9月13日(日) 2009 J2リーグ戦 第39節
湘南 1 - 0 横浜FC (13:04/平塚/11,888人)
得点者:89' 坂本紘司(湘南)
スカパー!再放送 Ch183 9/14(月)20:30〜(解説:野々村芳和、実況:野村明弘、リポーター:安田美香)
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平塚を包んだ日曜日の秋晴れは風をも静め、過酷な条件を選手たちに強いていた。中2日でこの日を迎えたアウェイチームにとってみれば、その過酷さはより以上だったろう。しかし両チームのパフォーマンスは残暑にも萎えない。スタジアムの熱気を上げたのは強い陽射しではなく、両者のタフな攻防だった。
立ち上がりに流れを引き寄せたのは横浜FCのほうである。前線からプレスを仕掛け、4分にはコーナーキックから早川知伸が、7分には難波宏明がシュートを放った。対する湘南はGK野澤洋輔の好守もあり、流れをゴールに結ばせない。逆に15分、田村雄三から阿部吉朗、坂本紘司と縦に1タッチで繋ぎ、右サイドを駆け上がった臼井幸平のラストパスから湘南がリズムを掴んでいく。狙いを定めた臼井のパスはフィニッシュに合わなかったものの、このときペナルティエリアには中村祐也とリンコン、阿部、坂本の4人が侵入していた。こうして次第にFWがボールに絡みだし、またジャーンを起点に阿部が相手のラインコントロールの間隙を縫うなどして敵を押し込む。中村とのパス交換から阿部が裏を突き、中村がシュートを狙ってもいる。
しかし横浜FCも相手の隙を逃さない。接触プレーで痛めた早川に代わり吉本岳史が入った直後、湘南陣内で奪うやカウンターに転じ、セットプレーを重ねてチャンスをつくる。かたや湘南も、村松大輔や阿部がミドルを狙い、流れを譲らない。39分には右サイド深く持ち込んだ臼井のラストパスに坂本が反応し、シュートを撃つ。ここでも中村とリンコン、阿部らがペナルティエリアのなかに入り込んでいた。ビルドアップの際にミスが生じ、スタジアムに溜息が漏れる場面もあったが、いずれもチャレンジしたうえでのミスという点で前節の岐阜戦の前半とはその意味を異にする。前向きゆえに、押し込まれても推進力を失わない。一進一退の展開のなかにも散りばめられていた湘南らしさである。
田村が前半を振り返る。
「岐阜戦を考えれば、しっかりゲームに入ることができ、自分たちのリズムもつくりました。ただ、それでも無得点だった」
そしてそんな45分を踏まえ、田村は後半開始を前に、円陣のなかで仲間たちにこう言葉をかけたという。
「後半も相手のリズムになる時間帯は必ず来る。そこをみんなで感じ取り、距離を保ち、連動してしっかりやろう」
田村が釘を刺したとおり、相手のリズムは早々に訪れた。51分にはコーナーキックから吉本のヘッド、52分にも片山奨典が左サイドを抜け出し、クロスに難波がヘッドを合わせる。横浜FCにとっては、これら前後半の立ち上がりにつくった決定機がいかにも惜しい。一方、ピンチを凌いだ湘南は、長い距離の上下動を弛まぬ臼井を中心に攻め込む。65分に島村毅が入ると、村松が右に回り臼井の役目を引き継いだ。湘南の縦への意識は緩まず、対する横浜FCもカウンターで応戦する。時が進み、疲労が増すなか、スコアだけが動かない。
だが間もなくロスタイムを迎えようという89分のことだった。「コースを切ろうとしつつ正面を塞いだ」と明かしたように、途中出場の猪狩佑貴が敵の縦パスを高い位置でカットし、前に位置取る中村にすかさず当てた。その中村が繋いだのは、追い越しをかけた坂本である。前半から幾度もそうしていたようにペナルティエリアに躍り出た坂本が、思い切り右足を振り抜く。「いちばん気持ちの強い選手が決めた」そう田村も語るゴールにより、湘南がついに均衡を破るのだった。
「僕らはゴールをこじ開けるために自分たちのスタイルを貫こうとしている。たとえミスしようとも、それを何回できるかが勝負。その姿勢が最後に実りました」殊勲の坂本は語る。反町康治監督も、「辛抱強く粘り強く闘った結果がこの勝点3に集約されていると思う」と選手たちを称えた。最後まで走り勝った内容にプレイオンの日々を見る。次節は首位に返り咲いたC大阪との長居決戦だ。「ベストを尽くして闘う。我々のよさを全面的に出して西の横綱にぶつかっていきたい」そう見据えた指揮官のもと、湘南の躍動は止まらない。
以上
2009.09.14 Reported by 隈元大吾