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【J2日記】福岡:縁は異なもの、味なもの(09.09.30)

「徳島駅前に行列の出来ている大判焼き屋がありますよね、何て名前だったかな?」
「あそこのは美味しいから、いつも並んでいるんよ。選手の差し入れにも使うことあるし」
「ところで、『いのたに(徳島ラーメン屋)』には行った?」
「最初に取材に行ったときに行きましたよ。それと東大だったかな」
「ああ、あそこは生玉子がサービスでタダなんよね」

 第41節の徳島戦の前夜、市内某所でそんな会話を楽しんでいた。集まっていたのは、雁の巣球技場で知り合った福岡サポーターと、おらが町のチームを応援するためにやってきた徳島サポーター。雁の巣球技場で良く顔を合わせる福岡サポーターのMさんから、面白い集まりがあるからと誘われてやって来たのだが、聞くところによると、両チームが対戦するたびに、ホームチームのサポーターが場所を設けて交流会を続けているそうだ。

 そのきっかけとなる出来事が起こったのは、今から3年前の2006年10月29日。その前日に新潟スタジアムで行われたJ1第29節の試合観戦を終えたアビスパ福岡公式応援ツアーのバスが、休憩のために福山サービスエリアに立ち寄った時のことだった。福岡サポーターがバスの中でうとうとしていると、何やら外から聞き慣れたコールが聞こえてくる。しかし、ここは福山。しかも、まだ夜が明け切らない薄暗い時間帯。何事だろうとカーテン越しにバスの外に目をやると、そこには、ツアーバスに向かってコールを繰り返す一団がいた。

 声の主は徳島サポーター。彼らは、その日、鳥栖スタジアム(現ベストアメニティスタジアム)で戦う、おらが町のチームを応援するために自家用車数台で早朝の徳島を出発。やはり休憩のために福山サービスエリアに立ち寄ったのだった。そして、偶然にも、福岡サポーターのツアーバスを発見。福岡のためにエールを送っていた。
 実は、福岡は前日の新潟戦でJ1復帰後初のアウェイ勝利を挙げていたのだが、それを知っていた徳島サポーターが、その勝利を讃えるために送ってくれたのだった。
「僕たち、アビスパがJ1に復帰した試合にも立ち会ってるんですよ」(徳島サポーター)
 福岡がJ1復帰を決めた試合の相手は徳島。そんなこともあって、福岡の成績を気にかけてくれていたらしい。

 そんな徳島サポーターの心意気に福岡サポーターが応えないわけはない。ツアーバスが博多に到着すると、そこから徳島サポーターを追いかけてJRに乗り換えて鳥栖へ。鳥栖スタジアム、アウェイ側ゴール裏に陣取って、徳島サポーターとともに声を上げ、拳を突き上げてチームを後押しした。その日以来、徳島がベストアメニティスタジアムで試合をするときは、福岡サポーターもアウェイ側ゴール裏で声を出す関係が続いている。

 おらが町のチームをこよなく愛し、チームの一員としてともに戦う。成績に関係なく、サポーターにとっては、おらが町のチームこそ世界で一番の、そして唯一無二の存在だ。けれど、それは自分たちだけに限ったことではない。大事に思うチームは違ってていても、その思いの強さは、どのチームのサポーターも変わらない。同じサッカーを愛する仲間として尊重し合い、良きライバルとして認め合い、そしてサッカーを語り合う。試合当日のレベルファイブスタジアムのバックスタンド裏のコンコースでも、キックオフぎりぎりまでサッカー談議に花を咲かせていた。

 さて、この日の直接対決は、福岡にとってはJ1昇格の可能性を残すための、そして徳島にとっては、レベルファイブスタジアムでの初勝利とチーム史上初の3連勝がかかった大切な試合。ともに負けるわけにはいかない試合は、互いに譲らずスコアレスドロー。勝点1ずつを分け合った両サポーターにとっては消化不良の試合になった。しかし、最後までチームとともに戦った仲間をリスペクトする気持ちに少しの変わりもない。彼らの関係は、サッカーがある限り、チームがある限り、仲間から仲間へと受け継がれ、いつまでも続いていく。

以上

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2009.09.30 Reported by 中倉一志

久しぶりの再会を祝って、福岡市内某所で酒を飲み、旨いものを食べ、サッカーを語り合う福岡サポーターと徳島サポーター。支えるチームは違っても、御らが町を大切に思う気持ちと、サッカーを愛する思いに変わりはない。

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