2(PK 6 - 5)清水 (13:00/長居/8,252人)
得点者:11' キム ボギョン(C大阪)、23' 小野 伸二(清水)、93' 清武 弘嗣(C大阪)、104' 高木 俊幸(清水)
★第91回天皇杯特集
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PK戦7人目のキッカー、清水GK山本海人がシュートをゴールポストに当てた瞬間、大阪長居スタジアムでは、桜色のサポーターの大歓声に満ちあふれた。ピッチではC大阪GKキム ジンヒョンを中心に歓喜の輪が広がった。ベスト4をかけた天皇杯準々決勝、C大阪と清水の一戦は、PK戦の末にC大阪が次戦への切符をものにした。
ただし、C大阪にとっては、前回のベスト16、仙台戦同様、厳しい試合だった。「前半からこっちのほうがチャンスを多く作っていたけど、そこでシュートまで持って行けなかったのと、決定的なところでこっちが外してしまった積み重ねが、PK戦まで来てしまった要因」というC大阪MF倉田秋の言葉は、まさに試合を語るにふさわしいものだ。
累積警告により扇原貴宏が出場停止のため、ボランチに入ったキム ボギョンが開始早々の11分に得意の左足でファインゴールを決め、先制に成功。C大阪としてはこれ以上ないスタートを切れただけでなく、清水のフレドリック ユングベリが19分に負傷交代を余儀なくされ、相手も混乱のなかにいたことから、C大阪優勢の展開となることは必至なはずだった。ところが、そこから押し込みながらも、丸橋祐介がGKとの1対1のチャンスをものにできないなど、決定力に欠くと、23分、清水FW大前元紀の突破から崩され、高原直泰のシュートに、C大阪DF上本大海が痛恨のハンド。PKを与えてしまう。これをユングベリに代わって入った小野伸二に決められ、自ら流れを止めてしまった。
1−1で折り返した後半は、互いに攻め合うオープンな展開に。そのなかで光ったのは、この試合で先発の座を射止めた大卒ルーキー、C大阪MF村田和哉だ。持ち前のスピードと突破力が魅力の26番は、前半こそ「戸惑ったときがあった」ものの、ハーフタイムにレヴィークルピ監督から「全部仕掛けろ」と発破をかけられると、後半は右サイドで積極的に勝負し、次々とチャンスを作り出していく。それでも、両チームのGKの奮闘や、シュート精度不足のなさもあって、試合は延長戦に持ち込まれる。
延長戦で先に均衡を破ったのはC大阪。そのきっかけを作ったパスを出したのも村田。そして決めたのは、エース、清武弘嗣。後半の終了間際には足をつる仕草を見せるような、限界に近い状態のなかでも、高い技術で相手DFを鮮やかにドリブルでかわし、ペナルティーエリアに入り込んで、冷静に左足でゴール。これで勝負は決まったかに思われた。しかし、延長前半14分、清水FW高木俊幸に左サイドから単独突破を許し、右足で豪快に叩き込まれ、再度試合はイーブンスコアとなってしまう。「チャンスがあったなかで、決めきれなかったのと、得点してすぐに失点してしまうというのが、今年リーグ戦からずっと続いていること」と酒本憲幸。土壇場で今季の課題をC大阪は露呈してしまった。
そこでもつれ込んだPK戦。しかし、C大阪のイレブンに落ち込む様子は見受けられず。逆に、「PK戦前に(選手たちが)すごく自信にあふれた表情をしていた」とレヴィークルピ監督。指揮官を中心に組まれた円陣では、だれもが大きな声をあげ、笑顔さえ観られた。そして、「GKのジンヒョンが止めてくれるので、自信を持って蹴ることができた」(丸橋祐介)という選手たちと、「みんなが決めてくれるから、1本だけ止めれば勝てると思ってやっていた」というキム ジンヒョンの、互いの絆と信頼の強さが、最後の最後に実を結び、キム ジンヒョンは清水4人目の岩下敬輔のシュートをストップ。キッカーも、5人目の播戸竜二以外は全員が成功し、仙台戦に続いて、際どい勝負をものにした。
「ほんま勝ててよかった」と安堵の表情を浮かべたのは、この日、欠場の茂庭照幸に代わってキャプテンマークを巻いた酒本。これで、元日国立まで、あと一歩のところまでやってきたC大阪。「このチーム、このメンバーでもっとサッカーをしたいし、優勝したい」(倉田)と、若きチームは、タイトル奪取へのさらなる意欲を燃やしていた。
一方の清水は、相手に20本のシュートを許すなかでも、GK山本海人のファインセーブなどで凌ぎ、「2度の暗闇から光の見えるところまではい上がってきた」(アフシン ゴトビ監督)と、2度のビハインドを追い付く粘りを見せたが、PK戦で力尽き、2季連続のファイナル進出への道は断たれた。「チームと選手を誇りに思う」と胸を張ったゴトビ監督は、来季に向けては、「我々の選手たちは精神的にもっと強くならなければいけない。またチームに対する責任を持っていかなければいけない。勝利へのウエイトをもっと持たないといけない。そのすべてがそろえば、次のステップに進めると思う」と、あえて苦言を呈することで、さらなる成長を促していた。それでも、この試合でも奮闘した大前、高木をはじめ、若手の成長も目立った今季の清水。最後まで声援を送り続けたオレンジのサポーターとともに、その活躍を称え、来季への飛躍を期待したい。
以上
2011.12.25 Reported by 前田敏勝