9月23日(水) 2009 J2リーグ戦 第41節
熊本 1 - 1 横浜FC (14:04/熊本/6,803人)
得点者:25' 藤田俊哉(熊本)、89' 西田剛(横浜FC)
スカパー!再放送 Ch180 9/24(木)14:30〜(解説:池ノ上俊一、実況:山崎雄樹、リポーター:風戸直子)
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手元に置いたストップウォッチの計時は48分を回っていた。根占真伍の左からのコーナーキックは早い弾道。ニアに走り込んだ西田剛が合わせに行く。熊本の守備も寄せるが間に合わない。叩いた西田のヘッドは、GK小林弘記の右側を抜けてマウスへ。1−1。そして笛。殆ど手中にしかけていた勝利は一瞬にしてこぼれ落ち、ピッチ上の熊本の選手たちは、ただ立ち尽くすしかなかった。負けたわけではないにも関わらず、「前節の負けよりも(精神的に)厳しい」(北野誠監督)引き分け。受け入れがたいが、これが結果だ。
前節の0−6という大敗を受けて、また次節仙台戦も鑑みて先発5人を入れ替えて臨んだ熊本は、立ち上りから慎重だった。2分、11分と、セットプレーの場面で前線に上がった八田康介がゴールを狙うなど、序盤から積極的に前に出る横浜FCに対しても、しっかりとラインを作って対応。前線でボールを収める役割の安孝錬にも効果的な仕事をさせない。樋口靖洋監督が「ゲームの入りが悪かった」と話した通り、横浜FCの方は全体的に動きが重く、攻守の切り替えの遅さ、マークの甘さが目についていた。
そして25分、その隙を突いて熊本に先制点が生まれる。右サイドでボールを奪うと、山本翔平から木島良輔へ。ドリブルで前に運びながら横浜FCのディフェンスを引きつけた木島は、左から斜めに入って来た藤田俊哉へ右足のアウトでスルーパス。これを受けた藤田がGK大久保択生の動きを冷静に見てゴール左隅に流し込んだ。
横浜FCの樋口監督は、後半立ち上りから池元友樹に替えて難波宏明を投入。これをきっかけに横浜FCの前からのプレスが激しくなり、DFラインの裏を狙う攻撃を見せ始めるが、逆に熊本はカウンターを狙う展開へ。56分には八田のコントロールミスを木島が拾ってボックス内まで持ち込みループ、72分には左に集めてから中央へ送り、DFの河端和哉がミドル。その1分後にも福王忠世のインターセプトから山内祐一がドリブルで持ち込む等、いずれもネットを揺らす事は出来なかったもののチャンスは作った。守備でも、球際での強さとカバーし合う連携も見せて横浜FCに殆ど決定的な場面を作らせなかった。
だが、4thレフリーが3分と表示されたボードを掲げて以降の横浜FCのプレーには、同点ゴールを決めた西田が話した「最後まで諦めない気持ち一心だった」という思いが込められていた。エデルが倒されて得たFKには4、5人が飛び込み、最後のCKにも6人がゴール前に詰めている。そしてそのCKにつながったシーン。「僕らの未熟なところが出た」と北野監督は話したが、熊本におさまりそうだったところでプレッシャーをかけにいった片山奨典のプレーが、河端にバックパスを選択させ、GK小林のキックミスを誘ったと捉える事もできる。同点とされた一連の流れを分割してみれば、あの場面でのバックパス、クリアミス、CKでのマークと検証しなければいけない要素はそれぞれにあるし、それがチームとして勝ちきれない未熟さということにもなるが、横浜FCの出来が良くなかった事を考えれば、やはり追加点を奪えなかった事が大きい。
6−0で勝ったり、ダービーの激闘を制したかと思えば、0−6で敗れたり終盤に追いつかれたりと、戦い方が安定しないのは熊本にとっても大きな課題。ほんの4試合でこうもバリエーションに富んだ展開があると見ている方は全く落ち着けないのだが、だからこそサッカーが奥深いものだという事を再認識できなくもない。今、チームは一度にいろんな経験をしているわけだが、きっちりと咀嚼して糧とし、残り10試合に生かしたい。
ゴールにはつながらなかったものの、54分に見せた藤田、木島、宇留野純、西弘則とワンタッチで流れるようにボールを運んだ場面や、72分の河端のミドルにつなげた左サイドでの崩し等、息をのむようなパスワークも見せた。次節、中3日で戦う仙台を相手にそうしたシーンをどれだけ作れるか。昨シーズンから勝っていないが、決してチャンスがないわけではない。何しろ、第2クールは1点差まで詰め寄っているし、ゲームでは“最後まで何が起きるか分からない”のだから。
以上
2009.09.24 Reported by 井芹貴志