今季の徳島はJクラブとしての前進を幾つも見せてくれている。しっかりとしたビジョンに基づいた的確な補強、それによって生まれ変わったチームの成績面における躍進、選手・スタッフ・サポーターが一丸となって更新した最多観客数などなど。
そして去る9月11日、徳島はまたひとつ前進と呼べるものを付け加えた。現在ユースチームに所属するFW・岡卓磨選手の来季のトップ昇格を発表したのだ。クラブ初となる生え抜き選手の加入─。すでに多くのJクラブにおいてはこうした昇格も珍しくないが、徳島にとってすればJ参入5年目にしてようやく刻んだ新しい一歩となる。
だからこそ、会見の席で中田仁司強化育成部長が「ようやく下部組織の育成からトップへ昇格する選手が出ました」と感慨深気に語れば、新田広一郎社長も「これはクラブにとりまして本当に嬉しいことです。岡選手の頑張りで地元徳島の子供達にこれから大きな夢を与えてもらえればと考えています」と挨拶。大きな喜びを隠さず口にした。
さらに岡選手本人も自身の背負うものを十分理解しているようで、「ジュニア時代から多くの方に助けていただきながらここまで来ることが出来ました。後輩の皆にプレーはもちろんのこと、生活面でも手本になれるような選手を目指していきます」と話す表情からはクラブ初の生え抜きという立場に対する強い自覚がひしひしと伝わってきた。
まだ2009シーズンの真只中だけに来季へ想いを馳せるのは早過ぎる。しかし、やはりもう今からこの若者の活躍を願わずにはいられない。チームを勝利へと導くゴールを挙げて、スタジアムの歓声に応える姿を早く見てみたいと思ってしまう。そして「あいつと小学校で同じクラスだった!」と話す誇らし気な声や、「あの子、小さい時はうちの近所に住んでいて、こんなんだったんよ」と微笑む優しい笑顔がスタンドに生まれればいいなとも。
以上
★【J2日記】のバックナンバーはこちら
2009.09.28 Reported by 松下英樹