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コラム

川端 暁彦の千態万状Jリーグ

2016/9/16 15:11

ジュビロ磐田・名波 浩監督は「ナーガソン」を目指す!?(♯43)

全34試合中28試合を終えたところで、勝点31。年間順位は13位。今季、J2から昇格してきたジュビロ磐田が残している戦績は、凡庸な数字に見えるかもしれない。ただ、すべてのクラブが優勝を見据えて戦っているわけでもない。それぞれの目標設定や長期計画を頭に入れて考えると、自然と数字の見え方も変わってくる。

「俺は今季が始まる前から『40』が目標と言ってきた」

「チームのために自分がいま何をできるのかを考えろ」。この言葉に名波監督のリアリストな一面が垣間見える
「チームのために自分がいま何をできるのかを考えろ」。この言葉に名波監督のリアリストな一面が垣間見える

ロマンティストのように思われがちだが、リアリストとしての一面を強固に持っている名波 浩監督は、そんな言葉でチームの現状を表現する。あくまで狙うのは残留安全圏と言われる勝点40。逆に言うと、『31』の現状を楽観視もしていない。選手たちには「残留争いをしているのだという危機感を持て。チームのために自分がいま何をできるのかを考えろ」と厳しく言い含めているという。

ヴィッセル神戸に3-4と殴り負けを喫した直近の試合についても、チームとして練習から取り組んだことや後ろからのコーチングよりも、自分の勝手な判断を優先させた動きをしていたある選手を厳しく追及。「責任というのはピッチのいろいろなところに散りばめられているもの」とした上で、「失点の原因が自分にあると思うなら、帰りのバスでスカパー!オンデマンドで映像を確認するとか、そういう振る舞いがあるはず。しかし彼にはそれもなかった」と、個別に指導したことを明らかにした。

「アピールしてやろうという気持ちになる」と小川航。名波監督の“育てる”意志をしっかりと感じ取っている
「アピールしてやろうという気持ちになる」と小川航。名波監督の“育てる”意志をしっかりと感じ取っている

13日に大久保グラウンドで行われたトレーニングは、名波監督のそうした“色”を感じることができた。神戸戦での反省を踏まえて、ポジショニングや縦パスに対する攻防の意識を修正。居残りでシュート練習をする若手に、監督がパス出し役として最後まで付き合うチームというのもなかなかない。FW小川 航基が「本当にありがたいし、何とかアピールしてやろうという気持ちになる」と語るように、経験の浅い若手に対してのアプローチも含めて、“育てる”意志を感じるものがあった。

「早めに40にいきたい」と名波監督が語るのも、安全圏までいけば残り試合を若手の起用や戦術面などでの「投資」に使えるという考えがあるからだ。3バックの採用も含めて、すでに投資の意図はいろいろなところに伏せられている。いずれは磐田の黄金時代のような「余らないサッカー」をやりたいという考えがあり、「先しか見ていないし、そうでなければ俺が監督である意味がない」とまで言い切る。そして同時に、「残留」という現実も見据えたプランも練っているのだから、やはり楽天主義者やロマンティストというわけでもない。もっとリアルに「先」を見ているのだろう。

「10年監督をやって『ナーガソン』になるよ」

鹿島と磐田の伝統の一戦。現役時代に“黄金カード”と称された試合だけに、名波監督の思い入れは人一倍だ
鹿島と磐田の伝統の一戦。現役時代に“黄金カード”と称された試合だけに、名波監督の思い入れは人一倍だ

名波監督はマンチェスター・ユナイテッドで長期政権を築いた伝説の名将サー・アレックス・ファーガソンを茶目っ気たっぷりに自身をなぞらえつつ、「先」に向けた戦略を練る。

今週末にはアウェイでの鹿島戦も待っている。自身の現役時代に“黄金カード”と称された試合だけに思い入れは人一倍。「カップ戦ではやったけれど、リーグ戦はまた別の戦いになる。相手はチャンピオンシップ出場も決めている格上のチームだけれど、リスペクトし過ぎないように戦う」と気持ちを引き締めつつ、「カシマスタジアムは日本で一番アウェイを、相手のホームアドバンテージの力を感じられる場所。あの雰囲気は本当に好きなんだよね」と言って、ニヤリと笑った。

鹿島と磐田。2ndステージ11位と15位の戦いではあるのだが、そんな順位から想起されるものとは違う、味のあって熱さもあるそんなゲームが期待できそうだ。

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