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2021/8/25 18:00

【トレンドの変化】「守」り「護」る「神」。さらに攻撃面での役割も広がるゴールキーパー

スポーツにおいて「守護神」というワードを目にする、耳にする機会は多い。文字毎に切り出すと、「守る」&「護る」&「神」。ともかく守る……。能力値を視覚化するパラメータが存在するならば、守備面に能力を“全振り”したような神だということは想像に難くないだろう。とりわけサッカーにおける「守護神」とはゴールキーパー(以下、GK)のことを指している。

そうしたチームの「守護神」だが、近年のGKは足下のうまさ、パスの精度など攻撃面の能力を求められることもしばしば。守って、護った上で、攻撃の起点にもなる。そんなJリーグのGKに着目し、トレンドの変化について紹介したい。

・ゴールキックから短いパスを出す割合は、4年前と比較して倍増
・GKがプレーに関与する回数が増加
・J STATSから注目すべきGKは菅野 孝憲(札幌)、高丘 陽平(横浜FM)

ゴールキックから短いパスを出す割合は、4年前と比較して倍増

ボールがゴールラインを割った際に、ゴールエリアから主にGKがボールを蹴るゴールキック。このゴールキックの傾向が近年変化している。ゴールキックをどこへ蹴っているか、という観点でJ1リーグのデータを調べてみると、2017年ではディフェンシブサード(*01)へのパスを出す割合が19.4%だったのに対し、2020年では46.5%と増大していることが分かる。今季は35.7%(*02)と昨季からは減少傾向だが、4年前からの変化は明らかだ。

変化の背景には、戦術の進化とともに2019年8月からのルール改正(*03)の影響もある。ゴールキックから短くパスをつなぐことは、守備側からの猛烈なプレッシングを受けるリスクもあり、見ている側とすればヒヤヒヤすることもあるだろう。一方で、最終ラインからパスをつなぐことで、意図を持って相手の守備陣形を動かすことや、相手のプレッシングを突破すれば有利な状況で敵陣に進入可能といった相応のメリットがある。応援するチームのゴールキックから始まる攻撃に注目してみるのも面白いかもしれない。

(注釈)
*01:ディフェンシブサードとは、ピッチを攻撃方向に対して横に3分割した際に最も自陣のゴールに近いエリアを指す
*02:2021年8月15日までに開催されたJ1リーグが対象
*03:ゴールキックの際に攻撃側チームの選手が、ペナルティエリア内でボールを受けることが可能になった

GKがプレーに関与する回数が増加

次に、そもそもGKがプレーに関与する回数が増えていることをデータとともに紹介したい。

上図で示したように、GKが試合中にパスを受ける回数、パスを出す回数は近年増加の一途をたどっている。特に、GKがパスを受ける回数はたった4年前のシーズンから、昨季は約1.8倍に増えた。今季も1試合平均のパスを受ける回数とパスを出す数は微増しており、現状のペースでいけば総数は昨季よりも大きくなりそうだ。
GKの仕事において最も重要な見せ場はシュートストップであることはいつの時代も不変に思えるが、攻撃面での役割も着実に広がっているといえよう。

J STATSから注目すべきGKは菅野 孝憲(札幌)、高丘 陽平(横浜FM)

最後に、役割が広がるGKという観点でJ STATSを基に注目選手を紹介したい。

まず注目したいのは、北海道コンサドーレ札幌の菅野 孝憲の「とある条件下におけるパス成功数183本」という記録。その条件とは「GKからミドルサード(*04)へ送られたパス」かつ「パスの次のプレーが空中戦以外」というもの。ゴールエリア近辺でGKから出る短いパスではなく、一定の距離がある、またはGKが高い位置から送るパスに限定し、さらにパスの受け手に成否を委ねる形になりやすい空中戦を除外している。その条件下において菅野は今季リーグトップの成功数を記録。2003年に横浜FCでJリーグデビューを果たし、柏レイソル⇒京都サンガF.C.⇒北海道コンサドーレ札幌とキャリアを重ねてきた37歳の菅野だが、見事なシュートストップだけではなく、キック精度にも注目してみたい。

そして、もう1人が横浜F・マリノスの高丘 陽平。J1で今季10試合以上出場しているGKの中で、前述の条件下において最も高いパス成功率を記録しているのが高丘だ。その成功率は、驚異の82.0%(172本中141本成功)。2位の成功率を記録する菅野が67.3%であることを考えれば、驚異的な数字であることがわかる。奇しくも菅野と同じく横浜FCで2014年にプロのキャリアをスタートさせ、サガン鳥栖⇒横浜F・マリノスと経験を積む25歳の高丘。チームを救うセービングだけでなく、横浜F・マリノスのアタッキングフットボールを支えるGKのキックに今後も注目してみたい。

(注釈)
*04:ミドルサードとは、ピッチを攻撃方向に対して横に3分割した際に中央に位置するエリアを指す

(文章/データ提供:データスタジアム株式会社)

 

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