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コラム

Jリーグ副理事長 原博実が試合解説“イイ時間帯ですね。”

2016/9/24 15:00

長沢の運動量とみんなから愛される井手口のポテンシャル(♯9)

ここにきてガンバ大阪が調子を上げてきているね。1stステージは6位と出遅れたけど、2ndステージは現時点で首位の浦和に勝ち点差2で2位につけている。2年前の三冠王者で、昨季は天皇杯を制したほか、複数のコンペティションで最後までタイトルを争った強豪だけど今シーズンは、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)では早々に敗退し、1stステージでも優勝争いに絡めなかった。

2ndステージを前に宇佐美 貴史がドイツに移籍したことでさらに苦しい状況に追い込まれるかと思っていたけど、シーズンも佳境を迎えたこの時期にコンディションを上げてきたのはさすがだね。今回はそのガンバ大阪について話をしていきたい。

■ガンバ大阪について
今回視察したのは、9月17日に開催された(前回取り上げた) 名古屋グランパスとの一戦。名古屋は前節アルビレックス新潟との残留争いに勝ったとはいえ、まだ降格圏を抜け出せていない。ガンバ大阪にとってはやりづらかったと思う。残留争いをするチームは、ひとつでも勝点をもぎ取ろうと、手堅い戦いを選ぶ傾向があるからだ。

実際にガンバ大阪は決して良いパフォーマンスを見せていたわけではないと思う。早い時間帯に遠藤 保仁が負傷交代してしまうアクシデントにも見舞われた。それでも3-1と快勝を収められたのは、なんとしてでもタイトルを手にしようという高いモチベーションに支えられた、チームとしての一体感によるものだろう。

この試合でも全員がよく走り、球際でも激しく戦っていた。なかでも際立っていたのが8月の月間MVPにも輝いた長沢 駿と20歳のボランチ井手口 陽介の2人だった。

■12キロ以上走った長沢の運動量
長沢は直接得点に絡んだわけではないけれど、前線から激しくボールを追いかけ、チームに貢献していた。試合を見ながらよく走っているなあと感じていたんだけど、この試合のトラッキングデータ を確認すると両チームトップの12.517kmも走っていたんだよね。これには驚かされたよ。フォワードでこんなに走る選手はめったにいないからね。次の映像を見ると良く分かるけど、それだけ彼は試合を通して献身的なプレーを続けていた。

2点目の場面でもきっかけとなったのは長沢の守備。彼があそこで強くプレスに行ったことでボール奪取につながり、アデミウソンのゴールが生まれた。

■井手口の特徴
一方の井手口は、ボール奪取能力の高さが目についた。ボールホルダーに対して常にアクションを仕掛け、躊躇することなく刈り取りに行く。身体は大きくないけど、小回りが利くし、球際も強い。長身の名古屋・シモビッチにも臆することなく果敢に競り合いにいくなど、メンタルの強さも感じられた。足を痛めた影響なのか動きに精彩を欠いていた遠藤のスペースをカバーする運動量も光っていたね。

そうしたアグレッシブな守備が井手口の特長なんだけど、期待を込めてあえて言うと、相手との間合いを詰めすぎてしまうためにするっと身体を入れ替わられ、ピンチにつながりかねない事もあるということ。覚えている方もいるかもしれないけど、彼が出場したリオ五輪のコロンビア戦の1失点目も同様のケースでやられてしまった。あのシーンは彼なりに世界を感じた瞬間だったと思う。「待つ守備」が多い日本のサッカーの中で、彼の「奪いに行く守備」はある種異質で、好感が持てるプレーだよね。世界の強豪と戦ってきた経験を活かし、その良さに更に磨きをかけて欲しいと思う。

ちょっと驚いたのは、最後に決めたミドルシュートの場面。あれは並大抵の選手では決められないんだけど、ゴールを決めた後に注目してほしい。ベンチ含め選手全員が彼を祝福していたんだよね。彼がチームのみんなから愛されているんだなあと分かったシーンだね。

■まとめ
これまでのガンバ大阪は、どちらかというとボールをしっかり保持しながら、遠藤のパスワークを起点に、パトリックや宇佐美といった強烈なタレントがゴール前で決定的な仕事をこなすといった戦い方を演じてきたけど、今のガンバ大阪は全員のハードワークをベースに成り立っているように感じた。

長沢や井手口だけでなく、倉田 秋や大森 晃太郎といった選手たちもよく走り、攻守両面で高い貢献度を示している。アデミウソンも守備ができないと使われないことを理解しているようで、長沢同様にさぼらずにしっかりとボールを追いかけていたね。

主力の移籍や不調がある一方で、献身を厭わない選手たちが軸をなし、ガンバ大阪には新しいバランスが生まれているように感じる。まだ完成はしていないけど、良くなってきているのは間違いない。シーズン終盤の戦いを、このチームが盛り上げていきそうだね。

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