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コラム

データコラム 数的有意

2023/6/29 18:00

2023明治安田生命J1リーグ データから見える前半戦の傾向

2023明治安田生命J1リーグは折り返し地点を過ぎ、ここから厳しい夏の戦いが幕を開ける。今回は前半戦をデータで振り返り、今季ならではの傾向や特徴的な数字をピックアップしていく。

※対象試合
2022年:第1節~第17節の152試合(後期中に開催された1試合は除く)
2023年:第1節~第17節の151試合(後期中に開催予定の2試合は除く)

●ロースコアの引き分けの減少

今季の勝敗の傾向として、引き分け試合が昨季よりも減少したことが挙げられる。昨季の引き分けは49試合(32.2%)だったが、今季は36試合(23.8%)まで下がっている。その内訳を詳しく掘り下げてみると、昨季のスコアレスドローが22試合を数える一方、今季は11試合のみとなっている。全体の引き分け数が減っている中で、2-2以上の引き分けは増えていることから、「昨季より得点が入る試合が多く、勝敗がはっきりしている」というのが今季の前半戦を象徴する傾向と言える。

●試合は前半から動く

今季、動きのある試合が増えたことを示すデータがもう1つある。それは、「前半の得点の増加」だ。昨季の前半得点数が143であるのに対し、今季は180と1.26倍になっている。これに比例するように、前半終了時で0-0や1-0(ホーム、アウェイは問わない)の試合は15試合減少。代わりに1-1や2-1のように両チームが得点している試合が増えている。得点数38でリーグトップの北海道コンサドーレ札幌は、前半だけでこちらもリーグトップの21得点を挙げており、これは前半得点数2位の横浜F・マリノスの16得点を大きく上回る記録となっている。

●最後まで見逃せない

リードしているチームがそのまま勝利するのかというと、そうではないのが今季のJ1の特徴でもある。昨季の逆転勝ち試合数は17である一方、今季は24に伸びている。試合をひっくり返した回数が多いチームは横浜F・マリノス、名古屋グランパス、浦和レッズの3チームと上位陣が並んでいる。リードを奪われてもひっくり返す力を存分に見せつけている。なお、先ほど前半得点数トップとして紹介した北海道コンサドーレ札幌は11試合で先制に成功しているが、そのまま勝点3を積み上げた試合は6試合に留まっており、約半数の試合は逃げ切ることができていない。

●「トリコロール」のサイドアタックに要注目

では得点が増加した今季のJ1はどのような得点パターンが多いのか。その1つは「クロスからの得点」である。クロスからの得点は昨季86得点だったが、今季は108得点(1.26倍)になっている。増加分のほとんどがペナルティエリア内からのクロスであり、ペナルティエリア内サイドのいわゆるポケットに進入してからの得点が多いことが今季のトレンドと言える。クロスからの得点が多いチームとしては横浜F・マリノスが16得点でリーグ最多(ペナルティエリア内からも7得点で最多)。得点ランキングトップのアンデルソン ロペスが奪った13得点のうち、8得点はクロスからネットを揺らしたものであり、「アタッキングフットボール」の終着点として絶大な存在感を見せつけている。

●名古屋と神戸がJ1優勝チームの傾向を変えるか

4月のコラムでも紹介したように、ボール保持率が低いチームの上位進出も、今季の特徴の1つである。ボール保持率が45%未満だった試合での勝率を比較すると、昨季の36.6%に対して今季は50.0%まで増加。負け率はそれほど変化していないため、引き分けで終わっていた試合を勝利に結び付けている形となっている。この傾向の象徴ともいえる存在が名古屋グランパスとヴィッセル神戸だ。上図は2022年(シーズン終了後)と2023年(前半戦終了時点)の「各チームの平均ボール保持率と平均勝点」をプロットしたものである。今季の名古屋グランパスとヴィッセル神戸は高い位置でのボール奪取や速攻でゴールを陥れるスタイルで結果を残している。しかし2022年のグラフを見ると、ボール保持率が低くて勝点が多い左上エリアにプロットされるチームは存在していない。さらに、直近10年で平均ボール保持率50%未満のチームがリーグ優勝を果たしたケースは一度もない。ポゼッションスタイルが根付いたJリーグに新たな流れを呼び込むことになるのか、後半戦の両雄に注目したい。

文章/データ提供:データスタジアム株式会社

 

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